濡れタバコの連絡ノート第六回「尚も悪役にされる弱者男性」
今回はたまたま見つけてしまったある男性精神科医のコラムについて取り上げていきたいと思う。そのコラムは「男性の性欲は恐ろしい」だ。
記事はこう書く。「男性というのは、闘争心が強く、また共感性に乏しい。そして、異性と触れ合う経験が少ない。故に性欲を発露させる瞬間にどのような行動を取るか予測不能なので、女性にとって非常に恐ろしい。」このように何故、男性の性欲というものが女性にとって脅威となりうるのかを医学的、生物学的見地から解説しているコラムだ。
どうだろうか。もう一々面倒くさいので名前等は書かないがこういうことを宣う人間が精神科医なのだ。いや、精神科医だからこそコウイウことを平然と言ってのけてしまえるのだろう。ビッグモーターもかくやとばかりの異常事態だ。
あくまで本人は、日々苦しめられている女性の診療を行う中でなんとか心を病む女性を減らしたい一心でこのコラムを投稿しているのだろう。しかし、このコラムがどういう論調で使われるか本人は全く理解できていないように見受けられる。はたまた、将来的な顧客確保の為のマーケティング戦略なのかも知れないが。
まず、このコラムの問題は男性という大きな括りで一方的な加害性を語ってしまっているところにある。毎晩女を引っ掛けて世の春を謳歌している強者男性であろうが、日々鬱屈とした時間を過ごして誰にも心配されない弱者男性も一括りに加害性のある男として恐怖心を煽られている。
さらにダメ押しをさせて頂くと、ルッキズム著しい昨今、容姿に優れず、歓迎されないどころか女性に生理的嫌悪感を与えるという弱者男性の外見的特徴そのものが一つの加害性として語られている中ではコラムに挙げられている男の加害性なるものは、ほぼ弱者男性の外見的特徴による女性の生理的嫌悪感を助長・補完する要素として論じられることが多い。
故に、男はこういう脅威を女性に振りまきますよ〜という注意喚起の場では大抵の場合弱者男性をロールモデルとする事が多い。実際に女性に危害を加える確率が統計学的にウミガメの帰省率より低かったとしてもだ。同じことを強者男性が行えばマッチョイズムの好例として女性の性的欲求が最高潮に達するというのに。
次に、このコラムが生物学的側面から語られていることも大いなる問題だ。精神科医が語る以上、やはり科学的根拠から目を背くことが出来ないというこの医師の職業倫理は大いに尊重しよう。しかし、それによって弱者男性がさらに排斥の対象になり、弱者男性がさらに周囲に配慮という名の機会・経済損失を強いられことは断じて尊重できない。 いや、してはならんのだ。
上記の通り、弱者男性という存在そのものがさも加害性を帯びて議論されていると言っても過言ではないこの社会情勢下で、このようなともすれば「なぜ、弱者男性を警戒し、排除しなければならないのか」とも言い換えることが出来る内容のコラムを世に放ってしまった事は、我々に明確な宣戦布告ととられても致し方がない。分かりやすく言い換えれば、ナチス政権下で医者が「何故、ユダヤ人は愚劣なのか」といった論調を展開するに全く等しい。これでこのコラムの危険性がおわかり頂けるだろう。
最後に、このコラムが輪をかけて最悪なのは、このコラムで女性にとって脅威を持つ存在として「描かれている」異性と触れ合う機会がなく、どう接すれば良いか分からない予測不能な弱者男性がどう振る舞っていけば良いか、改善点を全く論じられずに、只々ひたすらに恐怖心を煽るように語られている点であろう。
これでは、コラムの読者が脅威である以上排除するしかないという短絡的な発送に帰結してしまうだろう。男の性欲以上にこの医師が放つ扇動性に恐れおののくばかりだ。
以上のことから、このコラムがシオン賢者の議定書に勝るとも劣らない最悪の文書であることがおわかり頂けたはずだ。
もし、このコラムを書いた医師に些かの「共感性」と「精神科医としての矜持」があるのならば、弱者男性を助け、社会の公平性を維持し、均等性ある社会を興すべき。それが出来ないのなら、コラムを抹消し、天下の隅で恥じ入るべきだろう。