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がんってこと、誰に言う?

がんだと分かったとき、誰に言いますか?
夫/妻にだけ言う? 親には? 子供には? 
どう言う?いつ言う?


隠すことなく

うちの場合は、以前から健康診断の結果やお医者さんにかかったときには結果を報告していました。夫はいつも病院に行った後は何と言われたかを言ってくれるので、夫と私の間で彼の体の不調についての認識は同期が取れていました。
最初はすい臓がんでなく「胃が痛い」だったんですけどね。胃カメラの結果の報告がこちらのLINE。

胃が痛いということでかかりつけ医に診てもらっていたころ

最初のLINE

かかりつけ医で胃酸過多と言われていた夫はなかなか”胃”の痛みが治まらず、少し大きめの病院で造影CTを受けました。そのときはじめて「がん」という言葉が出てきたのです。
LINEの報告はいつもどおりシンプルな報告:「膵臓に影 膵臓ガンの疑い」。

「がん」(初出)

その病院からさらに大きな病院を紹介していただき、検査入院をすることに。1泊2日の検査入院でしたが、検査をしたその日のうちに先生からお話がありました。
「かなり大きく、肺の下にも飛んでいるよう。すい臓がんなら、根治治療はできない。」
そして、「癌ならばステージ4」と。

検査入院した夫から。淡々。

この時点で読者さんは「それで妻はどう思ったの?」と思われるかもしれません。でも、まずは、”周囲にどう伝えるか”が大事だったということをお話したいのです。

みんなの思いがあふれかえってしまう

がんだと伝えるといろんな人から「うそ!」「どうして?」「がんばれ」「なんとかならないの」「何で気づかなかったの」などなど、あれこれ言われるでしょう。
みなさん、心配してくれて声をかけてくださるのに応えられないこともあります。
いろんな人の思いを受けすぎると、肝心の治療に集中できない状況になるのではないでしょうか。

夫の判断

夫は最初に決めていました。彼が病気のことを言うのは

  • 自分の兄弟

  • 自分の親友3名

それ以外の人に対しては

  • 親族:兄弟の判断に任せる。

  • 友人知人:親友2名を通してコミュニケーションする。本人はLINEのグループは見ているけど、直接コミュニケーションはしない。

  • 仕事は辞める(定年退職した後、自治体の会計年度職員として働いておりそれほど深い付き合いのある人はいなかった)

夫の意図は、友人・知人たちの間で情報のレベルに差を生まないように、情報に温度差があることで嫌な思いをする方がいないように情報は均一にするということでした。情報は隠す必要はなく全公開してもらうようにしました。
親友2人からの人脈は、そこからおおよそのつながりに広がっていくだろうというパイプラインでした。
また親族に関しては、うちは子供がいないので親と兄弟が一番近い親族ですが、既に認知がふんわりしてきている高齢の母に対しては言うか言わないかも含めて兄弟2人にお任せしました。

この夫の決定は速かったです。検査入院から退院する日の朝、つまり先生からお話を聞いた翌朝、そのようにすると私に伝えました。そしてその日のうちに兄弟へ、翌日には親友2人にそれぞれLINEで一報を入れました。

もう一つの表明

「誰に」「どのように」「いつ」「何を」はそんな感じで夫の決めたとおりなのですが、周知に関してもう一つお伝えしたいことがあります。

病気だと伝えたころ、夫が彼らに繰り返し言っていたことがあります。

「僕は、妻が言うことだったらそれでいいです」
「妻の言うとおりでいいです」

意思決定の丸投げは決してしない人だということは、良きにつけ悪しきにつけ😓30数年経験してきた妻。病気で夫が自暴自棄になっているわけでもない(第一、「誰にいつ何を伝えるか」は速攻で自分で決めてきたし)。
普段、私のことを「妻」と呼ばないこの男が敢えて「妻」と言ってるし。
この発言の意図を図らねば。

夫は二人だけの時に言いました。
”この先、自分がどういう状態になっていくかわからない。”

もしかしたら、意思決定が難しくなった時のことを見越して、人前でそう宣言したのかもしれない、
あるいは単にコミュニケーションコストを減らすためかもしれない。

でも、これは「移譲先の宣言」だな、と理解しました。本人が判断できない時に誰が最終決定権を持っているかを明確にしておくことで、残された人たちの間で何かの意見が違っても最後に意見を集約する先がはっきりしていればもめごとを避けやすい、と考えたんだろうと。

情報開示のコントロールが闘病態勢を整える

いずれにしても
最初に本人が周知の方向性を明示したこと
コミュニケーションをシンプルにしてくれたこと

この2点は病気に向かう態勢をブレないようにしてくれたと思っています。
そしてこの意向に応えてくれた兄弟、親友2人に感謝。そして彼らと良い関係を築いてきた夫にも感謝。


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