家族写真マスト!
家族の写真って撮りますよね。
スマホで撮る何気ない毎日、旅行に行ったとき、正月やお盆のファミリーイベント、結婚式の記念写真・・・。自分たちで撮る写真もあれば、プロに撮ってもらうものも。
最後に写真館で記念写真を撮ったのはいつですか?
がんとの闘いの出陣前に
私たちは結婚式を挙げなかったのですが、記念にということで自分たち二人だけでウェディングフォトを撮っていました。でも、プロに撮ってもらった家族写真はそれっきり。
そして月日が流れ、がんと診断がついた。
治療がどうするああする、副作用があるよあるよ、仕事どうする、お金どうする、みたいなことで気持ちがいっぱいになっているうちに時間が流れちゃいますよね。
が、待て待て、ちょっと待て。抗がん剤をやることになった。ということは髪が抜ける。
髪の毛が抜けようが抜けまいが私の夫なのだけど、がんで痩せ細って骸骨みたいになっても私の夫だけど、健康な姿からメタモルフォーゼすることは明白。
外見って結構、尊厳にかかわりますよね。人が気にしなくても自分の中では気になる。
よし、治療が始まる前に写真を撮っておきましょう!
撮影自体がいい思い出に
ネットで調べて”22日(夫婦の日)キャンペーン”みたいなので安いパッケージがあったので、即申込。全体で60分くらいのphoto shooting。衣装は持ち込みか着ていく、背景が2種類、好きな写真を10枚選んでデータをもらう、という内容。
撮影前に希望などをヒアリングしてくれるのだけど、「どうして今回写真を撮ろうと思ったんですか?」と聞かれて「夫ががんで死んじゃうのでその前に夫婦の記念で~」とは言いにくい。写真館の人だってリアクションに困るだろう。ということで「たまにはそういう写真もいいかな~と思って」ぐらいにお茶を濁す。
服は、夫が思い出のあるジャケットとタイを選んだので、私はその服に合わせて適当に。でも靴は昔買ってもらったやつにしよう。
この撮影でよかったのが、撮ってもらっているうちに自然な流れで夫だけの写真も撮ってもらえたこと。
きちんとした夫の写真ができた。
遺影にするとかそういうことでなく、まだ健康っぽく見える夫の姿がビシッと決まった格好で写真にしてもらえたのは、この先私を救ってくれるような気がする。
それに撮影自体もイベント感があってよかった。なにしろ二人だけでがんと向き合わなくちゃ的な雰囲気が立ち込めていたところだったので、第3者がかかわるイベントをすることで気持ちに抜け感みたいなものが持てたのは副産物。
”時”が来たときの写真
遺影と言えば、その時が来たら葬儀やなんかでドタバタするんだろうな、くらいのぼんやりしたイメージがあります。なので、写真館とは別に過去の写真を見返しもしています。
夫は過去の写真はすべてデジタルデータ化しているのでパソコン上で見ているのだけど、”葬儀に使えそうな写真”を選んでいたはずが、いつの間にか”人には見せられないが自分を元気にしてくれる写真”というフォルダもできました。
そこに入れるのは、ピンボケだったり、変顔だったりしているけど、楽しかったときの瞬間が収まっている画像。怒った顔だったり、ふざけた顔だけど、夫がよくしていたしぐさ、表情、姿勢、それらの”彼らしさ”がある写真。くだらない写真でももっと撮っておけばよかった。
見ていると切なくなってしまうけど、この作業をいざ夫がいなくなった後でやるのは耐えきれないような気がする。過去から彼のわずかな要素を拾い上げる。圧倒的にピースの足りないパズルだけど彼がいなくなる空白を少しでも埋めようとするみたいに。
というわけで、日々何気ない写真を撮っている方もいらっしゃると思いますが、抗がん剤の前にフォトスタジオ撮影するの、おすすめです!