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【あちらこちらぼくら(の、あれからとこれから】 必然でない今が幸せ。

やっと最新巻を読んだので、前作・今作通して考えたことをまとめてみる。ネタバレ注意。
あと、ギリギリ使えると思って謹賀新年のイラストを使わせていただきました。


あらすじ

主人公は園木と真嶋の二人で、園木がサブカル好きの地味め男子、真嶋が明るくてクラスの中心にいるタイプの男子。この二人が友達になり、ギクシャクすることもありつつ、最終的に恋人として穏やかな毎日を送る姿が描かれている。前作『あちらこちらぼくら』は高校生編で、今作『あちらこちらぼくら(の、あれからとこれから』が大学生・社会人編。


あのとき、手紙を送らなかったらこの関係は始まっていなかったかもしれない

正直、前作『あちらこちらぼくら』の時点では恋愛関係に至ると思っていなかった。元々連載されていた雑誌もBL雑誌ではなく、BL漫画を描かれる先生だと知ってはいたものの、どう転ぶかわからないことも含めて漫画を楽しんでいた。

そのため、恋人に落ち着いたことには正直驚いた。最近、恋愛関係に至らないまま物語を終える作品も多く、それはそれで面白いし。

けれど、納得した部分もあった。だって園木と真嶋は二人でいればすごく穏やかな生活を送れそうな感じが、付き合う前の前作からしたので。現に、今作で描かれる二人で暮らす時間は穏やかで幸せそうで嬉しくなる。

でも、この穏やかな時間は始まらなかった可能性も高かった。二人が高校卒業後、数年を経て再会できたのは園木が手紙を真嶋に送ったから。手紙をもらったことが、真嶋の園木に対して抱えていた思いについて整理するきっかけになったのだが、このとき別に恋人がいたら、園木について考え直したとしてもすぐに神戸に会いに行こうと思わなかったかもしれない(園木の大学が神戸で、真嶋が東京で離れている)。すぐに会いに行かなかったら、就活で中々会えず恋愛関係までは至らなかったかもしれない。

もしも、の話でなくとも。就活・社会人一年目という余裕のない数年で着実にお互いを思いやって仲を深められることが価値のあることだと思う。

そう考えると、二人がこうして穏やかに過ごしている時間がより美しく感じる。


過去を受け入れること

真嶋は過去に亡くなった父親について同級生によくない言い方をされてしまったことがあり、まだ幼かった真嶋は暴力を振るってしまったことがある。3巻では、その経験から理学療法士という職を選んだことが仄めかされていて、前作では過去を思い出したくない描写が何度も見受けられたが、受け入れているところを見られて感慨深かった。
園木も幼少期はやんちゃだったが、劇的ではないが日常的な出来事によって小さな挫折や出会いを重ね、今の園木になった。

二人の幼少期や高校時代も素敵だったけれど、今の二人だからこそ今の幸せがある。
変われない自分や変わってしまった自分について悩まなくても、どちらもそれぞれの魅力があるのかもしれないとここ数年読み返し続けている漫画が思わせてくれて嬉しかった。


友情と恋愛感情は両立する場合がある

二人の恋愛感情は、友情があったからこそ生まれたものだと思う。
最近の作品では、恋愛がテーマではない作品において登場人物が最終的に想いを通わせた時に、「結局恋愛関係で終わるのか」と評価をつけられることがある。
個人的には恋愛関係に至っても友情でもどちらでもよいと思っている。二人の関係は友情という信頼関係がある上で始まったもので、昨今のマッチングアプリから結婚に至る恋愛などは恋愛から信頼関係を積み重ねていくもので。後者は友情とわざわざ名前をつけないものの、友情も含めた恋人・夫婦の関係性が築かれているのではないか。
だから、よい友人同士はもちろん、良好な関係の恋人同士も友情はあるのかなと考える。

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