未収録作品『センチメンタル・ブロンド-感傷的な金の髪-』
『センチメンタル・ブロンド-感傷的な金の髪-』現物を入手したのであらすじを書いてみます。いわゆるネタバレです。
※ストーリーの結末まで記載されていますのでご注意ください。また、何かあれば消すかもしれませんのでご了承ください。
<主な登場人物>
ヴァイ・セルヴォン…主人公。15歳の女子学生。
ヘレン・セルヴォン…ヴァイの母親。有名女優で離婚歴あり。
サム・バン…有名な映画監督。ヘレンとよく仕事をしている。45歳バツイチ。
青年…ヴァイを付け回す謎の青年。終盤まで本名が判明しない。
サラ…ヴァイが家出中に出会う謎の女性。
<舞台>
ブラックダウンという地名が出てくるため、現代(1970年代)のイギリスと思われる。
<本編>
主人公・ヴァイは15歳。異性やおしゃれに興味がなく、性格は子供っぽくて、有名女優である母親のヘレンに依存気味。
そんなヴァイを一週間前からこっそり観察している謎の青年がいる。
青年は、ヴァイを自分に引き付けて恋愛関係に持ち込ませ、ヘレンから引き離すのが目的らしい。
(ヴァイ・セルヴォン……きみにはどうしてもおとなになってもらわなくちゃ きみがママ人形のままだとハッピーエンドになれないふたりがいるんでね……おとなになる為の甘い薬は濃い 苦い薬は失恋… おあいては…ぼく…だよ)
「どうしたの?ヴァイ…」
「視線よ!また誰かがわたしを見てる」
「思い過ごしだってば!!いくらきみが世紀の美人女優ヘレン・セルヴォンの一人娘だからって だれもジロジロみたりしないよ」
「見られるの嫌いなの!!大嫌いなのよ」
「誰も見てやしないって だいいちそんなふうに敵意まるだしじゃ たとえばきみに思いをよせる殿方が物陰から熱い視線をきみに送ってたとしたって おっかなくてでてこれやしないじゃないか」
「そんなものいらないもん」
ヴァイが友達のメリーとそんな会話をしながら登校すると、クラスメートがヘレンと映画監督サム・バンの熱愛報道記事が載った雑誌を持ってきていた。ショックを受けたヴァイは、衝動的に教室を飛び出してしまう。
(ママ… ママ… ヴァイは病気よ ヴァイはちっちゃな子供よ 帰ってきて!ヴァイのとこにすぐ帰ってきて!!ヴァイをきらわないで)
撮影でアメリカにいるヘレンに電話で抗議した後、ヴァイは衝動的に家出する。
(ママ…あたしをさがしてくれる?見つけてくれる?あたし 迷い子よ…)
夜行列車の中でもヴァイを追いかける青年。しかし列車は個室だったので、不審に思われないように女装し、サングラスも装着している。
(いっちょ前に家出して…あてもないくせに…あーイライラするママ人形!! それにしてもぼく…女に見えるかしら おかまにはみえるみたい 男が娘一人だけのコンパートメントに入ってきたんじゃ警戒されちまうからな もちろん気づかれちゃまずいし…)
ヴァイがメガネを外した姿に見とれる青年。
(わーっ ど どうしよう かーわいい)
そこにまた別の、酔っぱらった女性が個室に闖入してきて、青年とヴァイに無理やり酒を勧めてくる。自分の父親が亡くなって色々あったのでやけ酒していたらしい。父親がどれだけ酷い人間だったかをまくしたてる。
「だいだい わたしのおやじってのがきわめつけのろくでなしでサ 結婚と離婚が趣味みたいな男だったのよ 若い時にさんざんあちこちでそれくり返して女泣かして… 要するに浮気というか多情というか…本人は博愛だなんていってたけどばかにするなだわ 誰にももてなくなってやっとママンとこ戻ってきたと思ったら事故おこして天国へトンズラよ ジゴージトク!! 残したのは保険金と 異母きょうだい達… みんないい子に育ってるみたいだけど気にかかるわーっ ほーんと 男ってばかっなんだから ねェー!!」
ヴァイはそれに同意するが、青年は女性の発言に反論する。
「ば ばかじゃないのもいるわよ あたしのパパは立派な人よ 信念もって生きてるわ」
「フーンだ 家庭円満でよござんしたね」
「り 離婚はしたけど… 9年前に」
「ほーら!! やっぱり!!」
「ちがうの!!ちがうのよ(おかまになりきってる自分がこわい!!)あたしのパパは不器用な人でサ 仕事はじめると家庭なんか見えなくなっちゃう人だったのよね ところがあたしのママって人は家庭だいいちの人だったものだから だんだんがまんできなくなって9年目に爆発!!別れたってわけ…」
「だんなの思いやりがたりなかったのよ!フン!」
「そっそうかもしれないけど パパと別れてすぐママは若い気のやさしい男と結婚して弟も生まれて毎日ハッピーよ それにくらべてパパはずっとひとりよ 10年ずうーっと」
「そんならあーただけでも会いにいってあげればいいじゃん!!」
「そりゃ…ね… でもいつだったか パパがこっそりあたしに会いにきた時いっちゃったのよね 二度とくるな!! …って…ね だから会いにいけないってわけじゃないけど…なんとなくね… あたしは小さかったからとにかくママの味方だったのよ 泣いていたのはいつだってママだったんだもの パパに幸せになってもらいたい…わ 聡明な女性と ばかな子供のことなんか忘れてサ」
「パパなんか大きらい!!」
いきなり叫ぶヴァイ。女性が差し出した酒を全部飲んでしまったらしい。
「パパは悪人よ ママを泣かせてばかりだったもん」
ヴァイは父親が離婚で家を出ていくとき「お前はパパに似ているから、成長してパパに似たらママに捨てられちゃうよ」と言われたのがトラウマとなっており、母親に捨てられたくない一心で自身は小さい子供だと思い込むようになっていたのだった。
「嫌われて捨てられるって…あいつそういったの… ママに似てるのは金髪だけ…大きらい 大きらいヨ こんな顔」
泥酔して泣きながら窓をドンドン叩くヴァイだったが、そのうち女性にもたれ掛かって眠ってしまった。
青年は、ヴァイが母親に依存していた理由を知って同情する。
明け方になり、青年が目を覚ますとヴァイが自分にもたれ掛かっていた。
女性がトイレに立った時に交代したらしい。
ヴァイが目を覚ます。「夢の中に出てくるお兄さんと会っていた」と話す。自分に兄弟は居ないが、辛い時、夢の中にだけ出てくる兄だという。
それを聞いて、何かを思い出しかける青年。なぜか、その兄とは自分のことではないかと思うが、すぐにその考えを振り払う。
そうこうしているうちに列車が駅に着く。
女性は「あんたたち昨日私の別荘に来るって言ったでしょ」と言うが二人には覚えがない。女性は二人を半ば無理やり自分の別荘に連れて行く。
「サラって呼んでね あなたはヴァイっていったわね えーとそっちの…」
「わ わたしマリアよ よろしく」
青年は苦し紛れにマリアと偽名を名乗った。
3人が降り立ったのはブラックダウンにある別荘地だった。
サラはヴァイに、森の中に咲いている花を摘んできてほしいと依頼する。快諾するヴァイ。
青年はサラから、森の中に出るという幽霊の話を聞き(自分がその幽霊の少年になりきればいい)と思いつく。
花を摘んでいてヘレンの事を思い出し、涙ぐむヴァイ。眠ってしまえば兄さんは来てくれるだろうか、と考えていたところに、男の格好に戻った青年が現れる。
「ヴァイ」
「にいさん」
「すぐにわかったわ あっというまにわかったわ 兄さんだけだもの 一人ぼっちのヴァイのところにきてくれるのは兄さんだけだもの」
(どうしてこんな…非現実的な世界を信じられるんだろう……まるで子供がサンタクロースを信じているのと一緒だ ぼくも昔は信じていたけれど……父さんと母さんがまだ愛し合っていたあのころは…)
ヴァイがあまりに無邪気に自分を夢の中の兄だと信じることに困惑する青年。
その頃、別荘で二人を待つサラは煙草を吸いながら物思いにふけっていた。
ヴァイは別荘に戻り、サラに森での出来事を話す。
「だからいってるでしょう ヴァイ! それはきっと幽霊よ!マリア!あなたは見なかったの?」
「み みなかったわ」
「兄さんよ… あの人は兄さんよ 夢でも幽霊でも… …だってなつかしかったもの…」
(___なつかしかったもの)
何故か自分も懐かしさを感じていた青年。
青年を見るサラ。
「幽霊じゃなきゃ その男はきっと ふりしてだましてるのよ 近づくために ねえ…マリアだってそう思うでしょ」
「え ええ」
(そうだ… ぼくはヴァイをだましているんだ ヘレンとサム・バン監督の再婚を反対できぬよう 恋の酔いとふつか酔いを味わわせるために… ママ人形を卒業させるために…ふりをして近づいて 恋をしかけてるんだ…サラリと… やってのけなきゃ やってみせるサ 母さんが再婚した時だって弟が生まれた時だって バースディを忘れられた時だって サラリと受け流してきたんだから……)
次の日もヴァイは森の中で青年と会っていた。
「ねむる前に 耳をすますの… いつも知らない歌が 遠くの方からきこえてくるわ ほんとうよ きれいな合唱がきこえてくるの 天国からきこえてくるような歌声よ わたし みんなもそれを聴きながら眠るのかと思ってた でも… それは夢だって… それでおしまい 夢であろうとなかろうと わたしにはきこえることの方がすてきで大切なのに…」
「そうだね そうだよ ヴァイ 誰に似てようと似てまいと ヴァイはヴァイだからすてきなんだよ」
「?」
「すてきだよ」
「に…いさん?」
「目をつぶって…」
ヴァイにキスをする青年。
「兄さんじゃない ぼくは兄さんなんかじゃないよ だれだと思う?だれでもないんだ もうだれでもないんだ でも君が好き ほんとだよ 君が大好き」
(や…やってしまった)
兄さんが青年だと気づかないヴァイは、別荘に戻って青年に相談をする。
「ねェマリア どうしよう わたしどうしたらいい?」
「ん~」
「サラに相談したって きっと森へいっちゃダメの一点ばりだわ」
「ヴァイはどうしたいの?その人に…また…会いたいの?」
「…… あ あの人やさしいわ それにきっとひとりでさびしいのよ」
「へ? あ ごめ…… 先つづけて」
「とても寂しい目をしてたのよ」
(ぼくがァーッ?自分のことだろーっ)
マリアが困惑していると、ヴァイが自分をじっと見ていることに気づく。
「マリアはどうしていつもサングラスしてるの?」
「み みられるのきらいなの!!大きらいなの!!」
そこにサラが入ってくる。
「マリアは明るいのが苦手なのよね 栄養障害で…」
「サラ?」
「好き嫌いが激しくてめんくいでおまけにアホーだわ でも責任感はあるみたい そうでしょうマリア あなたはひとつのこと途中で放りだしたりしないわよね サ お茶をどうぞ」
(サラは…何者だ… 思えばこの舞台彼女があつらえたんだ…彼女ははじめからぼくの計画を知ってて近づいてきたのか 多分知っているんだ…そして“ヴァイに必要以上近づくな”“早いとこ幕をおろせ”……って警告してるんだ…ヴァイはぼくに恋してる だからほんとうにあとは幕をおろすだけだ でもいったい…)
サラの件が気がかりだったが、青年は翌日も森の中でヴァイに会いに行った。
会話しているうちに、マリアはヴァイに惹かれていることに気づく。そして思い出す。
昔、幼い頃、自分とヴァイは会ったことがあった。そして泣いているヴァイを慰めた。
ヴァイのいう「夢の中の兄さん」は自分だったのだ。
(ヴァイをささえてきたのはぼくだ はっ、そしてつき放すのもぼくというわけか できすぎだよ 幸せにヴァイ)
青年はヴァイを抱きしめて去っていった。
(なつかしいヴァイ 小さなかわいいヴァイ さっきの抱擁だけは真実だよ)
森から別荘に戻ると、サラが待ち構えていた。
「唐突ではあったけれど まあまあの別れ方ね サム・バン監督の息子」
「みてたの…悪趣味だな」
「悪趣味でもきわみまでいけば芸術よ」
(やっぱりね 知ってたわけか)
「ヴァイの夢の中の兄さんは…ぼくだったよ 今さっき思い出した どこかの撮影所でぼくとヴァイは仲よく遊んだことがあったんだ 多分1本あがるまでの数か月の間… ぼくは父さんにつれられて ヴァイはヘレンに連れられて ぼくらはヘレンと父さんが知り合うずっと以前に交流があったというわけサ」
「おかしいと思ったわ いくらなんでも2人がスムーズにひかれあっていくんですもの なんだかずいぶん遠まわりしたようね」
「フフフ 何がさ うまくいったじゃないか ヴァイは父親の呪縛から解き放たれめがねをはずし 2人の再婚も反対できない 帰る」
「グレアム」
「ぼくの名前まで知ってるわけ!! あなた何者?ヴァイの何サ」
「おやじが一緒なのよ きょうだい達の中であの子のことがいちばん気にかかってたわ だからあなたが近づいたとき調べたわけよ だれで何が目的か あなたのおかげであの子 いつかすてきな殿方とめぐりあった時 恋することができそうねェ いい準備体操になったわ」
「おめでとう ぼくもおやじの再婚うれしいよ ではこれにて体育教師退場!」
「マリアに戻ったら ヴァイにちゃんとさよならしていくのよ」
(退場してひとりで泣いてみるわけ?かわいいグレアム)
(とにかく成功だ!!… しめっぽいのは似合わない!! 幸福な10年後でも夢想しよう やさしいヘレン 花のたえない家庭 みがきのかかるおやじの映画…ヴァイは…ヴァイはきっとだれかに恋をして花よめになるころだ おやじはそれをみて だらしなく泣いたりして…そうだ!! その日の夜 おやじに電話しよう 酒を1杯おごってもらうんだ それぐらいはいいだろう 寄って今日のことを話したら おやじは笑うだろうか 酒をもう1杯おごってくれるだろうか)
場面転換。
ヴァイが切り株に座っている。
マリアに化けたグレアムは木陰からそれを眺めてみとれる。
グレアムはヴァイに別れの挨拶をしようとするが、サラに止められる。
「めったに見られるもんじゃないんだから 女の子のあんな顔」
「へ?」
「女の子はね ひとりぼっちの時 あんな顔しながら大人になっていくのよ 親にもみせない少女期の秘密の顔よ」
「あ 悪趣味!!のぞきじゃんか」
「あら 芸術の鑑賞よ」
「あ」
マリアとサラに気づいたヴァイ。
「ヴァイ マリアが帰るんですって!!」
「ヴァイ お元気でね」
「帰っちゃうの マリア」
「ええ のんびりしすぎたくらい…」
「あらマリア 帽子にゴミが」
といって、サラがグレアムのカツラを帽子ごと取ってしまう。
「きゃっ」
「わっ!! な なにするんだよ」
サラはグレアムのサングラスも外してしまう。
「わーっ」
「あ あ…あなた」
森で出会った少年がマリア=青年だと気づいたヴァイ。
グレアムは怒ってサラにつかみかかるが、サラは「必要悪だ」と言って笑う。
「な… なに?どうして 答えてよ!! なぜこんなこと」
困惑するヴァイ。
(たのむ いわないでくれ サラ)
「この男は サム・バン監督の 息子よ!!」
いたたまれなくなったグレアムはそのまま走り去ってしまった。
(グレアムぼーや 母親が再婚して弟が生まれて…あなたひとりなんとなくはみでてるんでしょう ヴァイがいいあてたわ 寂しい目をしてるって……)
「あ…まっ 待って」
グレアムを呼ぶヴァイを、サラが止める。
「ヴァイ 驚かせてごめんなさい 彼だけはみださせてハッピーエンドなんてわたしの悪趣味が許さなかったのよ 全部知っても もうヴァイはだいじょうぶ…」
「?」
数日後、別荘から自宅に戻ったヴァイは眼鏡を外し、長い金髪の左半分だけをバッサリ切って登校した。驚くクラスメート。
「どこでなにしてたのヴァイ!! 何日も休んでみんな心配してたんだから」
「あんな雑誌持ってきてごめんね」
「して…姫 めがねとその髪はいかなる結果で…」
「めがねは自我にめざめた証し… 半分カットの髪は……罠よ」
「わなー?」
「うそ!! ほんとは半分子供半分大人という不安定な自分の自己主張よ」
「自己主張!!」
「へーっ」
「ヴァイ あーた変わったね」
「なんかかーっこいい」
「あたしもその髪まねっこしようかな」
(自己主張というよりは…感傷に近いのだけど…わたしは半分……街の中に住んでいる… でもわたし80になったって半分しか街に住まないんだから あとの半分は…)
街を歩いていて何かに気づいた様子のヴァイ。電話ボックスからヘレンに電話する。
「もしもしママ?ヴァイよ急いできて 2人でよ…」
その様子をこっそり見守るグレアム。
(ヴァイ…その髪はぼくへの非難か… ぼくにだまされたって知って…泣いたんだろうな……夢の中の兄さんまでぶちこわされて……恨んでるだろうな…長い電話…… 外からだれにかけてるんだろう)
グレアムの元に車が近付いてくる。車から出てきたのはサム・バンだった。
「グ…グレアム グレアム!よくやってくれた!!」
「えっ」
「で で でかくなって あんなチビだったのに 顔みせろよ」
「とうさん…… ぼくは」
「ヴァイからおまえのこと聞いて なけてなけて うれしくて わしはいい父親じゃなかったのに おまえっ えらい!!」
ヴァイはグレアムが自分を見ていたことに気づき、サプライズでサムとヘレンを電話で呼び出したのだった。ヴァイはグレアムの元に笑顔で駆け寄ってくる。
(その時の… その時のヴァイになんとみごとな微笑!!少女はあっという間にはばたく… 驚きと感動とでぼくは目もくらむばかり…そしてその瞬間から ヴァイへの新たな恋がはじまった…)
<エピローグ>
「怒っていると思ってた」
「半分怒ったわ…これからも半分わがままいっちゃう 半分いじわるもしちゃう… でもあとの半分はレディになるわ あなたのために…」
「…♡」
「その髪はサラのさしがねか?」
「わたしのアイデア」
「姉さんに似て悪趣味だな」
「サラは兄さんよ」
「えーっ」
おしまい。
<超個人的感想>
最初にざっと読んだときは「グレアムはなんでヴァイに近づこうとしたのか?」と疑問だったのですが、
子供のころ、離婚した父親に酷いことを言ってしまい、会えなくなった
↓
罪滅ぼしのために、父の再婚を成就させたい
↓
でも相手には娘が居て再婚の足かせになっている
↓
自分がその娘を誘惑して、母親の結婚から注意をそらせばいい
という感じでしょうか。
しかしこの作戦かなり危険ではありませんか。
ヴァイが本当に恋愛に興味なさ過ぎたら失敗するし、グレアムがヴァイの好みじゃなかったら無理だし、ヴァイは作中「勘が良くて、誰かが自分を見ているのを察知できる」という設定があるので、もしなんかの拍子にバレて、警察に「お巡りさん不審者がいます」と言われたらどうするのか。
仮に作戦が成功しても、父親の再婚後、グレアムはヴァイとの関係を最終的にどうするつもりだったのかが気になります。そのまま付き合って結婚まで持ち込むのか、適当に理由を付けてフェードアウトか。自分の父親の再婚を成功させるためとはいえ、15歳を誘惑するために女装までして付け回す青年と書くと身も蓋もないですね。未収録の理由はストーリーにこういう突っ込みどころが多いからだったりして。
エピローグでサラが実はお兄さんだったという衝撃の事実が判明しますが、サラ登場時によく見ると水樹作品の他の女性キャラよりちょっとだけ骨太に描いてあって、胸が薄いのが分かります。でも最後まで読まないと気づかないかも。
色々突っ込みをしてしまいましたが、水樹作品ならではのリリカルな雰囲気満載で、実際に読むとあっという間に作品世界に引き込まれる名作ですので、もし機会があればぜひ読んでいただきたいです。
<おわりに>
これで水樹先生の未収録作品を全て紹介できましたが、ビーグリー社さんあたりで、電子書籍としてまとめてくれないですかね…。出してくれたら絶対買うのに。でも水樹先生はコミックスでちょくちょく「過去の作品は恥ずかしくて見返してない」といったコメントをしてたので難しいかな。
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