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医師転職での「病院分析」と「マッチング」のコツ

 前回<WILL-CAN-MUSTの「バランス」を考える>では
「キャリアチェック」から「CAN-MUSTの関係性」を確認し、
さらに「志望動機」から「WILL-MUSTの関係性」をみました。
 今回は「MUST」に注目して、自分と求人先とのマッチングのコツを考えます。MUST(求人側の必要条件)は求人票から読みとりますが、MUSTには求人票に書かれていない情報や特徴も含まれています。

 転職の準備段階で「自己分析」の次に行うのが「病院分析(MUST分析)」です。病院分析とは、求人要件に加え「求められる役割や働き方の本音」「募集の背景」「組織風土やビジョン」などを知っておくことです。この結果を参考にして、自分と求人先の接点を探り、自分との相性=マッチング度を判断します。

 病院分析の「一次資料」は求人票です。
ここから「MUST」を読み取るのですが、医師の求人票は募集科目の専門情報に片寄っています。勤務条件や待遇に加え、必要なスキルや経験、症例数など「定量的な情報」は提示されています。しかし「求める医師像」や「組織文化や経営方針」の定性情報が薄めです。そこで、面談までに他の二次資料から定性情報を集めて「病院分析(MUST分析)」を行います。

 ところが往々にして、面談は「定性情報不足」の状態で設定されます。面談を早めようとするエージェントの都合は別に述べます
 求人側が面談で「キャリアチェック」を行い、その医師が「自院のカラーに合いそうだ」と判断すると、早期に「内定」を出します。でも医師は、この段階では「自分にフィットする」かどうか「組織風土・文化」も判らない状態なので即答ができません。
 病院分析(MUST分析)が不足した段階で「面談」すると、こうした「悩ましい状況」になります。見学面談1回で自分との相性など判断がつきません。「詳しくは面談で確認」と煽る無責任なエージェントにはご注意ください。

「MUST」を分解して考える

 今回は「MUST」に注目してみます。
「MUST」は「求人側がして欲しいこと(必要条件)」と前回に定義しました。ですから、MUSTの主語は「私たち・病院=WE」になります。
 「MUST」は分解すると「WE WILL=したいこと」と「WE CAN=できること」にできます。医師求人なので「WE CAN=できること」は「私たちが医師にして欲しいこと」に変換しておきます。
 さらにMUSTには、求人票には表現されていない「定性情報」があります。そこで、WILLとCANの背景にあるものとして「私たち・病院のCULTURE=組織文化」を置きます。病院の価値観です。

  • 「私たち・病院のWILL=(私たちが将来)したいこと」

  • 「私たち・病院のCAN=(医師に)して欲しいこと」

  • 「私たち・病院のCULTURE=(私たちの)組織文化」

「MUST」を「WE  WILL」「WE  CAN」とし「組織文化=CULTURE」を加えてそれぞれの項目を配置したのが下図です。

MUSTを分解して再配置

 自己分析でのWILLとCANの主語は「私・医師」なので、WILLとCANは「I  WILL」と「I  CAN」になります。
病院分析でのMUSTの主語は「私たち・病院」なので、それぞれ「WE WILL」「WE CAN」になります。それに「組織文化=CULTURE」という価値観を加えます。これに対応するものは「個人の価値観=VALUES」になります。

 MUSTを分解して、それぞれを再配置すると、上図のようにそれぞれが相対します。各要素はあとで「言語化」の作業を行いますが、「言葉」で照らし合わせれば矢印で表す「接点」の有無をみつけられます。この「接点」が多いほどマッチング度が上がります。

医師の側からそれぞれの接点を確認すると、以下のようになります。

・自分がやりたいことができそうか=(I WILL)×(WE WILL)
・求人で求められる能力と合うか=(I CAN)×(WE CAN)
・自分の価値観と合いそうか=(VALUES)×(CULTURE)

この3つの「接点」を候補先ごとに比較すれば、複数の候補先と自分とのマッチング度が判定できます。候補先を接点の多い順に並べ替え、それぞれの諸条件を検討して最適な相手を絞ります。これがマッチングのコツです。
 
 接点があやふやだと給与や勤務日数で決めてしまいがちですが、接点の多さで優先順位が判ります。特に転職先の「CULTURE」と自分の価値観と合うか、自分の「カラーに合っているかどうか」を検討しましょう。これが「ミスマッチ」を避けるうえで重要になります。

情報収集でエージェントを活用する

 この「接点探し」は自分一人だけで行うのは難しいので、エージェントを活用します。エージェントは、ここで真骨頂を見せてほしいものです。相談すれば、自己分析や病院分析、求人票の読み方についてアドバイスしてくれるはずです。また事前に「キャリアチェック」をして転職候補先を提案しててもらいましょう。

 転職候補先が見つかれば、先生と病院の「WILL」のベクトルを確認します。病院のカラーが自分に合うかどうか、先方の「CULTURE」の調査を依頼しましょう。エージェントが取材してくる「CULTURE」は、他の病院事情に詳しくない医師にとっては「得難い情報」です。接点探しのプロとしてエージェントを使うのが正解です。

 もし、あなたが病院の医師採用担当であれば、こうした求人票に載らない情報をエージェントに提供することが重要です。
 さらに求職医師は候補先の病院ホームページを必ずみるので、そこでの情報提供を考えておきましょう。もし広報誌を出しているなら、バックナンバー記事を掲載します。理事長や院長の「あいさつ」から病院の「WE WILL」が読み取れます。病院医師が紹介された新聞やミニコミ誌の記事を掲載すれば、「そこで仕事をするイメージ」を感じ取るかもしれません。
こうした小さな取り組みが、医師招聘の大きな「きっかけ」になります。

 転職は、先生のキャリアや人生に大きな影響を与える決断です。そのため少し面倒ですが「自己分析」と「病院分析」、そして「接点探し」に時間をかけてください。転職の準備段階で「自分に合った求人先」を見つけることは「面談」をテクニカルに、卒なくこなすことよりも重要です。

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