高年俸クリニック転職で留意すべきこと
前回は、転職医師の最初の分岐点<スペシャリスト志向かゼネラリスト志向か>について書きました。今回は前回記事で宿題にしていた「高年俸の内視鏡専門クリニック転職」について私見を述べます。
※この記事はスルーしていただいて結構です。
クリニック転職で思うこと
クリニック転職で失敗された事例をお聞きして思うことがあります。
想像の域はでませんが、転職にあたって「スキルへのこだわり」が叶わず、その引き換えに「高年俸」で自分を納得させたのではという疑いです。
その先生の「WILL」が、最初から「高年俸」ありきとは思えないからです。
ただ一度「高年俸の軌道」に乗ってしまうと後戻りは困難です。
クリニック転職の際に留意いただきたい点をまとめておきます。
念のため申し添えますが、記事はクリニック転職を否定するものではありません。クリニックの理事長・院長先生に直接取材することも多く、個人的に取材先のファンになることもあります。
「内視鏡専門クリニック」の動向
まず「内視鏡専門クリニック」の概況(大阪府)からお伝えします。
ここ数年で目立つのが「下部消化管内視鏡的切除術」を前面に打ち出した新規開業です。ポリペクを行えば単価が上がるので、開業コンサルも推奨している様です。
大阪府にはクリニック・診療所が8,615(令和3年)あり、そのうち消化器診療を届出しているのが2031施設です。内視鏡検査は949施設で行われており、うち426施設の約半分が大腸内視鏡検査を行っています。
現在のところポリペクまで行っているのは190施設になります。すこし気になるのが、大腸内視鏡検査を行うクリニックのうち約40%は大阪市内に集中し、ここ数年は市内で急増していることです。
開業場所には集患しやすい「駅チカ」のテナントビルが選ばれます。
交通の便が良い場所は「坪あたりの賃料」が高くなります。このため新規開業場所として、梅田周辺より、やや相場の低い(新大阪、本町、難波、天王寺)あたりで「陣取り」がされているようです。
内視鏡専門クリニックは「損益分岐点」を超えるまでが大変
こうしたクリニックの分院長求人は高年俸が魅力的です。また外来数や検査数が基準を上回ればインセンティブの提示もあるようです。内視鏡専門クリニックは、経営者の資金とマーケティング・センスで設立されます。しかし投資の回収はクリニックの収益からです。分院長には「収益」が強く期待されていると自覚しておきましょう。
というのも、大腸内視鏡検査を行うクリニックの新規開業は、一般内科の開業より面積が大きくなります。大腸内視鏡検査を行うにはトイレ数を増やしたり、リカバリールームのスペースを確保しなければならないからです。 新規開業なので、集患のために結構なWEB広告費が必要です。当然、その分の初期投資額は増えて、固定費も増大します。これが、あとでクリニック経営にボディーブローのように効いてくることは想像に難くありません。
医師向けの小冊子「転ばぬ先の杖」で、内視鏡専門クリニックの年俸額の算定根拠を試算しましたが、内視鏡専門クリニックは、投資が大きい分、損益分岐点を超えるまでかなり大変です。
ただ大腸内視鏡の患者を確保できれば、利益が飛躍的に増大します。素人目にみても、内視鏡2列体制に早急に移行したいと思います。
クリニック転職における一般的な注意点
クリニック転職を考える際は、以下に注意しておきましょう。
(1)外来数アップと診療単価アップに目配りができるか
クリニック転職の成功の鍵は、外来患者数の増加と診療単価のアップです。これをやりきる自信があれば、クリニック転職で成功を収めることができます。
(2)急な方針変更に耐性があるか
クリニックは短期の損益に敏感なので、唐突に「方針変更」が起こります。それで人間関係がこじれると修復はかなり困難です。
管理医師を置いたうえで、非医師が間接的に法人経営に関与している場合は、コスト管理や生産性を追及するあまり、現場が混乱することが起こります。安易なM&Aだったり「実務経験の浅い幹部」が運営を仕切っているなら要注意です。
(3)管理医師として就任する際の注意
管理医師として就任する際は「法人が経営を行うので、先生は医療の責任者として働いてください」が常套句です。しかし、具体的な権限や責任範囲は契約書で明確にしておきましょう。
特に機器選定や人事権など、クリニックの運営に直結する重要な権限について確認しておきます。先生に開業意思があるなら話は別ですが、法人から納得のいく説明がなく、透明性も感じられないなら、いくら頑張っても「虚しい」だけです。
(4)病棟スキルのブランクにも留意
クリニック勤務が長くなると、病棟勤務の空白期間も長くなります。
クリニック勤務をしてから、いざ勤務医に戻ろうと思っても「病棟スキルが低い」ことを危惧されて、採用が難しくなることがあります。
それ以前に、中抜け休憩が長いクリニック勤務に身体が慣れてしまって、病棟へ復帰する意欲を失っているかもしれません。
次回はフレームワークで自己分析・「CAN」の具体化について考えます。
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