裁判権と宗教団体の内紛

判例分解ノック 7本目

概要  (東京地方裁判所 昭和50年10月6日 判決)
原告らの寄付行為は、被告(宗教法人)が広宣流布達成の時に本尊「板曼荼羅」を安置するための「事の戒壇」(正本堂)建立費用に当てることを目的としての金銭の寄付であったが、本尊である「板曼荼羅」は偽物であり、正本堂は「事の戒壇」でもなく広宣流布達成の時でもないことが判明し、出捐の目的たる重要な要素に錯誤があり、その故に原告らが寄付金の返還請求を起こした。
 
争点
「宗教団体の内紛に、裁判権が及ぶかどうか」
 
日本国憲法
「第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
②何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」
裁判所法
「第三条(裁判所の権限)裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。
②前項の規定は、行政機関が前審として審判することを妨げない。
③この法律の規定は、刑事について、別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない。」
 
判旨
「かかる宗教上の本質である信仰対象の真否や宗教上解決すべき教義の問題は、内心の信仰に直接関わるものと言うべきあり、裁判所が法令を適用して終局的に解決できる事柄ではない。そうですると、本件の争点はいずれも純然たる宗教上の争いであって裁判所が審判すべき法律上の争訟と到底言えない」
 
フレーズ
「宗教団体の内紛であっても、教義をめぐる対立や宗教的、信念の争いに基づく抗争など、紛争の核心がすぐれて、宗教的な争いである場合は、あたかも学問上の見解の対立や政治的論争に関する場合と同じく、法的規制に親しみ難く、裁判所の法律による判断は、何ら終局的解決をもたらすものではない。かかる場合には裁判所に介入することを差し控え宗教団体内部の自由な議論に任せた方が新居の自由を保障し、国家と宗教との分離を規定した憲法20条の趣旨に沿うものと言うべきである。」
 
 

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