単身で身寄りのない人の相続
判例分解ノック 8本目
概要 (東京家裁 昭60・11・19家事第1部審判、一部容認・確定)
単身生活者で、身寄りのない(法定相続人が存在しない)うえ、遺言もない、乙藤公(被相続人)が、急死した。このままでは、相続財産は国庫に帰属することとなる。ここで、甲田良と甲城花子が、自分らが、民法に規定する「特別縁故者」に該当する為、財産分与を受ける権利がある旨家庭裁判所に申し立てた。
民法(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
判旨
「まず申立人良は、被相続人の幼児から、その母さゆりともどもよくその面倒を見て、早くに実父をなくした、被相続人の生育を親身になって、助け、被相続人の父親代わりの役目を果たしてきた者であり、被相続人の相続財産の主要部分をなす、上記土地建物の購入についても多大な尽力をしたのみならず、一人暮らしを続けている被相続人の身を案じて、再三同人に縁談を進めたとしていた者であるから、被相続人との関係で上記のその他の特別縁故者に該当するものと認めるのが相当である。」
「これに反し、申立人花子の場合には幼少時に被相続人と同居し、兄弟同様にして育てられ、成長してからも親族として親しく交渉し、同申立人において被相続人の母の付添看護をしたりしたことあったものの、同申立人が婚姻した後は、被相続人との交渉の程度が薄くなり、時には電話で、被相続人の健康状態尋ねたり、被相続人が入院した際に、その見舞いに訪れたりしたり過ぎないのであって、上記の交渉の程度は、親族として、世間一般に通常みられる程度ものに過ぎないと言うべきものである、上記によれば、申立人花子は生計同一者、療養看護者に準ずる程度に被相続人との間に、具体的かつ現実的な交渉があったと認めがたく、したがって、同申立人が被相続人との関係で、特別縁故者に該当すると認めることはできない。」
フレーズ
「同法条所定の『その他の特別縁故者』とは、生計同一者、療養看護者に準ずる程度に被相続人との間に、具体的かつ現実的な交渉があり、相続財産の全部または1部をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に被相続人と密接な関係があった者と言うと解すべきである」
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