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若手外科医の抄読会Tips
はじめに
抄読会は多忙極めし若手医師、研修医の皆様にとって重要だけれど、負担となるプチイベントの一つです。
私も現在進行系で準備に追われているところですが、自分用の備忘録として、抄読会準備のTipsを載せておきます。
良い方法が分かれば更新していきたいです。
手順
①本文をdeepLに入力し、日本語で一旦全て読む
②notebook LMとchatGPT両方あるいは片方への論文投下
③2種類のプロンプトで要約を依頼(2-4種類の要約文が出来上がる)
④スライドに貼り付ける
⑤スライドに画像を貼る
⑥本文を英語で読む(私の場合は、紙に出力が望ましい)
⑦スライドおよびメモ欄の日本語を直す。
⑧理解度を確認しながら。発表練習をする。
私の場合のやり方ですので、参考にされる方はmodifyしてください。
①本文をdeepLに入力し、日本語で一旦全て読む
抄読会で読むと決めた論文を、できればwebサイトからコピーし、deepL(https://www.deepl.com/ja/translator)に入力します。pdfからの入力では余計な改行が入りがちですので、webサイトから取ってくるのが一番楽でした。
英語のまま読むのは多忙な若手医師には苦痛だと思いますので、ちょっと変でも日本語で読むのが楽です。そして一旦本文の外観を掴みます。
私はdeepLの有料プランに加入しているので、一気に全文翻訳できますが、無料版は5000字なので、この作業を入れるかは、人それぞれかと思います。ただ、学会発表や論文作成の際にも大量の論文を読み込む必要があるので、deepLの有料プランは個人的におすすめです。
②notebook LMとchatGPT両方あるいは片方への論文投下
言わずと知れたchatGPTと最近知ったgoogleが提供しているnotebook LM(https://notebooklm.google.com/)のにそれぞれ、論文のpdfをアップロードしたうえで、プロンプトを入力します。
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
最近、お二方のプロンプトを参考にしており、たいへん助かっております。
上記より引用したプロンプト↓
#あなたは博士課程レベルの医学系研究者です。
#あなたはこのソースの抄読会を担当します。以下の抄読会のポイントを押さえてまとめてください。
#ポイント
イントロダクションの要約
1.既知の事実: 既存研究の結果。
2.未解明の課題: 既存研究おける疑問点。
3.研究目的: 本研究で解明を目指す具体的な問題。
メソッドの要約:
4.研究デザイン: 前向き vs 後ろ向き。RCT、観察研究、メタアナリシス等。
5.Inclusion/Exclusion Criteria: 研究対象はどんな患者か?
6.評価方法: 主要評価、副次評価の定義。
7.統計手法: どんな統計手法がつかわれたか?
結果の要約:
8.主要評価項目がどのような結果だったか?
9.副次評価項目がどのような結果だったか?
ディスカッションの要約:
10.主要な発見: Discussionの第一段落に相当。結論とともに、他に重要な発見があれば2-3点挙げる。
11.発見1の裏付け: 他研究との一致や対立を文献で示す。
12.発見nの裏付け: 同上(発見や裏付けが複数ある場合はこの項目を発見3, 発見4…として増やしてください。)
13.Limitation: バイアスの可能性、サンプルサイズの問題等。
14.この研究論文の一般化可能性について論じる。
15.あなたがこの論文を精読したうえでのあなたの結論
もう一人、こちらの方のプロンプトも参考にしました。
背景:
この論文の導入部を3枚のスライドに日本語でまとめてください。
1. 既知の事実として、既存研究の結果を記述してください。
2. 未解明の課題として、既存研究における疑問点を挙げてください。
3. 研究目的として、本研究で解明を目指す具体的な問題を述べてください。
対象と方法:
この論文の実験設計の詳細を3-4枚のスライドにまとめてください。
1. 研究デザインとして、RCT、観察研究、メタアナリシス等のどれに該当するか示してください。
2. Inclusion/Exclusion Criteriaとして、研究参加条件と除外条件を記載してください。
3. 変数と評価方法として、エンドポイントとサブエンドポイントの定義を説明してください。
4. 統計手法として、t-テスト、ANOVA、回帰分析等、使用された手法を列挙してください。
結果:
この論文の結果を、図とグラフを中心に提示してください。方法と対応するように結果を明示するようにしてください。
考察:
この論文の考察を4-5枚のスライドにまとめてください。
1. 主要な発見として、結論とともに重要な発見を2-3点挙げてください。
2. 発見1の裏付けとして、他研究との一致や対立を文献で示してください。
3. 発見2の裏付けについても同様に記述してください。
4. 発見3の裏付けについても同様に記述してください。
5. 限界点として、バイアスの可能性、サンプルサイズの問題等を指摘してください。
結論:
本研究から得られた最も重要な知見とその臨床的意義を簡潔に述べてください。
ちなみにnotebook LMにスライド作成機能はないので、スライドは作れませんとお断りされますが、文章は普通に作ってくれるので、そのまま突っ込みます。
③2種類のプロンプトで要約を依頼(2-4種類の要約文が出来上がる)
先ほどの②でもはや完成していますが、要約が最大で4種類できます。今は試行錯誤中なのでこれだけ多くの要約ができてしまいますが、そのうち絞られていくでしょう。何故今は何種類も準備するかと云うと、AIの不自然さや要約のアラの洗い出し及び、それでもブレない要点を見極めたいからです。まだどのAIが使いやすいか(なるべく無料で使いたい)解らない現状で一つのAIやプロンプトを過信せず、自分にあったプロンプト作成やAIの見極めている最中です。色々試しましたが、今のところ、chatGPTとnotebook LMがかなり馴染んで、シンプルで使いやすいです。
④スライドに貼り付ける
⑤スライドに画像を貼る
chatGPTではスライドまで作成してくれますが、私は、提示されるスライドを調整するのが面倒なので、ここからは確認も兼ねて手作業で自分のスライドの雛形にコピペしていきます。スライド用の要約文を参考に、ペタペタ貼っていきます。最初はchatGPTのスライドを参考にすると良いと思います。
要約を貼り付けたら、次は、webサイトやpdfから画像を貼ります。要約に合致する画像を貼ること、論文に載っているfigureとTableはすべて貼ることが重要です。
⑥本文を英語で読む
スライドの体裁を整えたら、今度は本文を英語で読みます。AIの日本語訳を鵜呑みにすると、明らかにおかしい日本語がでてきます。結論がもはや逆とも言えるものさえあります。これはAIが悪いというよりも、本文の表現がAIと相性が悪かった可能性が高いので、ちゃんと英語でも読みましょう。英語を読むとき、私の場合は紙でなぞりながら読むほうが頭に入るので、ここだけは紙で印刷しています。
発表の時に、そのまま発表メモとして傍にも置いておけるので、個人的にはこれだけは印刷するようにしています。
⑦スライドおよびメモ欄の日本語を直す。
英語で内容をもう一度把握すると、自ずとスライドの間違いが見えてきます。スライドのメモ欄を発表原稿とするもよし、プロンプトの日本語訳をコピペしておくもよしですが、いずれにしてもスライドやメモ欄の日本語が間違っている部分を修正しておきます。英語と日本語を往復することで、内容の理解が深まるのでおすすめです。
⑧理解度を確認しながら。発表練習をする。
英語で本文を読破できれば、理解できているはずではあるのですが、論文が複雑であるほど、混乱してくることも多いです。
なので、ちょっとした抄読会であっても発表練習はしたほうがよいです。
声に出して、どう相手に提示するか意識するように練習すると、自分が分かっていない箇所も見えてきます。
終わりに
今回の抄読会ではこんな手順でやってみました。
今後、先達を参考にしつつ、これからもやり方は修正していくと思いますが、自分の備忘録として、残しておきます。
何かの参考になれば幸いです。