映画の会話みたいなやりとりその2
リビングで男は映画のワンシーンをリピート再生しながら、温めた冷凍ピザをスプライトで流し込んでいた。
一人でピザを食べながら喋りだす。
「今見てるのはパルプ・フィクションって映画で、サミュエル・L・ジャクソンがジョン・トラボルタと一緒にブツを回収に行く場面で、最後にエゼキエル書の文句言いながら銃ぶっ放す場面をリピートしてるんだ。」
「…」
「なんでここをリピートしてるかっていうと、この場面が好きで一番印象的だからだ。」
「…」
「エゼキエル書の話してんだけどさ、この場面でめっちゃ語ってるエゼキエル書の文句がかなり付け足されててさ、ラスト除いて大分映画オリジナルなんだよな。」
「…」
「心正しい者の歩む道は、心悪しき者の利己と暴虐によって、行く手を阻まれるものなり。愛と善意の名によりて、暗黒の谷で弱き者を導きたる、かの者に神の祝福あれ。彼こそ兄弟を守り、迷い子たちを救う者なり。私の兄弟を毒し、滅ぼそうとする悪しき者たちに、私は怒りに満ちた懲罰をもって大いなる復讐を彼らになし、私が彼らに復讐をなす時、私が主であることを知るだろう」
「…」
「この映画に限らないけどエゼキエル書のこの部分って復讐する時に言いたい文句ナンバーワンだと思わんか?」
「…」
返事はない。
語りかけてる相手はリビングの入口で死んでる男なので、返事が返ってくることはない。
ピザを半分残して、彼を射殺したガバメントを掴む。
「食料も備蓄も発電設備も平気だけどさ、新作映画が今後見られないのは残念だよなって思うんだ。世界滅亡とか最悪だわ。でもまぁ世の中には死ぬほど映画あるし何年かは既存作品見てれば暇にはならなくて済むよな。」
「…」
「でもやっぱり君の死体処理面倒くさいよな。下手にやると俺の住処に他の生き残りとか殺到しそうじゃん?」
「…」
「しょうがないからやるけどさ。」
世界は終わった
なので引きこもって映画に没頭する
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