2/3 マンチェスター・バイ・ザ・シー
とにかく言えることは、この映画をつまらないと言う人とは仲良くならないということ。
なれないのではなく、ならないとあえて言わせていただきたい。
「過去に傷を負った男が再生していく話」ではあるけど、大団円で終わらないのが良かった。
傷が癒えて希望に溢れる映画ももちろんいいけど、乗り越えられない傷があるということを丁寧に描いて、それでも優しさに溢れていたのが何よりも救いだった。
パトリックに愛情はあるはずなのにどうしてもボストンに戻りたがるリーのことが途中までは分からなかったが、地元に帰ってから何度も現在と交錯するように現れる過去の記憶が、決定的な事件を描写してから全ての見え方が変わる。
ずっと不機嫌なリーの様子も、時折監視カメラみたいに切り替わる第三者の視点も、腫れ物に触るような周囲の態度も、意味が繋がってからは全てが際限なく辛い。
亡き兄の部屋から見える 昔の自宅に向かってガラスを殴るシーンは本当に辛かった。
その後にパトリックの母親から電話がかかってきたのを無言で切った時、リーは彼女に対して苛立ちで行動しているのではなく、昔の自分を重ねて 最悪の事態を恐れているのかもと思ったらやはり辛かった。
元妻とリーが偶然道端で会って話したときの「そう言って貰えて救われたよ」という時の顔が全然救われてなさそうで辛い。この後どうにか感動の再生をしていくのかと思ったが、物語は最後まで単調に細やかに進んでいき、ほんの少しの希望を見せるだけで終わっていく。
リーはパトリックに「It's up to you」と最後まで同じ言葉を繰り返す。
初めは冷たく突き放すように聞こえた言葉も、リーの不器用な優しさだと気づいて、二人の抱擁に涙が出た。
自分を戒めるために独房みたいな部屋に住んでいたリーが、パトリックのために予備の部屋を借りてソファベットを置かなくちゃと少し笑うのを見て、乗り越えなくても生きていけるんだって 思う。