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売れるデザイン、伝わるデザイン|トップクリエイターの仕事術

遠くても行く価値のあるトークショーだった
そんなことを感じながら、当時の内容を思い出しつつ書いていこうと思う。

今回参加したのは、IT武蔵ビジネスプラザ / 株式会社andyoが主催する 「デザインで社会と話す。」 というトークイベントだ。


▶︎ こんな人に読んでほしい
デザイナー / デザインに興味がある人
営業 / マーケット開拓をしている人
体験談 / 成功事例を知りたい人

🎉 記事は無料で公開しています!
イベントでしか聞けない貴重な体験談が満載なので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。




登壇者紹介

左:Andyo 代表 久松陽一さん
今回のゲストスピーカー 右:studyand.design 代表 古谷萌さん

古谷 萌(ふるや もえ)|Study and Design 代表
1984年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。
株式会社電通を経て、2017年「Study and Design」設立。


ディレクションをする際に掲げたテーマ

1. 仁井田本家|震災後の業績回復ストーリー

福島県郡山市で300年以上続く酒蔵「仁井田本家」。自然派の酒造りにこだわり、多くのファンに愛されている。

震災後の業績回復のため、古谷さんが最初に取り組んだのは 「ダメージの少ない部分から変える」 ことだった。

✅ まず取り組んだのは米麹の商品デザイン
米麹の商品が伸び悩んでいることを発見し、「デザインを変えたら売れるのでは?」と考えた。

  • 低予算でも効果を出すため、社内の従業員を巻き込む作戦 を実施

  • 「チョコの形の麹は面白いかも?」と考え、「こうじチョコ」 を開発
    最初に古谷さんが考えたデザインは
    「変えてもあまりダメージが少ないものからやってみよう」との事でした。

従業員の手書きから誕生したロゴデザイン
25人のスタッフ全員に、紙とペンで「こうじチョコ」を書いた中から1名が選ばれたそうです

画像引用元: 毎日新聞

結果、広告なしでTV取材&SNSで大バズリ!
数日で仁井田本家のメイン商品になった。

新しくラベルデザインが生まれ変わった
引用元:仁井田本家

その勢いで、看板商品「にいだしぜんしゅ」のラベルも刷新。
当初は戸惑う声もあったが、最終的には全国の酒屋や飲食店からの問い合わせが急増し、新しい層に届く商品となった。

仁井田本家、総勢24名のスタッフのみなさま
引用:仁井田本家

▶︎ デザインの力で、伝統と革新をつなぐ。
古谷さんは「デザインはゴールではなく、蔵の人たちが最終的に自分で考えデザインも自分たちでできるようになってほしい」と語っていたのが印象的だった。


2. MOTHERHOUSE|新ブランド「Little MOTHERHOUSE」誕生秘話

コロナ禍でカバンブランド以外でフード事業を展開するエピソードをお聴きました!

マザーハウスは、2006年にバングラデシュで創業したブランド。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を掲げている。



カバンの仕入れ国である
バングラデシュ、ネパール、インド、インドネシア、スリランカ、ミャンマー
 画像引用:MOTHERHOUSE
代表取締役兼チーフデザイナーは山口絵理子
各地の食を食べ歩き、食の素晴らしさに気付き、カカオに出会う
画像引用:MOTHERHOUSE

マザーハウス副社長とのすり合わせ

マザーハウスを支えるうえで、山崎副社長の存在が大きいと話す古谷さん
画像:xica

山崎 大祐(Daisuke Yamazaki)
株式会社マザーハウス代表取締役副社長。慶応義塾大学総合政策学部卒業後、ゴールドマンサックス証券にエコノミストとして入社。


▶︎ きっかけは「カカオ」との出会い


インドネシアのカカオを使ったチョコレートブランドを立ち上げる際、古谷さんに ネーミングの依頼 が来た。

当時、多くの経営者は「何億も資金調達してから事業を始める」スタイルが主流だったが、古谷さんは 「小さな取り組みから始めるのもアリでは?」 と提案。

こうして生まれたのが 「Little MOTHERHOUSE」

①カカオを主役にした写真
②・④コロナ渦で自分たちで葉っぱを作って撮影に挑む
③いろどりの人気商品たち

2022年、初となる銀座店をオープン
画像引用: MOTHERHOUSE

カバンシリーズからヒントをもらう

MOTHERHOUSEで人気の「いろどり」から着想

ついに看板商品IRODORI CHOCOLATEが完成

ホワイトチョコをベースに古谷さん監修のもと
見た目、味に力をいれたそうです。
引用画像:JDN

▶︎ 商品開発のこだわり
試作品を食べた古谷さんは、「これは売れないです!」 と即答。

  • 理由:味がイマイチ、1枚食べきれない

  • 遠慮せず、ダメな点をはっきり指摘

  • 何度も試作を重ね、納得のいく商品が完成

久松さん)「これは、萌は企業のビジョンとかブランドの在り方をとらえてデザインするの?」
古谷さん
「僕は事業提案とか中長期提案は自分ではしないんですけど」
「マザーハウスの福社長の山崎さんがビジネスマンのプロフェッショナルなので」
「山崎さんの話は正しいけど、自分の中でのストリーラインができないと」
「なんか、失敗しちゃうんじゃないかな….💦 という心配の方が強くて」
「結局、名前とか商品自体ってデザイナーでは動かせないところなので」
「言うんだったら、最初に言わないとそのまま僕らはカタチにしちゃうから…笑」
「完成したけど、まぁまぁしか売れないとか」
「なんか、マイナスだよね…とか」
「人も増やせないね…っていうふうになってしまうから」
「売れたら自然と人は増員できるし、なのでデザインに入るまえに山崎副社長と真剣に話をしました。」
「アートディレクター目線で気になるところの話をして」
「このままだと、そんな上手くいかないと思う!っと伝えました。」
「いきなり、飲食をやってない人たちだから」
「味とかも結構ダメ出しをしました。」
「当時、最初に開発した"いろどりチョコレート"を試食したときに」
「これは売れないと思う。」と伝えました。
「1枚食べれないとか」平気で言うし
結局のところ、見た目がよくて一回は購入するけど
美味しくなかったらもう買わないわけで
だから、そこは散々やりました。
そうやって、腹落ちしないと
やっぱり難しいところはあるなと思います。

古谷さんは 「言うべきことは最初に言う」 を大切にしているそうだ。
デザインの仕事は「カタチにするだけではなく、事業全体を考えること」が重要なのだと感じた。


3. 東京書籍|業界シェアNo.1になった理由

丸3年かけて、どのようにして業界No.1になったのか?


東京書籍は、日本最大の教科書出版社。特に 理科の教科書デザイン を担当し、全国シェアを42%にまで拡大 した。

問題点
・写真、イラストが多い
・子どもに対して手厚いデザイン(無難)
・漫画にしたり、読みやすくしている
・ビールメーカーが凌ぎを削って、シェアを取り合っている状況

売上1位が啓林館で2位の東京書籍の理科を古谷さんが担当に。

▶︎ここで古谷さんの目線でまず何を考え取り組んだのか!?
<ターゲット>
・全国の子どもたち
・先生のために作るのか?
・子どもたちのために作るのか?
・文科省のために作るのか?

常に板挟み状態からはじまった

▶︎ 先生と生徒、どちらのために作る?
理科の先生には、
専門的に理科を教える先生
新人で全教科を教える先生
がいる。どちらにとっても使いやすい教科書にする必要があった。


▶︎ デザインの工夫

ページをめくった先に「オチ」がある構成
イラストの統一、デザインシステム化
Google Earth風のデザインで視覚的に伝える


2結果、全国シェア20%→42%にアップし、業界No.1に!
これはまさに、デザインの力が生んだ革新だった。(凄すぎる..💦)


ナカチカ|100周年で変幻自在に大変身

1919年に創業し、現在は105年の歴史を持つ企業


▶︎ 105年の歴史を持つ企業が、新たな挑戦へ

1919年に呉服屋として創業したナカチカは、現在105年の歴史を誇る企業。
創業100周年のタイミングで、古谷さんの元に 「ロゴを作ってほしい」 というDMが届いた。

古谷さんはナナチカの社長に提案したグラフィックデザインです。
多摩美術大学から息をするようにイラストを描いていた古谷さん
古谷さんにしかできないグラフィカルなデザインが印象的でした。

引用画像:6kai

▶︎ ロゴは1種類じゃなくてもいい?
古谷さんは、ナカチカの歴史を振り返りながらこう提案した。

💡 「変わり続けることで生き残ってきた会社だから、ロゴも1種類じゃなくてもいいのでは?」しかし、当初は社長から「1つのロゴを作ってほしい」という要望があり、なかなか理解されなかったという。


▶︎ 「変幻自在」というコンセプトの誕生

ロゴをただのシンボルではなく、企業の特徴やストーリーを伝えるツール にするため、発想を転換。

  • 名刺や販促物に多様なデザインを取り入れる

  • 名刺交換の場で「面白い!」と話のネタになる仕掛けを作る

結果、「変幻自在」というコンセプトが生まれ、企業の多様性を表現するデザインが採用された。
特に、ナカチカの社員は個性豊かな人が多かったこともあり、この柔軟なデザインがフィットしたそうだ。


▶︎ デザインから新規事業へ広がる化学反応

音楽活動と仕事を両立しているスタッフがいたり
引用画像:ナカチカ
映画を作る集団ができたり
引用画像:ナナチカ

この「変幻自在」のコンセプトを活かし、さまざまな新規事業が立ち上がった。

  • プロモーション / プランニング / 映像 / デジタル

  • 物流 / AI / ヘルスケア


カタチや事業内容が変わり続けてきた会社だからこそ存続できている。
社員一人一人が生き生きしている会社だと感じました。 
古谷さんの手で変幻自在にロゴをデザインするだけではなくて、
その先の相手とのコミュニケーションを汲み取った上でモノづくりをしている考え方に感動しました。


UERUTO|森づくりを通じて、自然資本の新しい価値を創造


森林から人を守る取り組み

▶︎ 自然電力とのつながりから生まれたプロジェクト

「森に木を植える職人の活動を広げたい」という想いから、ロゴ制作の依頼があった。

しかし、資金がほとんどない状態。
当時、活動名は「青葉組」とされていたが、資金面で厳しい状況下で古谷さんは 「無料でロゴを作ります」 と申し出た。

当時の葉っぱのデザインから
青葉組というじ字がアシンメトリーに感じて
葉っぱの中に馴染むようにあしらったそうです。
葉っぱとしぜんに馴染んでいるのが伝わってきますね。


▶︎ 2年後、プロジェクトが大きく成長

2年後、代表の中居さんと再会。
古谷さんは「中居さんの熱意に心を動かされ、ぜひ彼の想いを広めたい」と感じたという。

古谷さん)中居さんはとても熱意のある方で
ぜひ、公式サイトの代表メッセージをご覧ください。

画像をクリックする代表挨拶ページに飛びます。
引用画像:青葉組

▶︎ 企業との連携がスタート

  • KDDIや電波塔などのBtoB案件が増加

  • 国の未来応援基金で大規模な資金を獲得

  • メンバーも1人から、新潟・栃木・茨城・東京へ拡大

中居さん)
青葉組のブランディングとは別に木工ブランドが作れないか!?
と古谷さんに相談があったそうです。

中居さんが自ら考えた"うえると"という名前で
どのように落とし込むか古谷さんがブラッシュアップしたそうです。

うえるとどうなる!?
うえる人!?   
この問いをコンセプトに据え、新たなブランディングが生まれた。
後半に続く….….…. 


古谷さんの心強いパートナーとして
家具、空間デザインなどマルチに活躍する西尾さん加わってもらった。

西尾健史 1983年長崎県生まれ。
山口の大学で建築を学んだ後上京、桑沢デザイン研究所に進む。
卒業後、設計事務所を経て自身の設計事務所「DAYS.」として独立。
空間をベースに什器、家具、インテリアのデザインを手がける。
「TAKESHI」FIEL(2018年)
画像:imi-shin


西尾さんに依頼したのは
最終的なプロダクトは、我々ではなく木を植えている青葉組の
職人の人たちができることをやりたい!
と相談したそうです

木に座った時に椅子にしたら面白いかも! と思ったのがきっかけだとか。
左)中居さん 右)古谷さん
画像:camp-fire

完成したプロダクトがコチラ

(青葉組)西尾健史さん、(デザイナー)古谷萌さ、(ディレクション)西尾さん監修のもと
使えなくなった木材で商品化が実現

青葉組の中居さんの娘さんにも協力してもらったそうです
画像:camp-fire

▶︎ 人の手だからこそできるデザイン
古谷さんは、「UERUTO」や「青葉組」の活動を見て、こう考えた。

認証コードやパスワードを打つ際に
私はロボットではありません!という表記が出てくるアレを
イメージして作成されたそうです。

<ロゴを作った経緯>
古谷さん)UERUTOや青葉組がやっていることは、AIにはできない
人間にしかできないことだと思ったので
こういうロゴが良いのかなと思いました。

イメージ
画像:エンタープライズ

久松さん)これ、凄くいいなと思いました!
古谷さん)あ、ありがとうございます笑
古谷さん)去年作ったロゴの中では、一押しですね!
久松さん)ここに行き着くまで、人間にしかできないロゴになったのはどうして!?
古谷さん)元々、ポップにしたいという想いがあって
中居さんがポップなものが好きで、そういうイメージでやりたいと伝えられていて、1年前に別のロゴを提案していましたが
色々やっていく中で、僕の考えが変わって
青葉組と山の撮影で年に何回が登りに行くようになって
段々、感じることがあって、このロゴに行き着いたって感じですかね
久松さん)そうだったんですね。
古谷さん)3回目のロゴの提案で、これで提案するのではなくて
これが良いと思う!っと中居さんに伝えこのUERUTOが完成しました。


▶︎ クラウドファンディングで目標の7倍超え達成!
このプロジェクトは、単に デザインを作ることではなく、人々の想いを形にし、広めること にあった。

  • 環境問題への関心が高まり、活動の価値が認識される

  • 「冬場の活動が厳しい」という課題を解決するため、木工製品を提案

  • 西尾さん(家具・空間デザイナー)を巻き込み、新たな展開へ

デザインは単なる表現ではなく、「行動を変える力」を持っている。
このプロジェクトを通じて、それを強く感じた。


おわりに

最後までご覧いただきありがとうございました。
内容はいかがだったでしょうか?
私の拙いレポートが、誰が何かのヒントになれば幸いです。
デザインを生業にしている人、そうではない人に
何かに躓いたり、壁にぶち当たった時に、自分事のように
僕だったら、私だったらどう切り開くか?

結局は、相手との関係性も多いに影響すると思いますが
どストレート、ど真ん中、ど直球にまっすぐ想いをぶつけることが
経営者の心に刺さるのではないのかなと感じます。

何事も、行動と結果ですね。
僕も頑張ります。
この記事をご覧いただいたあなたも
どうか、めげずに自分を信じてアウトプットできれば良いですね。
一緒に頑張りましょう!

多摩美術大学の同期の二人
とても心地い時間をありがとうございました。

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