「利益の最大化」に隠された経済学の危うさ ♦競争社会と小説について♦
1つの玩具を目の前にして、手を出せずにいる幼い兄弟がいるとする。先に手を出したのは兄。弟は「ずるい」と声を挙げたが、兄に「自分はどうしたかったの?」と聞かれて、悩んだ末に「僕は譲ると思う」と答えた。その答えを聞いた兄は「じゃあ、お前の思った通りになったのだからいいじゃないか」と言って弟は納得させられてしまった。
「弟は『自分以外に玩具が欲しい人がいたときにどうすべきか』を考えてなかなか行動できなかったのですが、兄に『それがお前の利益だ』と諭されてしまいました。人には、この弟のように『どうすべきか』と『欲する』の間の葛藤があるはずなのに、利益だけを行動原理にしてしまのが一元理論です。私が危惧するのは、このような経験をした弟が次に同じような場面に遭遇したときにどんな行動をとるか。悩むくらいなら最初から取ってしまえと考えるかもしれません」
帝京大学経済学部経済学科 後藤 玲子教授の「経済哲学」より
黒豹コメント:
経済合理性を追求する資本主義の盲点をついたメッセージ。
人間の心を忘れた競争社会は、あらゆる領域で格差を生み出す。
それは、晩婚化や子供の少数精鋭化につながる。
結果として、将来の人口減が確実視されております。
人間社会を弱肉強食一色に染めると、やがて行き詰まりがくる。
現実にある気候変動も、無縁ではない。
脱炭素活動は必要ですが、同時に、過剰な炭素を生み出す経済社会構造にメスを入れなければ、根本的解決には至らないと思います。
上昇し続ける資本主義と言う名のエスカレーター。
踊り場を設けることができるのは、音楽、映画、小説などの芸術の力。
このパラダイムシフトは、人類最大の難題。
だが、まだ希望はある。
諦めて喜ぶのは、アフリカのジャングルで猿人を見送った猿たちかも。
わずか1ミリでも前進するよう、小説を書き続けたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました
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