新興V企業を見て思う事:兎編
どうも!株式会社DELTA-V代表取締役の上杉です!お待たせしました、本日は皆さんが好きそうな話題「先日、代表取締役が飛んで事業破綻した新興V企業」…を取り扱います。切り口が少し斜め上からでして私が経営者として社会人としてすごく疑問に感じていることがいくつかあり、その"切り口"自体を皆さんにご共有していきたいなと思います。
■前提
まず私は私自身が経営者兼プロデューサーでして、事業やコンテンツを立ち上げたり、他社様のコンテンツを手伝うことを事業にしております。私が経営する会社は従業員数30名程で8年程経営しています。内、バーチャル関連事業は2017年9月から行っているので6年半ぐらいのV業界経験があります。まず前提として書いておきたいことが、事業やコンテンツに失敗して赤字になって例えば会社が倒産したり代表が破産したりしても私は「やらない奴よりやった奴の方が立派」だという考えです。勿論、成功するに越したことは無いのですが、経営…特に中小企業の継続的な経営は中々難しいというか、一人会社ならほぼ個人事業主と変わらないのですが、従業員を10人100人10000人…と人数を抱えて経営するのは相当大変です。実質人数分の生活費を面倒見るのと同義ですし、従業員の中でも日本における"正社員"は法的加護も強く、普通に働いてくれている人なら良いのですが大なり小なりの問題を起こす人は勿論いますし、従業員数を抱える経営者は共通の悩みがあると思います。この"正社員"が今回の本題のキーワードでもあります。
■本日の話題
まず私が今回話題として取り上げるのは、ざっくり言うと先月の2024年1月28日に株式会社usabit.(以降、usabit社と呼称)というV事業を行っている企業の代表(厳密には代表取締役なのか?何の代表かは不明)が飛んだ…つまり失踪したことにより事業が破綻したというニュースが流れたことを取り扱います。ちなみにusabit社と私は一切面識が無く、組織と代表の思想的にもかけ離れていたと思います。細かく記載すると長くなるので下記にmoguLiveさんの記事を貼っておきます。
前提で記載した通り、バーチャル事業に限らず何か事業起こして自分で責任を持って進めるという事はただその事業にライドする被雇用者側とは次元が違うレベルで立派な事だと思うのですが…が…がが、流石に失踪は良くないと思います。正社員への給与未払いや外注費の未払いが発生しているようですが、そういった赤字状態になってしまった場合は各所に連絡して支払い計画を立てる等の対応が必要かと考えます。会社って閉じるにも色々な方があるのでせめてそのどれかを選択する事で代表取締役の責任は全うできます。その後、代表が所属VTuberの女性に性的ハラスメントを行っていた等の告発が出てきていますが、そちらは業界あるあるですが告発の内容通りかが真偽不明なので今回は扱いません。
usabit社はよくよく調べると北海道函館市にある法人登記場所に事業実態があるのか怪しかったり(おそらく無い)、設立は2023年4月18日の超新興企業さんです。事業の実態がイマイチ見えてこず古参の私からしてもどこの会社?という状態なのですが、所属していたVTuber達は各ライブ配信プラットフォームで活動されていたようなので、事業実態は怪しいがタレント活動実態だけはしっかりあるようです。本事案は契約書が無かったという話を耳にしますが、バーチャル界に限らず配信者やタレントが契約する企業を選ぶ際に企業の下記情報をチェックした方が良いです。特に10代20代女性は企業を選ぶ際にチェックしてください。
・事業実態があるか?
・事業に対してオフィスをしっかり構えていて事業が回っているか?
・登記住所とWebに掲載されている住所が一致しているかの確認。
・代表電話番号がしっかりあるか。
・登記住所の不動産情報を調べる。Web上の不動産情報から家賃や坪面積(オフィスの広さ)を確認し、事業の規模感や実従業員数を確認。
・起業の段階にもよりますがシェアオフィスやリモート主体の企業は事業実態の透明性が低く従業員の責任履行性が低くなるので微注意。
・代表取締役と他の取締役の本名名称をWebページにしっかり記載してあるか。
・Webページで役員名がテキストではなく画像で掲載されている企業は要注意です。役員が何かしらの事情で検索除けを行っている可能性有り。
この辺の情報を確認してください。これは結構参考になることを記載しています。なぜなら私はキャリアのセンターで審査部門で働いたこともありますので、実用性が高い企業情報の確認方法です。また10代20代前半ぐらいの女性であれば相談しづらいかもしれませんが、企業と契約する際には親御さんに確認してみてください。親御さんが一定のフィルタの役割を果たしてくれます。私は「電子妖精計画」ではキャストによっては親御さんと話したりの対応もしておりました。企業としては疚しくなければ親御さんが出てきても普通に対応します。むしろ、私の場合は若年男女は知識も人格性も完璧とは程遠いので親御さんと話して大人同士で内容を握っておきたい…という意思まであります。親御さんでなくてもご家族であればOKだと思います。
■ネット上でこういう人や企業には気をつけて欲しい
少し本題から離れるのですが、バーチャル業界が一般普及してから思っていることがあって、X(旧:Twitter)やインターネット全般において「やさしいせかい」系のテーマを持ったり情報を発信するアカウントや企業はその思想の履行性が低いので信用しない方が吉だと考えています。個人Vのアカウントやクリエイターのアカウントでもしばしば見るタイプなのですが、企業やエンタメってそのほとんどがビジネスなので道徳心より法務的にシステム的にしっかりしている事の方が重要です。過度な個人の権利を主張したり、他社他人を批判しているインフルエンスアカウントは実態はそうでないことが多く、そういうアカウントは自分で事業やったら全然うまくできない人達なので、そういう情報に騙されないで欲しいです。更にはそういうアカウントや企業の中に若年女性を狙う輩が紛れている可能性も多分にあるので本当に気をつけて欲しいです。私はバーチャル界古参としてそういったアカウントを粛清したいと考えている。
…なんだかシャア=アズナブルの演説みたいになってしましましたが、そういうことです。私はDELTA-Vの従業員にも過度なやさしさで対応するのではなくダメなものはダメ、配信者が誤った認識をしている時はそれをしっかり伝えなさいと教育しています。"誤ったやさしさ"や"見せかけのやさしさ"は業界や事業を破壊します。それが解らないのは坊やだからさ。
■usabit社の件で疑問
現状、Xでは一般的な論調として「代表ひどい」「会社ひどい」がほとんどで、まあそれ自体は事案の内容から当然ではあるのですが、私からするとすごく大きな疑問があります。X上で散見する情報の中に所属していたVTuberの方が「正社員で雇用されいたが給与が未払いです」という情報発信が多かったことです。中には4か月未払いという状態の人がいるらしく、これは他のV事業者の経営者も驚いたと思います。驚いた内容は…
「給与未払いなんて会社ひで~!」
…ではありません。そこじゃないんです。
「VTuberという活動を労働対価として正社員にしていたの!?」
…という所です。
業務内容は?賃金条件は?就業規則は?
VTuberとして活動しつつ、本業務として何か作業があっての正社員ですよね?…という疑問が頭から離れません。
ここからは批判を覚悟で大人として書かせて頂きますが、新興企業でしかも個人からスカウトしてきた個人Vの雨宿り的なプロダクションで、ひとりひとりのVTuberのアカウントが創出する「売上」って微々たるものなのです。例えば個人ならVTuberで1か月5~10万円ぐらい入ってきたらそれはそれで嬉しいと思うのですが、企業の場合はその平均的数字が10アカウントあったとしても月間100万円の売上にしかなりません。それをタレントと分配して企業に残るのは50万円だとしても、代表が無報酬でオフィスは自宅登記で従業員を1名雇えるか雇えない規模です。いや、VTuberがひとり平均的に毎月10万円売上る事業だったら掛け算でキャラクター生産を行えば良いわけでむしろ教えて欲しいぐらい。実際は売上はばらつきがあり、トップ層とほぼ0円層に分かれるはずです。企業の事業として成立しない。おそらくusabit社に所属していたVTuberさん達ひとりひとりが自分の活動で生じた売上は大まかに把握していると思いますが、どう考えても継続的に企業が事業継続できるレベルで無いと思います。例えば、usabit社が函館で本業で漁業や水産加工会社を経営していて、VTuberの中の人をそちらの従業員として稼働させつつVTuber活動させているのであれば「正社員」が成り立つとは思います。
もしVTuber活動というのが仕事で「正社員」が成り立つ「職業」として認識している若い方がいればそれは中々誤った認識なのでご家族に相談された方が良いです。バーチャルに限らず世の中の芸能タレントの95%は個人事業主です。中にはプロダクションで新人の時に固定給制度にしている場合もある。人間心理のロジックで考えて「正社員」というのは固定給に近い、厳密には勤怠や個別条件で変わると思いますが、VTuberのような本人の稼働や努力が諸に反映され変動するエンタメでは固定給にしたらば給与に対して成果を出さない出せない人が続出すると思われます。何なら固定給を貰ってサボってしまう人が出てくるはず。システム的にそうなるでしょう。
正社員給与が4か月にわたって未払いという情報を発信されている方もいたのですが、一般的に正社員で雇用されている被雇用者って4か月給与未払いだと生活費が枯渇して生活できないと思うのです。少なくとも東京のような都市部はそう。関東実家暮らしでも0円で無理です。…というか4か月ということは3ヶ月分の給与振り込みが無いという状態かと予測されますが、普通はその途中期間で退職すると思います。給与の請求は退職後別途という感じで。
本事案においては正社員契約していたと発信されているVアカウントの多くが「契約書も無い」ということを仰っているのですが、蛇足かもしれませんが一応メールやLINEでテキストベースで契約内容と契約開始日がしっかり明記されているものがあれば法的には戦えると思います。事案の様相だとusabit社は勤怠管理もしてなさそうですし、正社員の労働対価と評価、そして給与要件は何だったのか…が、私気になります。少し厳しいことを言うと「契約」というのは企業から一方的に行うものではなく、「甲乙両者における契約」なので、「契約書が無い」「契約しないまま稼働していた」という状態は企業…つまり契約者の甲が100%悪いわけではありません。特に契約を交わさないまま稼働していた場合は乙の判断能力にも問題があり、乙(被雇用者や)が主体的に契約書を作るまたはそれを訴えることもできますので、そこは社会人としてしっかり確認や要件を満たしていなければそもそも直ぐに離れるべきだと感じました。
総じて社会人としてある程度働いている人や経営者ならば、ツッコミ所が多い事案だと感じました。実はこの気付き、X上でも指摘している方が1名いらっしゃいました。その辺のお話し詳しい方がいたらXでDMください。本事案で「正社員」の契約が何を指しているのかが私すごく気になります。
■バーチャル界への自分の想い
いやーまたこういう正論パンチをかますとインターネットで叩かれてしまいます。配信者界隈で上杉は性格悪いって言われてしまいます。ただ自分を守るためにインターネットに限らず一般社会でしっかりと生きるには個人個人ひとりが社会に求められる並以上の知識とリテラシーを所持するべきなのです。特に若年女性を狙う個人や企業はバーチャル業界や芸能業界には現実には存在するので本当に気をつけて欲しいと考えています。私は自分が創造する事業を0から立ち上げて運営まで持っていくゼロクリエイターであるので、他人が思う評価は割とどうでも良いと考えます。(消費者動向は気にします)
私は6年前ぐらいにCAグループのVTuber事業を協業で立ち上げてタレントトラブルで爆発炎上した当事者でもあり、今でもあの時の正義を疑っていません。故に事業も残っているし、あの時の他社メンバーとも一緒に現在も仕事をできている。これは嬉しい。表面的なアカウントの維持より業界の戦友達と死ぬまでダンスしていたいタイプのポケモンです。上場大手2社に比べると規模感は日陰なのですが、そこから苦しくもV事業を続けて今ではSHOWROOMとOPENREC.tvというライブ配信プラットフォームのバーチャルカテゴリは私が経営する企業が支えている状態なので業界に血を捧げてきた自負があります。その業界を後発事業者や個人が汚すのは宗教的に許さない…という熱い想いが在ります。
唐突なのですがDELTA-Vの公式枠配信者で「羽々てん」というVがOPENREC.tvで活動していますので見てみてください。男子は夢中になるかもしれません。
正直な話、バーチャルに憧れてV配信者になる人達は若いので、滅茶苦茶なことも多々起きます。その累計値で従業員が辞めるのが辛い。少し父親目線的な所でこれからバーチャル界に関わる若人がトラブルに巻き込まれないと良いなと思います。結局は件数で言うと(女性の場合は)企業Vになっても個人Vになっても質の違うトラブルに遭う可能性があるので、どちらが良いかは謎です。誰にもわからない。
■まとめ
私はバーチャル業界に新興事業者が参戦してくるのは歓迎でして、一種カテゴリの市場は競争相手がいないと市場加速しないので後発事業者カモンなのですがバーチャル事業を主体にして立ち上がる会社の事業は最大2年ぐらいしか持たないことが多いです。もう少しV事業者間でノウハウの共有やネットワークを作って後発の新興事業者がおかしいことにならない環境が在れば良いとは思うのですが、皆それぞれの事業者はビジネス上のライバルなのよね。悲しいけど、これ戦争なのよね!
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