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私の歩み⑪(チェーン焼き鳥居酒屋編その2)

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
実は私、年末から元旦まで自分の管理事業の関係でお仕事してます。
今日が仕事始めでした。
妻は仕事納めをすると、娘を連れて実家に帰省するので、私はむしろこの時期に自由時間が増えるというわけです。今日の夕方には私も妻の実家へ向かって正月休みを取ります。
というわけで、自由時間のあるうちに記事を書いておこうと思います。

前回はチェーン焼き鳥居酒屋に就職したとこまで書きました。

1週間で私に仕事を引き継ぐ予定だった店長代理の者がバックレ、右も左もわからぬまま、ひとまず店をきりもりしてなんとかやり切った1か月後。
リーダー的なフリーターのアルバイトの男の子に言われました。
「俺たちは、もともとA店長の元で育てられたんです。そのA店長が異動になってB店長代理になり、鈴木さんが入ってきましたが、俺たちははっきり言って鈴木さんについていく気はありません。」と。
私が着任する前に色々あったっぽいなーと思いつつ、前職の割烹居酒屋で割と今でいう陽キャになっていた私は、とりあえずその子の話を熱心に聞いてあげました。
さて、それはそうとして、どう店を立て直すか。以下自分が着任2か月目から行ったことを書き連ねていきます。なお、もう20年も前のことなので、今でも同様のことが通用するかわかりませんというか、通用しないでしょう。


◆現状を把握する

アルバイトリーダーの子にはそう言われましたが、私にはどうもそれがアルバイトの総意とは思えませんでした。なので、各アルバイトと仕事中に雑談交じりで他の者に聞かれないように「お店の状態をどう思う?」とそれとなく聞いてみました。
アルバイトは当時総勢8人。そのうちA店長に育てられたと恩義を感じているのはリーダー含め3人。その他は、A店長はいい人という印象はあるが別にそこまで恩義は感じてない様でした。
また、A店長に恩義を感じている3人は、A店長についていきたい鈴木さんにはついていかないというのを大義名分として、シフトをドタキャンすることが度々ありました。
出勤時間を過ぎても来ないので連絡したら、「悪いっすね、今パチ中でフィーバーしてるのでバイト行けませんわ。」と言われたこともあります。
私は特に怒ることもせず、「そうか。まぁ勝ってこいよ。」と言って休みを返上して出勤したりしてました。
それを見てくれていた他のバイトの子達は、「鈴木さんはこんなにがんばってくれてるのにありえない。」と言ってくれるようになりました。
私は「これなら十分チャンスはあるな。」と思いました。

◆ルールを1つだけ決めた

私はみんなに「居酒屋って大変だよね。しんどいよね。私も正直仕事したくないです。でも、職場は楽しくしたい。みんなと会えるから楽しくやれるから出勤しよう。そんな職場にしたい。それだけはお願いします。」と言いました。前述のA店長の息がかかっていないバイトの子たちは協力してくれました。その後1ヵ月もすると、バイトリーダー含め3人は居心地が悪くなったのか、自発的に退職していきました。

◆レシピを全部見直した

メニューは本部が全てレシピも含めて作成します。ただ、そのレシピ通りに作るとどうやっても出来上がりが写真と違います。
例えば、桶いっぱいサーモンというメニューがありました。
桶にクラッシュアイスを山盛りに敷いて、その上にサーモンの刺身を盛りつけます。ですが、レシピ通りに盛るとどう見ても「桶いっぱい」になりません。これって詐欺じゃん。というわけで、レシピの倍以上盛れと指示しました。もちろん食材原価率は上がってしまうので、そこは他のメニューで調整しました。例を出すと、お茶漬けがレシピ通りに作ると白米の量が多すぎて、お客さんの席に持っていく頃には汁を全部吸ってしまっておじやみたいになってしまいます。そんなのお茶漬けじゃないじゃんお茶漬けは汁と一緒にすするんやってことで、白米の量を半分にするとかしました。そもそも〆の一品なので、量をたくさん食べるものでもないですし。
このように全てを見直してレシピを再構築したことにより、写真と違うというクレームが無くなりました。

◆Excelで業務効率化をした

私が入社した頃は、棚卸集計や日々の日計表、売上予算表、シフト表を作るのにも全て紙に記入していました。店舗に1台レジ締め用のパソコンがあるにも関わらずです。私はこれらを全部Excelに落とし込んで自動計算されるようにしました。
よくある店長がアルバイトに信頼されないというのは、店長は「事務所にこもって店に立たない」というところです。まぁ実際店長になると、本部より上記のような資料作成を指示されるので、なかなか大変ですがバイトはそんなところは見ません。一緒にプレーヤーとして働いてくれるかどうかです。
なので、私はExcelで業務効率化し紙の帳票を無くすことにより作成時間を大幅に減らし、できる限りプレーヤーとしてアルバイトと一緒に店を回して汗をかくようにしました。

◆割引をやめた

私が着任したときは、会社の指示で「曜日割引カレンダー」というものがありました。例えば月曜日は最初の1杯無料とか、火曜日はレディースデーで10%割引とか、金曜日と土曜日は680円で飲み放題とか。
そしてある週末。その日はとても来店が多くて店はてんやわんやでした。終わった頃には、みんな疲弊してました。でもがんばったねと。で、売上を見るわけです。あんなにがんばったのに、大入りどころかその日の予算にも届いていませんでした。あの時のガッカリ感は凄かったです。
というわけで、直属の事業統括部長にだけ「曜日割引カレンダーやめます。」と言い、私の店だけやめてしまいました。違う部長には怒られたりしましたが、私は引きませんでした。まぁその辺は事業統括部長がなんだかんだ守ってくれたようです。
すると、割引が無くなったからとお客さんの足が途絶えるでもなく、クレームをもらうわけでもなく、むしろ売上・利益ともに好転しました。
思ったよりお客さんは割引なんて望んでなかったんですね。それよりも、そこそこ美味しいものを食べたいというレシピの見直しの方が効果があったようです。

◆権限を委譲した

経験等を踏まえて、少しずつ各アルバイトに色々権限を委譲しました。ただし、事後報告だけしてねと。
例えばホールのアルバイトリーダーが「今日私の友達が飲みにきたので10%割引しました。」とか、「ちょっと店が回ってないので、満席お詫び券(次回1杯無料とか)を渡して入店をお断りしました。」とか。本来お金に関することは店長の許可をもらってからというのが筋だとは思いますが、私は「それがベターだと思うなら全然やっていいよ。」と言って彼らに任せました。むしろ褒めました。すると、結構みんな自分で考えて動いてくれるようになりました。

◆ひたすら洗い物をした

上記によりアルバイトの子たちが育ってきたら、私はひたすら食器洗いをしてました。というか、店が回らなくなるのはほぼ洗い場がパンクするせいです。よく、とにかくお客さんを入れて酒と料理を提供しろ、洗い物は最後でいいと言われますが、現実はそうではありません。まず食器やグラスが足りなくなります。そうなると料理を作っても盛りつけができないので提供できませんし、グラスも冷えてないので飲み物が不味くなり、クレームに繋がります。そして食器洗いは誰しも嫌だと思う仕事です。手は荒れますし。
なので、私が率先して引き受けました。もちろん全体を見てホールが回ってなければホールを手伝うし、キッチンが回ってなければキッチンを手伝います。ただ、忙しい時間帯は終始洗い場を回すことがほとんどでした。各アルバイトが率先してホールやキッチンを回し、自分はひたすら裏方に回る。この方が繁忙時間をうまく切り抜けることができたのです。

◆ありがとうノートを導入した

これは私が発案したものではないのですが、とある店長会議の際に社長がどっかの経営者セミナーを受けた際に「ありがとうノート」というものをやっている経営者がいるという話をしました。本来私はこのようなものは「アホくさ」と思ってしまう性質なのですが、その時はなんとなくうちの店でもやってみるかなと思いました。
ノートを1冊買ってきて、ルールは一つだけ「何でも書いていいけど、ネガティブなことは書かない。」それだけです。特に強制もしていません。
まず最初は私が書きました。「〇月〇日晴れ。今日は出勤する際に富士山が綺麗に見えました。富士山ありがとう!」みたいな内容だった気がします。
他にも「〇月〇日雨。今日は快便でした。めっちゃいいうんこ出た!ありがとう!」とかです。
最初は「鈴木さんまたふざけたこと書いてー。」といった反応でしたが、私が続けていくことによりみんな少しずつ書き始めました。最初はみんな日記みたいな感じで書いてました。でもある時、「今日はオーダーの通し忘れがあったときに、すぐ作ってくれてありがとう!」とか、「私が間違ったドリンクを出しちゃったときに代わりに謝ってくれてありがとう!」とか他者に対するお礼をアルバイトの子たちが書き始めました。
口下手や照れくさくて普段口ではなかなか言えないことを書いたり、ホールとキッチンで業務内容の違いからなかなか知らなかったことをお互い書いたり、このノートのおかげでより一層コミュニケーションが図れるようになったのを覚えています。最初に想定してなかったことですね。
このノートは私が店舗異動になったあともしばらく続いたようです。計10冊くらいだったと思います。

◆シフトの要望は全てOKした

大学生のアルバイトがほとんどなので、どうしても急に穴をあけることや、友達と遊びに行く予定とかで何日か出れないということが多々あります。
その時は全部OKしました。とりあえず自分が休みを返上してでも出勤すれば何とかなると。
アルバイト同士で出勤調整してとか、代わりに出勤できる者が居ないと認めないといったことは一切しませんでした。
でも逆に、そのようなことをしていると、ここぞって時にこっちの無理をきいてくれたりもするんですよね。ギブアンドテイクってやつですね。

◆その後

というわけで、こんな感じで店舗を立て直し、私はなんとか月に何日かは休みが取れるようになりました。着任1年目の結果としては、売上は前年比140%、利益にいたっては200%アップという結果だったと思います。わりと好き勝手にやっていたので、一部のメニュー開発部や仕入部、直属ではない部長からは煙たがれたりしましたが、直属の事業統括部長が「鈴木はこれだけ結果出してるんです!」と社長に直談判してくれて、給与も手取り25万円まで一気に上がりました。私も晴れて正式に本店店長となり、新入社員を研修したりしました。そのまま出世街道に乗るかと思いつつ、ところがどっこい、その後大事件が起きます。会社が買収されました。次回へ続く…。

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