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しずおか一箱古本市の備忘録
今回、初めて参加した一箱古本市について、備忘録も兼ねて感じたことをまとめてみた。
一箱古本市とは、一箱分の古本を扱う古本市のこと。
参加者は自ら選んだ本をその箱に収めて会場でお店を出す。
参加した動機は言わずもがな、本を売る体験をしてみたいということに尽きる。
フリマサイトでも本を売ることはできるけど、モノを売る手触りのようなものはどうしても得難い。
お客さんとの会話も含めて、本を売ることを体験してみたいと思い、今回の一箱古本市に参加することにした。
自分はそもそも小売という業態に馴染みのない生活を送ってきたので、当日は全てが初体験。
ひどく緊張しながら準備を進める。
当日の朝、開店の1時間前に搬入を行う。
静岡駅北側にある商店街の通りに車で乗り付けて、素早く荷物をおろす。
搬入で車が列になっているので、すぐに車を別の場所にある駐車場へ止めに行く。
自分が今回割り当てられた場所はアーケードのある軒先ではなく、建物に挟まれた小さな広場の中だ。
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参加者は古本市運営担当から事前に案内をいただいている。
当日の注意点もわかりやすく資料にまとめられているため、迷うことなく開店の準備を始められた。
事前の準備として、銀行でお釣り用の小銭を両替したり、本にスリップ(タイトルと値段を書いた紙)を用意して本に差しておいた。
しかし、お札のお釣りを用意していないことに直前で気づき、コンビニにお金を崩しに行くことに。慌ただしく用意を行い、なんとか時間までに開店準備を終えることができた。
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10時に古本市が正式に開始。
アーケード下を往来する人が、まばらに広場のお店前にも流れてくる。
数人が好事家書店の一箱の本棚を流し見ていく。その視線や振る舞いひとつひとつに緊張してしまう。
そんな緊張のなか、若い女性のお客さんが自分の本棚の前で足を止めた。
口角だけ引き上げた不自然な笑顔で、試し読みを勧める。
もはや祈る気持ちで身動きせずに佇んでいると、お客さんが沢木耕太郎の著書を目にして、「この作者知っています」と声をかけてくれた。
沢木耕太郎の本への信頼と確信を持っていた自分は、旅の良さを綴ったエッセイであることを説明をした。学生時代に読んだ『深夜特急』を思い出し、自分の感じた素直な気持ちを知ってもらえるように話す。
すると、お客さんも紀行文や旅の雰囲気を堪能できる本に興味があると言った。
旅情を感じることのできる本として、『馬馬虎虎』(マーマーフーフー)という台湾の紀行エッセイをお勧めした。
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お客さんも興味をもって話を聞いてくれて、勧めた本を買っていただくことになった。
平静を装いながらも、高鳴る気持ちを抑えきれず、感謝とお礼の言葉を述べた。
お客様に粗相の無いように中身を確認してから、お釣りと商品をお渡しする。
お客さんが去ってからも余韻に浸っていた。本を初めて売ったという達成感をしみじみと味わう。
そのあとは気持ちが楽になり、緊張することもなく落ち着いて本を売ることができた。
その日のイベントでは、お客さんとのやり取りを十数回ほど経験。
現在でも、手に取ってくれた本を記憶の伝手にして、お客さんとの会話は直ぐに思い出すことができる。全てのやり取りが自分の中に刻み込まれたようだ。
15時に古本市は終了。
その後は片付けと撤収作業を参加者各自が終わらせたのち、関係者を集めた終わりの会と交流の時間となる。
そこでは本好きな参加者同士で話が弾む。
実際に本屋としてお店を開かれている方から自分のような初参加の人まで、多様な人たちが本を通じて他愛もなく話ができる。
そんな素敵な時間を過ごすことができた。
今回、古本市という形で対面販売を経験して、技術的なことの発見もあったけど、何よりも本を介したコミュニケーションがこれほど楽しいと知れたことが最も貴重なことだと思えた。
参加者の方、運営のスタッフの方々の尽力もあって貴重な経験ができたことに感謝しかありません。
このような場を作ることに少しでも貢献していけたらいいなと改めて思います。