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読書:白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件
湊かなえ
(2014年、集英社)※文庫

2024年11月20日読了

今回の購入は2014年。やはり寝かせすぎシリーズ。
わたしが持っている文庫本の表紙は井上真央さん(二重表紙で、二枚目に通常の表紙が付いていました)。帯も「傑作サスペンス待望の映画化!!絶賛上映中!」とのことだったので、映画化のタイミングで購入したもよう。
映画は中村義洋監督によるもの。
って、ゴールデンスランバーの監督じゃないか!!

湊かなえさんの作品を今まで読んだことはなく、ドラマ化されている作品もあるね、というイメージ。
あと、読後感が重たくなりそう(後味が悪そう)なイメージがある。めっちゃある(なぜだろう)。

わたしは全身全霊で読書をするタイプの人間なので、重たすぎる小説を読むと翌朝からの現実世界との乖離で参ってしまう。
そんな自分がわかってきたので、予め上記のイメージがあった彼女の作品とのご縁がなかったのは理解できる。
それなのになぜこの小説を本屋さんで選び、10年もの間本棚にあったのか。
ちょっとそこがわからない(笑)。
なにか惹かれる部分があってたくさんの本の中から購入を決めたはずなのに、過去の自分を思い出せない。寝かせすぎシリーズ寂しい。



読む前の知識

城野さん:容疑者となる女性。地味。
三木さん:被害者。女性の同僚。美人。
城野さんは怪しいけれど、真相はいかに!?

…という流れだなというところまでの知識のみ。
恐らく城野さんはめっちゃ怪しいんだろうな。
怪しいが恐らく犯人ではないんだろうな。
と思いながら読書開始。

冒頭から引き込まれた

子の習い事を待つ時間が個人的にミステリとマッチしているのでこの機会に、と読み始めたのだが冒頭から引き込まれた。
最初がいきなり女性(同僚)の電話で始まったから。

このタイプの小説で真っ先に思い浮かぶのが林真理子さんの短編(タイトル思い出せず。候補はあるので確定したら編集します。。。)。
林さんのは電話ではなく全編手紙つまり書簡体小説で、高校時代の高嶺の花的な美人の話題を平凡な女の子(今は平凡な女の人)たちが延々と手紙でやりとりするのだけれど、肝心の本人は最後まで登場しない(最後の手紙が彼女からのもの)。
この短編を思い出したので、一気に世界に引き込まれてしまった。

物語後半は家事をする時間を惜しんでリビングで読書。
それを眺めていた子が
「(白ゆき姫殺人事件を)クラスの人が読んでた」
と言い出してびっくり。
最近の小学生はすごいの読むね。「ノルウェイの森」読んだわたしが言うことじゃないか…その人とお友だちになって感想を語り合いたい(笑)。

読後

SNSも活用される展開(巻末にはSNSのやりとりや週刊誌の記事も掲載されている)で、城野さん怪しいよねの大波が押し寄せるさまが非常に「ありそう」でリアル。
事件の真犯人は個人的にはあまり気にならず、どういう経緯で上記の波が形成されてゆくのかを興味深く追う小説だった。

城野さんの地味で真面目な人生。
優しい人たちがあと少しだけ周囲にいてくれたなら、彼女もその幼馴染である夕子さんももっと生きやすかったのではないか。
小さな片田舎の息苦しさもリアルだった。
係長のような男じゃなく、もっと誠実に城野さんをきちんと愛してくれる男と出会ったら城野さんてとても幸せになれるタイプだと思う。
どうやら夕子さんと城野さんは今は交流していないようなのだけれど、それなのに夕子さんの城野さんへの信頼は本当に厚く、彼女を悪く言うことも「良かれと思って」余計なことをすることもない。
ふたりは今も友だちなのだな。
城野さんと夕子さんまた会えるかな。
彼女たちの人生はまだまだ続く。
どうか幸せに。

完全にすべてが解決して人生に一筋の光が…なんて小説ではない。ただ救いがないとは思わない。
わたしにはなんとなく城野さんの芯の強さならこれからもたくましく強く美しく人生を描いていけるのではないかと思えた。そうであってほしいと強く思う。

湊かなえさんについての「読後感が重たくなりそう」なイメージは覆された。そういうものもあるかもしれないけれど、少なくとも今回はそうでなかったので、恐る恐るながら少しずつ読めるかもという気持ちになれた。
また、湊さんは小説に着手する際、登場人物の履歴書を作成するとなにかで読んだことがある。
城野さんの人生がクッキリと浮かび上がるのもきっとそのおかげなのだろう。
登場人物について「あんなこともあったかも」「こんな本が好きかも」と妄想することが大好きなわたしは、登場人物の履歴書を作る湊さんと親和性が高いかもしれない。
もしかしたら10年前のわたしも、そう思ってこの本を手に取ったのかもしれない。

寝かせすぎシリーズは当時の自分の気持ちがよくわからないけれど、時を超えて自分からの贈り物を受け取れたような、そんな気持ちを味わうことはできる。



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