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旅立つ人を見送る

喪失感が半端ない。
右腕であり相棒であり、大事な人だった。
私のことを「お母さん」と呼ぶ彼女は、目配りと気配りが上手な、てきぱきと黙々と仕事をこなす、武士のような職人のような人だった。

パートの給料じゃ両親を養えない。そう俯く彼女の背中を押したのは私だ。
ここじゃないところで、もっとちゃんとお給料くれるところへ。と。

本当はちょっと怖い。彼女を辛い道に進ませてしまったのではないか。心は折れてしまわないか。元気にその能力を発揮できるのか。
傍にいたい、見守りたい、手助けしたい。
私は母親か。

社員として雇ってくれる会社を見つけ、給料も今より上がる。その分大変なこともあるだろう。
けれど、今よりはきっと生活費の面では余裕が生まれるだろう。
彼女の良さに気付いてくれる人が周囲に多いことを願う。
彼女の明るい笑い声が響く会社であってほしい。
私には願うことしかできない。彼女の人生が少しでも彼女の思い通りになりますように。と。

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