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春の始まりと恋の終わりはほぼ同時だった。平気なふりをしていたけれど、確かに落ち込んでいた。今までの恋人が遠くに離れていった理由を不必要に思い出しては結局は自分が悪いのだとさらに落ち込み、そんな私の性質までを受け入れてくれる人はこの世にいるのかと途方に暮れた。

あの時はまだ空気に冬の気配が残っていて、でも太陽のあたたかさはぐんと強くなって、春みたいだった。春みたいな日に公園で宗教の勧誘を受けたけれど、その帰り道では花を拾って、これは、ひとりになった私に対する何かいいことが始まる予兆なのだと思い込んだ。

もともと永遠の愛なんてものを信じていたわけではない。初めての失恋ににわんわん泣いたかつての少女も、いくつかの恋の始まりと終わりを経験すれば去る人の後ろ姿をやっぱりねと見送る強さも持ち合わせてしまう。なんとなくわかっていた気もする。

それでも恋の最中にいる人のほとんどがそうであるように、この人が私にぴったりなのだと疑わなかったのもまた事実で、まさか終わりがあるなんて想像もしていなかったのだ。

あーあ、愛なんてばかばかしい。これもまた、失恋の最中にいる人のほとんどがそうであるように、もう人を好きになんてなるまいとむきになり、それと同時にあの人だけが1番なわけはない、これからもっと素敵な人に出会うチャンスがあるのだと強気になり、それはそれで自由に、身軽になった気がした。

それから4ヶ月、季節は変わり、私は今、人生っていいもんだなと思って毎日を過ごしている。人生って素晴らしい。捨てたもんじゃない。今日死んでも構わないってくらい幸福な日だってある。

この浮ついた心を鎮めるために、今、新幹線に揺られている。

あたらしい季節のことを冷静に考えるには、もう少し時間がかかる。ひとまず今に身を任せる、のみ。

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