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コモンセンスを失った世界で、日本は希望の星となれ

企業のブランドパーパス(存在意義)を勝手に考えるシリーズ。今回は新年ということで大きくいきましょう。日本という国家のブランドパーパスを考えてみたいと思います。

日本のブランドパーパスを定義せよ

かつての日本は、戦後の奇跡とも言われる高度経済成長を果たして世界第2位の経済大国となり、貿易・科学技術立国として、世界中でお手本とされる存在でした。そして現在、GDPは中国に抜かれ世界3位、2030年の予測ではインドにも抜かれてしまいます。

もはや「アジア最大の経済大国」の立場を取り戻すことは不可能です。何も手を打たなければ、国際経済、政治の舞台で日本の影響力、存在感は薄まる一方です。

今こそ、国際社会において、日本がどのような存在でありたいか。日本が世界に提供する価値、世界に日本という国が存在するユニークな意義=パーパスを考える必要があるのではないでしょうか。

経済的な影響力が低下する中で、国際社会で尊敬される日本の新たなポジショニングを考えなければなりません。

コモンセンスを失った世界

日本のパーパスを考えるにあたって、現在の世界と日本の状況をおさらいしてみましょう。

内政面では、世界中で民主主義がポピュリズムにハックされ、社会的な不安定に直面しています。米国の大統領選ではバイデンが勝利したもののトランプ支持層も根強く残り、社会分断の深刻さを露呈しました。ヨーロッパの主要国でも、右翼政党の台頭など保守的な傾向が強まり、移民政策などをめぐって国内の分断が深まっています。非民主主義国家では、中国の習近平、ロシアではプーチンの独裁が強化される一方です。

国際政治に目を向けると、米中対立の深刻化、領土問題で近隣諸国への圧力を強める中国、ヨーロッパのリーダであるべきイギリスのEUから離脱など、世界は協調を否定し、果てしない牽制の時代に入ってしまいました。

そして経済面では、先進国では経済の成熟、少子高齢化が進んでいます。かつての高度経済成長のレシピはもはや通用せず、低成長モデルへのシフトは避けられない状況です。しかし日本を含め、各国の政治家は、選挙のために人気どりの短期的な政策に終始し、持続可能な低成長モデルにシフトするための長期的な手を打てずにいます。

こうしてみると、世界に今、最も不足しているのは、物事を健全に考え、判断する「コモンセンス」のように思えます。コモンセンスの意味は ”Sound and prudent judgment based on a simple perception of the situation or facts”、つまり、”事実の正確な認識のもとに健全に思慮深く判断すること”、です。日本語に訳すならば、「良識」でしょうか。

ちなみに、「コモンセンス」は「常識」と訳されることもありますが、正確ではありません。「常識」は、ある社会で一般に当たり前と考えられている知識、慣習という意味ですが、ある国の「常識」が他の国の「常識」と同じとは限りません。一つの社会の「常識」にとらわれることなく、「良識」でもって複数の社会を横断的に理解し、理性的に考えることがグローバル社会の課題解決には必要です。

Common Senseの原義を辿れば、「共通の感覚」です。翻って「社会生活をする上で、誰もが知っているべき共通の認識、あるいは、思慮、分別、良識など倫理的な事柄」ということになります。(引用元:Little Tales of British Life 「英国人のふところの深さはコモンセンスから」)

では世界的な課題を解決するコモンセンスとはなんでしょうか。

人類が共有する価値観として「世界平和」を否定する人はいないでしょう。そして「世界平和」のためには、国際協調が欠かせないということも人類が大きな代償を払いながら学んだ揺るぎない教訓です。なので、コモンセンスで考えるならば国際協調は迷うことなき選択のはずです。

それなのに、現実はそれと逆の方向に振れてしまっているのはなぜか?

大きな原因の一つは「外交問題は内政問題」だから。米国の歴代大統領が中国に対して強硬策をとるのは、「中国に対して弱気」だとライバルの政治家に弱気であると批判されてしまい、大統領選挙で不利になるから。中国が領土問題で強硬的なのは国内の政敵に弱みを見せないため。韓国の現大統領が反日路線をとるのは日本を「国民の共通の敵」に仕立てて自分への支持をあげたいから。皆、自身の権力を強めるための政治的理由で、外交問題を利用しているのです。

そしてこれは、政治家だけの問題ではありません。世界に分断をもたらしたとしても、その政治家を選んだ責任は最終的に国民にあります。

だからこそ。だからこそ、国民一人一人が「コモンセンス」を持つことが大切なのです。人類共通の平和と持続的な発展の理念を理解する。情報を正しく理解し、良識ある意見を持つ政治家に投票する。ポピュリズムにだまされない。「コモンセンス」を国民が持たない限り、政治の世界は変わらず、世界の分断も止まらないでしょう。

国際社会で、日本はコモンセンスの希望の星となれ

ここに、日本が国際社会で果たせるユニークな役割があります。日本においても政治的な問題は多々あるものの、幸い、民主主義がポピュリズムにハックされる事態にはまだ至っていません。国内の権力闘争のために外交問題を利用する必要も今の政治情勢ではないので、国際問題に対しても基本的には「コモンセンス」で向かうことができます。

また加えて「課題先進国」として世界の道しるべになることもできます。世界に先駆けて日本は、少子高齢化と経済の低成長に直面しています。世界の多くの先進国がこれから立ち向かわなければならない未知の状況に対して、日本が真っ先にそれらの課題を乗り越えることで、世界の手本になることができるのです。

ほとんどの主要国がコモンセンスを失うなか、国際社会の中で日本は「Voice of Common Sense」となり、コモンセンスを世界に広める希望の星となる。日本の果たせる役割は大きいでしょう。

コモンセンス国家になるために自然科学、一般教養を深めよう

では、どうしたら「コモンセンス」で理性的、健全に物事を考え判断できるようになるか。そのためには世界の主要な地理、歴史、文化などの一般教養、そして数学、物理、生物など自然科学的なものの考え方を学ぶことが必要です。

で大切なのは、「考え方」を学ぶということです。年号なんて覚えなくていい。大事なのは出来事のつながりと因果関係を理解することです。そうすることで未来を想像する力がつくのです。

20世紀後半の日本は、科学技術と高度経済成長で世界の手本となりました。21世紀の日本は、後世にどう記憶される国になるのでしょうか。

まだ間に合うはずです。


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