『らしさ』を物語る人・エピソードで差別化。事例・サンプルコンテンツの制作ノウハウ。
こんにちは!
ブランディングテクノロジーの公式noteに寄稿をさせていただいております、山崎です!
前回は、全国に550以上存在するローカルメディアを拝見し、「人(ヒト)」から生み出されるコンテンツの制作、展開について触れました。
タイトルにもある通り、ローカルメディアが地域内の「人」を登場させるコンテンツを制作・発信をする際に大切な「取材対象選びの基準」と「タイトル付けのコツ」について書かせていただきました。
今回は、続編として、より具体的な内容として「サンプル/ケース・コンテンツ制作のノウハウ」について書かせていただきます。
こうしたコンテンツは、適切な段取りで制作を行うことで『らしさ』を物語る強力な武器に。
具体と抽象。差別化に欠かせない具体例コンテンツ
「サンプル/ケース・コンテンツ」は、抽象的なコンセプトやテーマを表す具体的な事例をサンプル/ケースとして伝えるコンテンツを指して書いていきます。
例としては、企業理念や事業内容の魅力をより具体的に伝えるための社員インタビューコンテンツ、地域のリアルな軸や魅力をより具体的に伝えるための移住者インタビューコンテンツなどが挙げられます。
地域、企業がこうしたコンテンツを制作・発信する理由としては、簡単には次のようなものが挙げられるでしょう。
①コモディティ化
→地域も企業も唯一無二の特徴を持つものは少なく、似通ったものが多く存在しています。
②選択のリスクの軽減
→選択肢が多いため、何かを選ぶ際には「その選択肢を選ぶことによってふりかかるリスク」と「別の選択肢を選んでいたら得られるはずだったメリット」が頭をよぎる。適切な情報を提供することで、体感しているリスクと不安を軽減できる。
③ミスマッチの軽減
→事前に情報を取り入れ、互いの相性を想像できることで、ミスマッチの軽減に繋がる。
こうしたことを背景に制作されるサンプル/ケース・コンテンツですが、ただ制作するだけでは効果は期待できません。
伝えたいこと、(見る人の心に)残したい印象から逆算し、制作を行う必要があります。
今回は、その具体的な段取りと注意点についてまとめさせていただきます。専門的なスキルを要する物ではないので、ぜひ一度ご覧いただき、ご活用いただければと思います。
第一歩目は、目的の明確化。手段の目的化は厳禁。
具体例を伝えるサンプル/ケース・コンテンツを制作するにあたって、最初に取り掛かることであり、最も重要なことは、伝えたいこと、(見る人の心に)残したい印象の設定です。
企業の採用広報であれば・・・
「アットホームな社風を伝えたい」
「働きやすい職場だと思ってほしい」
地域の移住者誘致活動であれば・・・
「自然とともに生きる心地よさを伝えたい」
「地元の人は温かく、住みやすい」
企業であれ、地域であれ、具体的な話を進めるまえに、まずはこの最上流部分を決定し、関わるメンバーと共有することが必要不可欠です。
サンプル/ケース・コンテンツは作ることが目的ではなく、手段。このコンテンツを通して達成したい目的を定めなければ、コンテンツは活かされないのです。
伝えたいことを物語る人・エピソードを発掘。
最上流部分が決まれば、次は具体的なところへ移りましょう。
次に行うのが、最上流部分を体現する人や物語る出来事の発掘です。抽象的な上流部分をそのまま伝えても、人は動きません。
例えば、先ほど挙げたこれらをそのまま聞いて、率直にどうお感じになりますか?
「弊社はアットホームな会社だよ」
「ここらは地元の人が温かく、住みやすいよ」
僕だったら、こう思います。
「どこも同じようなことを言ってるなあ」
こう思われてしまったら、おそらく記憶にも残らず、スルーされてしまいます。そこで必要なのが、具体的な登場人物やエピソードです。(その有効性は、前回の『取材対象選びとタイトルが鍵。「人」を軸としたローカルメディアの事例から考える情報発信術。』でもお伝えしました。)
アットホームな社風を伝えたいのであれば、アットホームな社風を体現している社員の存在と周囲との関わりの中で見受けられるアットホームなエピソードを。
地元民の温かさを伝えたいのであれば、地元民の温かさを体現している住民の存在と日々の中で見受けられる温かなエピソードを。
丁寧に見つめなおし、発掘し、形にしていきます。
取材に慣れていないインタビュイーへの配慮。
発掘をした素材は、受け手が求めているものと時流に合わせて整理し、ウェブ・紙・音声など、中身と受け手にとって相性がいいメディアを選びます。その後は、それぞれのメディアに掲載するため、登場人物に取材をします。
取材においては、2点に注意が必要です。
①表面的な対話にならないように注意。最終的には、最初に整理した最上流部分を物語るエピソードを発掘できるように進める。
②取材に慣れていない取材対象者への配慮は必須。
この2点目は、地味に見えますが非常に重要です。
取材に慣れていない人が取材を受けると、どうなるか?
・すぐに言葉が出てこなくなる。
・緊張して、思考が回らなくなる。
・不安で表情が固くなる。
簡単にいくつか挙げましたが、(取材に慣れていない)ほとんどの人はこういった状態に陥るでしょう。取材を依頼する側としてはこれを予測し、インタビュイー(取材対象者)にベストパフォーマンスを発揮していただけるよう、緊張をほぐしたり不安を取り除いたりできるような配慮を事前・最中に必ず行う必要があります。
・依頼の意図を丁寧に事前に説明する。
・前もって、当日聞く内容を伝えておく。
・アイスブレイクを入れる。
・相手が話しやすい話題から入る。
こうした配慮をいくつも施すことで、インタビュイーにベストパフォーマンスを発揮してくれて、いい取材を行うことができます。
ステークホルダー・リスクへの配慮を忘れずに。
取材を終えたら、その内容をメディアの形に合わせて記事・コンテンツ化します。
細かな構成・執筆のテクニックも気になるかと思いますが、それと同じくらい、もしくはそれ以上に重要なことがあります。それは、各ステークホルダーへの配慮・リスクマネジメント。
どんな人も1人では生きていません。社員であれば同僚や家族、企業関係者がいて、地元住民であれば近所住民や家族、住む地域の役所など、それぞれ日々関わっているステークホルダーを抱えています。
記事化・コンテンツ化する際には、こうしたステークホルダーへの配慮とその間に起こりうるリスクを予測し、防止する必要があるのです。
例えば、社員取材中で過去を遡っていると、ふと前職の職場への不満エピソードが出てきたとします。そのエピソードを活用したい場合には、前職の職場への配慮が必要です。
「この話をそのまま書いてしまうと、もしも前職の企業に務めている人が見た時にどう感じるだろう?取材対象者への印象が悪くなってしまうのでは?」
そのように考え、リスクを察知し、取り除くのです。この場合であれば、企業名を伏せたり、話し方をできるだけ温和な印象にし、前職の企業の立場も配慮していることが伝わる書き方をします。
一見すると忘れがちであり、頭では分かっていても察知が難しいこともあるのですが、「この記事・コンテンツは誰が見ても、一生記録として残っても、リスクはないか?」と言い聞かせ、最後にチェックを行うことは欠かせません。
自分で判断が難しい場合には、第三者に見てもらうことで明らかになることもあるかもしれません。
最後に
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
魅力やコンセプトなど、抽象的なレイヤーで差別化することが難しい中、差別化を試みるべきは具体的なレイヤーです。
この具体的なレイヤーを充実させることで、結果的に抽象的なレイヤーが明瞭に浮かび上がって見えてきます。
ご覧いただいている方の中に企業広報、地域広報を担う方がいらっしゃれば、手垢のついた表現やありきたりの言葉に寄りかかるのではなく、魅力的なコンテンツを自給自足してみてはいかがでしょうか。
執筆者プロフィール
山崎 貴大
1993年3月生まれ。文教大学 湘南校舎 国際観光学科卒。
旅行会社にて成田空港での訪日旅行業務に従事した後、経営者プラットフォームを運営するベンチャー企業へ転職。現在は、各社の経営課題の解決を目的としたコンテンツ企画・制作事業の立ち上げを経験し、同事業の責任者 兼 同社の編集長を務めている。
複業では、ブランディングテクノロジーの公式noteへの寄稿の他、経営者・起業家取材、採用広報コンテンツ制作等を行っている。