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学生30日間西ヨーロッパ鉄道一人旅日記① 期末レポートを北極で書くの巻
約1ヶ月間西ヨーロッパを鉄道で旅行した時の記録。写真を追いながら振り返っていきたい。
2023年2月、当時大学3回生の春休みだった。
書いている今は早いもので2025年2月だ。そういえば何もまとめていなかったな、と反省した次第である。ボンクラ適当な旅日記だが暇つぶしの読み物になれば嬉しい
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フランクフルト▶︎カッセル▶︎ゲッティンゲン▶︎ベルリン▶︎ウィーン▶︎ローマ▶︎バチカン▶︎フィレンツェ▶︎ヴェネツィア▶︎パリ▶︎ロンドン▶︎ブリュッセル▶︎フランクフルト
あらすじ <学生30日間西ヨーロッパ鉄道一人旅>
1ヶ月とはいえ、実は2週間はドイツのカッセルという町に滞在していた。
知り合いの若手経済学者がドイツで共同研究をしており、2週間出張するが、一人で二人部屋を使うのは贅沢だから一緒に来てもいいヨというのだ。
しかも滞在費はいらないという。都合が良すぎると申し訳ない気持ちだったが喜んでついて行った。
そのあとは「ユーレイルグローバルパス」(EU版青春18きっぷといえるだろう)を使ってオーストリアやイタリアやイギリスへ鉄道で訪れることになるのだが、色々とハプニングを対処していくのが楽しかった。
自己紹介がてら、きっかけ
そもそも「何故ドイツ滞在について行ったのか?」…海外の大学院に進学したく、ドイツが行き先第一候補だったからである。また、自分は寝台特急が好きなのでヨーロッパの国境を越える鉄道に憧れており、いつか鉄道で広い範囲を旅することを夢見ていた。なんなら自分はトルコ語が少しできるので地続きのトルコにも行ってみたかったのだ。(トルコは結局地震があったため行けなかったのだが…)
大学生の春休みの長さを舐めてはいけない;1ヶ月以上の滞在を実行するなら今だと確信した。
つまり、生活を体験しながらの視察目的にフツーに遊びたかったのだ。
私は当時、2020年入学の京都の大学生で、とにかく金がなかった。
国際系の学部だったため留学へのモチベが高かったのだが、コロナ禍で全部パーになってしまった。「1年間派遣留学なら学費無料で行ける。借金をしてでもこれなら長期留学を工面できる。しかも留学は必修単位だから口実にもなる」と考えていた。世間は甘くなかった。
一方で私は、高額な授業料で享受している大学での日々の学びをとても大切にしていて成績もよく、実際3年生になって就活をしながらも、アカデミックな道に進みたいなと心の片隅では常に思っていた。早く自立したいこともあって進学は考えていなかったが、留学をはじめとした未練が多すぎて今と将来の自分に自信がなく、就活が思うようにいかなかった。
海外大学院に進学すれば学問も留学も一気にできるのでは!?奨学金のチャンスも学部留学より多いということに気が付き、ついに方向転換した。
(人生ギャンブルになってきたぞ)
ドイツ滞在のチャンスが舞い込んできたのはその矢先である。
いざ鉄道旅計画だ!
金ないと言いつつも、アルバイト箱詰めのバ畜生活だったため、みじんこ程は貯蓄があった。(ちなみに、この旅のあと残高0円になった)
手持ちの金で30日間の自分の経験値を最大化することを考えると、やはり鉄道旅がベストだ。
ヨーロッパ節約旅には格安航空一択だろ!という声もあるかもしれない。
確かにパッと見はそうなのだが、30日間で計算してみると、どうもコスパが悪い。
飛行機がストライキで飛ばない可能性や、1ヶ月分のデカい荷物を乗せる課金、出発時間(変な時間が多い)や、空港で待機する前時間、目的地から空港までの移動などを計算してみると、なんだかんだ鉄道の方がフッ軽で短時間にいろいろなところに隅々行けるし、自由時間の制約が少ない。
比較して他に短所があるとすれば移動時間が長いことだが、寝台列車で寝てしまえば宿代すら節約になるではないか!
そんなわけで旅行計画を始めた。ただし、1ヶ月分全て'何日にここへ…'などは決めていかなかった。大体の移動時間やあらゆる列車の時間や本数、滞在候補地域の物価や宿の値段は調べ尽くし、外せない場所や自分の財力的に滞在できるところと繋ぎやすいルートは決めたが、日にちまで決めてしまうと、自分の体力や街の規模感が想定外だった場合に旅が満足いかなくなる可能性があったからだ。
一人旅のいいところは、無理なスケジュールも休むことも自分次第でやっていけるところだ。
私は女だが、大バッグパックと小スーツケースで冬の1ヶ月を乗り切った。メイクもするし、普段は荷物の多い女だが、一人で余裕で運べる量だった。
参考までに以下3点は重要である。
寝台特急やホステルに泊まるなら当然だが貴重品は言葉通り肌身離さず持っておく。私は風呂以外、下着のように片時も離さなかった。もはや命。
洗濯用具(その使用風景から、ももたろう婆さんセットと呼んでいる)は割と使う。
あれば携帯は予備を持っておく。盗まれはしなかったが実際SIMでトラブった時に役に立った。電源も含め携帯も準命。
薬は必要(伏線)
ん?4点じゃないか。
他にも必需品や服の入れ方や荷物について書きたいことはたくさんあるが、いつか別でまとめようと思う。
旅立ち編
期末レポートとホッキョクグマ
出国前夜1月30日、大阪国際空港(伊丹)の側の東横インに滞在し、明朝、朝焼けとともに羽田で乗り換えた。
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コロナ禍終盤だったためか、フランクフルトまでの飛行機はすごく空いていて3人掛けのシートを全員が一人で使えるような感じだった。私も3人がけで横になることができた。
が、寝るどころではない!
大学生の長い春休みとはいえ、3月になると飛行機や滞在費が格段に高くなる。だから2月中に帰ってくる必要があった。大学は1月中に講義が終わり、2月半ばの期末試験やレポートを最後に学期を締めくくる。
要するに、期末レポートを抱えた状態で旅行を始めてしまったのだ(反省しています)
私は飛行機の中で、日本時間1月31日23:59締めのレポートを抱えていた。
ほとんど完成していたのだが、提出していない。
乗り込んですぐにPCを開いて取り掛かった。あと締め切りまで数時間…。
機内Wi-Fiに課金し、機内の照明が夜モードになっても構わずレポートを書き続けた。ロシア情勢に構わず北からのルートだったようで、北極圏に入った。上空にパソコンをカタカタしてる人間が浮いているとは、ホッキョクグマもびっくりである。
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北極点に到達すると機内Wi-Fiが通じなかった。タイムリミットが迫っている!!!「点」を少し過ぎたあたりでまた通じるようになったので、無事に上空で提出した。北極からレポートを出した人は私以外いるだろうか?奇異な経験だった。
まさに不眠不休の移動だったのだが、本当に美しい人生で直接見られるとは思ってもみなかった氷原の風景が窓の外いっぱいに広がり感無量だった。
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(その授業の単位は無事に取り、評定も最高点だったのでネタにできる。)
フラッフラだが絶妙にスッキリした旅の始まりである。
入国審査と「ヨーロッパ」
北極からイギリス上空の雲を抜け南下、フランクフルトに着陸する。地面が近づき、初めての街をミニチュアで概要説明されているような風景に気分が踊る。今回飛行機旅こそ選ばなかったが飛行機大好き人間なのでこの瞬間が最高にたまらない。
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無事に降ろしてもらったことに感謝し、入国審査にいざ挑戦である。
「何しに来た?」
「1ヶ月観光でEU圏内を滞在します2月28日に帰ります!」
「はあ?目的は?どこ行くの?」
とても怪訝そうな顔をされる。案の定の答えである。無理もない。
ドイツでは労働のため不法滞在を続けている移民が多く、おそらくそれを警戒されている。難民受け入れ国であったが、最近は極右政党も台頭し移民・難民政策においては緊張感が高まっている。(ちなみにトルコへ観光に行くためにドイツから入国するなんてことは一言もしゃべってはならないことはわかっていた。)冗談だが、国際的に強い日本のパスポートを偽造したスパイだってことも疑える。
スパイに間違われない放浪人の戦略は、
「まだ旅程の詳細は決まってないけど帰りのチケット取ってあります」
と実際のチケットを見せることだ。なんとか別室に連れて行かれず許可が降りたのはこれが決め手だった。
他国に入る時は、何がなんでも自国に必ず帰ることが、何より入国許可の証明になる。
今世界はグローバルとはいえ、国境の存在も強固になっている。
もし同じようにうんヶ月くらい放浪を考えている学生がいるのなら、現実に帰るチケットを必ず用意しておくことだ。片道切符は帰れない危険性だけではなく、入国できない危険性もあるのだ。自分の正当性を説明しきれる自信は私にはなかったので物理で関門を突破した。
今回の旅は「EUに入れば国境がないも同然」が一つ享受するメリットなのだが、EUに入るためにはより強く敷かれた国境を跨がなければならない。
これが一つ、現代ヨーロッパ政治が抱えている矛盾だと…私が思うところだ。
M先生と一等車
到着して、まずは先の便で着いている知り合いの経済学者のM先生と空港で待ち合わせだ。
M先生は、某志社大学の先生ではなく、全然別の県の他大学で教鞭を取られている。私自身が学生なのでリスペクトも込めて「先生」と呼ばせていただいているが、学問で繋がったわけではない。まだテニュアのポストではないが、その分野では世界的に大変ご活躍なさっているらしい。日本人ながらオーストラリアで学士を終えており、ハキハキした女性で、この展開の通りとんでもなく優しい先生である。
実は親しい知り合いの紹介で、お互いにしっかりと話したのはこれが初めてだ。
先生の希望でフランクフルトからカッセルまでは特急の一等車に乗ることになった。いつも一等だそうだ。
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早速ユーレイルパスを使い、課金しつつ割引で予約購入。
少々ユーレイルについて。
ユーレイルパスでは、条件が付いたり課金が必要で予約方法も国によって異なるのだが、基本的にDB(ドイチェバーン、日本でいうJR)の列車は乗り放題である。たしか、ユーレイルのアプリはダウンロードして使い、DBのアプリも別でダウンロードし予約はそちら(各社のサイト)でおこなった。
オンライン予約の際は、青春18というよりもクーポンみたいな使い方だ。
ユーレイルのアプリの方では、有効日数がスタンプラリーのように表示されており失効した分は暗くなる。あとはカードのように自分の番号などが書かれている。カウンターで予約する時はこちらも使う。
詳しいユーレイルパスの国別の使い方や注意も記事にまとめようかと思うが、手間なので需要があれば…にする。
ユーレイルも日数など複数種類がある。私が買ったのは二等15日間パスだ。期間内に15日間を使うというルールだ。隔日でも期間内であれば良い。使うと決めた日は乗車券が無料になるが、一日分減ってしまうから、日割り計算でユーレイルが高くなるようなあまり乗らない日は使わないほうがいい。
ドイツの場合は二等なら指定席料も無料だったが、他では乗車券扱いで特急券や指定料が別途必要な場合もある。また、DBは予約していないと乗れない場合が多いので注意されたし…。ここはユーレイルと各社の説明をよく読み込むことだ。EUなら全部無料という夢のようなパスではないが、少なくともドイツでは本当にお得で、移動が圧倒的に楽になるので、数日滞在でも短いパスを計算して購入してみることを提案する。
私は大手有名ブランドのクレジットカードを持っていたが、DBの予約サイトで使えなかった。外国のカードはブロックされる場合もあるので、世界的に有名なブランドでも注意が必要だ。私は予備のカードを使った。
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初めてのDB(ドイチェバーン、日本でいうJR)で移動することになった。
DBの列車は日本の電車より背が高くて、幼少期に夢中だった機関車トーマスに出てくるディーゼルのような、圧のある風貌である。スピードも雰囲気も新幹線と特急の間のような感じだ。
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一等車はグリーン車とはまた違う空気自体が贅沢な空間で、窓も広くマッサージチェアみたいな座席で大変心地よかった。先生は巨大なスーツケースを持っていて、段差のある車体にホームから乗せるだけでも一苦労だったのだが、客の紳士が華麗に対応してくれた。
先生と一緒でなければ、貧乏旅で一等なんてわざわざ課金してまで乗ろうと思わないのでとても良い経験だった。
フランクフルトからカッセルは3時間だっただろうか、近くも遠くもない。
M先生は私以上にクマができてげっっそりとした顔をしていた。飛行機の中でエクセルで資料を作成していたらしい。(具体的に聞いたところかなり大事なやつだ)一睡もしていないそうだ。
恐縮ながら、おそろいだな〜などと思った(レポートギリギリ提出と国家レベルの経済研究を一緒にするな)。だが会話がなくなってきて先生のご体調がおかしいなと気が付き始めた。
なんなら普通に咳き込み始めたし顔が赤い。
「…先生、風邪ですか?」
実は2週間ほど睡眠不足が続いていて、出国までは平気だったのだが
飛行機を降りてからドッと来たらしい。
カッセルの駅の側のホテルに到着した。(先生はここのリピーター)
チェックインは何とか済ませ、部屋に入ったが酷く咳き込んでいる。(2023年はまだまだコロナ禍だったので私も先生もマスクは当然のように着用している。しかもドイツでは指定のマスクを公共の場で着用しなければならなかった。)
明らかにご体調が悪そうなのですぐにシャワーに入って寝た。
何やら初っ端大変なことが始まりそうだ。
<次回予告>
先生、大丈夫じゃない!ドイツの田舎町で市販薬を探すの巻