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メメント・モリ〜【死体】になった話①〜
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『どっきーくんと実はやりたい事があって一緒に死体になろ!!!!』
全てはここから始まった。
これは、東京のSMバーで働いている友達
(以後、仮称Aさん)に誘われて死体になりに行った話。
これから書く事は体験談であり、備忘録であり、日記である。
僕がやった事、思ったこと、感じたことを赤裸々に記録したノンフィクションであるとはじめに断っておこう。
2024年2月14日 バレンタインデー
僕はAさんの
「リプくれたら一緒に何したいか答えるよ」
というポストを見かけた。
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ここで本題に入る前にAさんについて少し詳しく話そう。
【Aさんについて】
Aさんとは僕が興味本位で行った東京のSMバーのイベントにて知り合った店員さんだ。
確か当時は漫画「よふかしのうた」に出てくる
七草ナズナのコスプレをしていたと思う。
あれ?違ったっけ?
あんまり覚えていないや。
綺麗な人ってあんまり直視するの躊躇われるよね。
僕は陰気な人間なので。
その時はちょっとお話をした程度だったが、
他の色々なイベントで会ったりしているうち
一緒にデパートメントHに行ったり、
バンジージャンプをしたりする仲になった。
どういう事?と思うかもしれないが、割とそんな感じなので仕方ない。
【死ぬに至った経緯】
本題に戻ろう。
僕は今回も何か面白い事を企んでくれそうなAさんに「なんでもやりましょう!」とリプを送った。
すると返ってきた返信が冒頭の
「一緒に死体になろ!!!」だった。
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???
僕の頭の中はハテナに埋め尽くされていた。
死体になる?
殺されるの?僕
あ、でも一緒にって書いてあるな…
無理心中ってコト?
まぁでもなんであれ面白そうだな...。
人生で1回くらいは「死体」なってみたいよな...。
やるしか無いな...。
色んな考えが頭を巡っている中DMにURLが送られて来た。
【逆転変身シタイラボ】
さようなら、この世
「死にたい」 「人生を見つめ直したい」 そう思った時に【死】と【死体】の 疑似体験ができる場所、 それがシタイラボです。 誰にでも必ず訪れる死 命の重さが曖昧な生き辛いこの時代で、 死生観を問う新しい体験を提供します。
へぇ〜!面白そうだ!
とても興味を惹かれた僕は二つ返事でOKした。
予約のページにて弔われ方のシチュエーションに
入棺のプランと別に現場検証プランがあったのを見つけた。
どうもよく刑事ドラマで見かける血塗れの死体に人型に紐で型どってナンバーをつけていくやつを体験出来るらしい。
傷跡を特殊メイクして貰える上でオプションで大量血糊が選択できた。
や、やりてぇ〜!!!
(入棺プランとかも色々あって面白かったけど僕はこの時本当に現場検証プランに惹かれてほぼ即決してた。棺はそのうちいつか入るんだから派手に血を流して死にたいよね。)
そして一緒に死ぬAさんも現場検証プランにするらしく、誘って貰った側なので先にAさんの死に方の意向を伺った。
Aさん『ナイフで刺されて死ぬよ!』
いや、そうだよね〜!
僕も刺されてぇ〜と思った!
でもせっかくなら被りたくねぇ〜!
そう思った僕は考えを巡らせた。
【死に方】
銃殺は血が派手でいいかもしれないけど
日本で銃かぁ〜とか。
絞殺は身近な道具だし有り得そうだけど
血糊使えないなぁ〜とか。
撲殺は痛そうだし程々に綺麗に死にたいよなぁ〜
とか。
落下死…多分僕、自死はしないよなぁ〜とか。
薬殺は現代社会でほぼ無いので
シチュエーション考えづらいなぁ〜とか。
なんか、途中「うたたP」の
「こちら、幸福安心委員会です。」
を思い出してたら何かダークな気持ちになってどんどん難しくなってきた。
そんな時に気分転換に見ていたのが
「バカとテストと召喚獣」というアニメだった。
そこで僕はあるキャラクターからインスピレーションを貰った。
それは「ムッツリーニ(寡黙なる性職者)」こと
「土屋康太」である。
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彼は作中、女の子の下着をみては興奮から鼻血を出しては生死の縁をさ迷っている。
僕はピンと来た。
そうだ!
そもそも死ぬのが非現実的なんだから
死に方を選べる今、出来るだけポップに、
コミカルに死んでやろう!
そこで僕は大量の鼻血を出して失血死する事にした。
死に方が定まったのでこれからはその死に至るまで過程を考えていく。
鼻血が出るためにはどうしたらいいか。
選択肢として
バレンタインデーがあったこともあり、
「貰った大量のチョコレート食べすぎて鼻血止まらなくて死亡」か、
「最高のエロ漫画に出会ってあまりのエロさに興奮と鼻血が止まらなくて死亡」
の2択まで絞った。
これはまぁまぁ悩んだが、陰気な僕が大量のチョコレートなど貰えるはずないと言うのと、どうせならテクノブレイクみたいな死因の方が童貞臭くていいなと思ったので今回は後者にした。
僕はその日から早速『最高のエロ本』を探し求めて電子の海へ繰り出した。
【エロ本】
インターネットの大海を漂流し、
エロ本をKindleで読み漁り、
FANBOX、Fantia、Patreonのプランに入り、
バックナンバーに金銭を支払い、
FANZAとめちゃコミに課金した。
総額3万弱。
捜索は困難を極めた。
その結果行き着いたのが石見やそや先生の
「死にたGIRL」だ。
あらすじとしては屋上で自殺しようとしている女の子を助けようとしたら、なんやかんや露出セックスに目覚めたというもの。
とてもえっちで面白いのでぜひ読んで見てほしい。
死と隣り合わせなのにとてもポップでコミカルなエロ漫画だ。
ドンピシャだった。
正に求めていた物だった。
僕はすぐ現物の雑誌を探した。
Amazonの奥地にて、ついに見つけた。
コミックXEROSのバックナンバー、#101 である。
2500円ですぐに購入した。
僕はこの時、人生で初めてエロ本の雑誌を購入した。
次に死装束である。
【死装束】
前述した鼻血を出すに至ったモデル、
「ムッツリーニ」は変態紳士である。
また、僕は「シュタインズ・ゲート」も好きであり、HENTAI紳士という言葉が結構好きだった。(ダル...オカリン...クリスティーナ早くタイムマシン作ってね。SERNに負けるな)
と、言う訳で
出来るだけ紳士っぽく真面目っぽい感じの服装にしよう!と思った。
紳士がエロ本見て死んでたら面白いだろ。
という考えである。
部屋にある服を漁り、黒のシャツに赤い血が映えるよう白いベスト、モノクロのチェックパンツに黒縁メガネをかける事にした。
さて、準備は万端。
予約した日を待つのみとなった。
予約日前日。
予約の時間が早いため前乗りで大阪へ移動していた。
【前乗り大阪】
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この日は昼から別の友人と大阪を街ブラして解散、15時からAさんと合流、コンラッド大阪へアフタヌーンティーに来ていた。
お茶と食事に舌鼓を打ちつつどう死ぬかを話し合っていた。まるで最後の晩餐だった。
夕方だったけど。
その後は西成に行った。
さっきまで40階のラウンジで豪勢な食事を楽しんでいたのに西成のあの下町感ある独特な雰囲気に飛び込む。このギャップがとても楽しかった。
お酒を飲んだり。ホルモンを食べたり。
串カツたべたり。マムシドリンクを自販機で買ったり。スーパー玉出を物色したり。
喧嘩を警察が仲裁してるのを眺めたり。
ワニワニパニックをしたりして過ごした。
とても楽しかった。
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あと、
大阪ではチャリが止まらない。
このNOTEでこれだけは覚えて帰って欲しい。
さて、西成を一通り物色し終わったあとは堂山町のバーに行った。
そこで飲んでいるとAさんが
「明日好きな人の家に行く途中に嫉妬したお客さんに殺されたいんだ」
と教えてくれた。
前述した通りAさんはバーの店員さんなのだが、今回
「尽くすタイプの彼女として素っ気ない彼氏の家に彼氏に言われた買い物を済ませて向かう途中、嫉妬したお客さんにナイフで刺されて健気に死にたい。それを殺された時に開かれたままのスマホのトーク履歴で表現したい。」
との事だった。
そこで僕は自分のスマホを使いトーク履歴を作ることを提案した。
端的に言うと彼氏役に立候補したのである。
しかし、これがなかなか難しく、素っ気ない彼氏が返しそうな返信が出てこないのだ。
四苦八苦しながどうにかトーク履歴を作り上げた。苦労したものの結構楽しかった。
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「今までありがと」を送信する前に死ぬシチュで行くとの事。健気だね。
あと、Aさんは美人なのだが、そのAさんのトークで僕の名前が一時的とは言えど『好きピ♡』になっていて不覚にもドキッとしてしまった。
ふふ、やばいね。
【命日】
まぁ、そんなこんなで翌日。
僕達は指定された建物を訪れた。
訪れたもののちょっと早く着いてしまい、近所の公園で桜を見ながら2人でブランコを漕いでいた。
『これ、死ぬ前最後に見る桜ですね。』
『めっちゃ素敵な青空ですね。』
みたいなことを迫り来る死の恐怖と溢れんばかり好奇心を押さえつけながら駄弁っていた。
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僕の頭の中では「キタニタツヤ」の
「素敵なしゅうまつを!」がずっと流れ続けていた。
死ぬってなんだろう。
生きるってなんだろう。
僕は今、どんな気持ちなんだろう。
どうせ死ぬなら素敵な死に方をしたいな。
色んな考えが頭をよぎっていた。
そうこうしてると予定時刻の10分前。
僕達は事前に案内を貰ったさっきの建物に再び向かった。
インターホンを押し、合言葉を言う。
中から刑事ドラマ出よく見る鑑識さんみたいなカッコしたお姉さんが出迎えてくれた。
中に通されると早速カウンセリングが始まった。今回先に死を体験するのはAさんだったのでAさんから死に方、シチュエーションの聞き取りがあった。
そこで昨日バーで聞いた内容を一通り聞いた鑑識姿のお姉さんは
「じゃあ、今回どっきーさんは
犯人役になって貰いましょうか!」
と、
え、僕が?
殺すの?
昨日まで「好きピ♡」だったのに?
でも面白そうだったので、これもまた二つ返事でOKした。
まぁ、人殺す機会なんてそうそうないですからね。
たまにはそういうことがあってもね。
いいと思うんですよ。えぇ。
カウンセリングが一通り終わり早速Aさんご所望の死に方により近付けるため、Aさんの腹部と首筋に傷跡の特殊メイクが施されていった。
なんでもゼラチンを使って擬似的な皮膚を作り上げそれを切り裂くことで傷跡に見せるんだとか。
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その工程を見ているととても興味深く面白かった。
しかし目の前で仲がいい人が死んでいく様を見せられて『作り物の死』と分かっているのに見てて心がざわついたし、えもいわれぬ気持ちになった。
特殊メイクのためリクライニングの椅子で力なく横たわっているのがよりリアリティを増していた。
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昨日あれだけ楽しく遊んでいた人が、あまりにもリアルに死んでいく。
みるみる致命傷になっていく。
一通りメイクと色付けが終わるとAさんは床に横たわって沢山の血をかけられていた。
あぁ、これは助からない。
作り物ということは百も承知である。
が、とてもモヤモヤする。
人の死とはこれ程までに自分の心を揺さぶるものか。
でもそれがどこか扇情的で魅入ってしまう。
殺人鬼もこんな感情がどこかにあるのかもしれないな。
と、そんなことを考えていた。
今回ストーカーである「犯人(僕)」は殺すに至るほど、Aさんの事を好きで憎らしくて愛おしくて愛らしい、そんな複雑でごちゃごちゃした感情を抱いてたんだと思う。
その状態になった経緯も昨日のバーで知っているし、事情も第三者視点から全て知った上で「お前が犯人(役)だ」と言われると悲しくて切なくてやりきれなくて。
Aさんはいつも通り彼氏の家に行って、いつも通り楽しい日を過ごしてたはず。
そんないつも通りの素敵な日々を僕が壊したのだ。
そんなことを考えていた僕に
鑑識のお姉さんが血の着いたナイフを僕に手渡してきた。
「あなたはこれでAさんを殺したんですよ」
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ナイフを持っている手が震えていた。
着けていた白いゴム手袋に赤い血がとても映えていた。刃先が赤黒く光っている。
そのまま撮影があった。
見下ろす先には血塗れのAさん。
手元には血塗れのナイフ。
犯人には自首して欲しいとAさんたっての希望でスマホをもって電話をかける所も撮影した。
その時の僕はどんな顔をしていたのか。
悲しんでいたのか。
それとも、笑っていたのか。
それはまだ写真が届いていない今、分からない。
写真が届いた時、僕が書く気になったら書くかもしれない。
そうしてAさんの撮影が終わってビニールシートが被せられた。
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10分間、電気も消され鑑識のお姉さん達も退席し薄暗い室内に僕とAさんの2人きりになった。
なんか僕のごちゃごちゃした気持ちを見透かされないように明るく話していた気がする。
僕「いやぁ〜Aさん、死んじゃいましたね〜」
A「殺されちゃった〜痛いよ〜助けて〜」
ポップに喋っている。
だいぶフレッシュな死体だ。
僕「なんか悲しくなってきちゃったな…」
人の死を目の当たりにしてポロッとこぼれた本音だった。
するとAさんがブルーシートの裏から
A『じゃあ、
なんで殺したんですか?』
と、一言。
ドキッとした。
なんで殺したの?
殺した相手が問いかけてきた。
なんか一気に怖くなった。
ブルーシートをめくるのを躊躇うくらいには。
手もとにはナイフはない。
血塗れの手袋もない。
犯人の僕はもう居ない。
僕はそっとブルーシートをめくった。
死んでいるAさんを眺める。
Aさんがこっちを見た。
目が合う。
結構怖かった。
なんかその恐怖を悟られるのが嫌でポップで大袈裟なリアクションをして見せた気がする。
僕は犯人にのめり込んでいたのかも知れない。
いつの間にか10分間経ったようで鑑識のお姉さんが現場検証の札やロープをもって検証をしながらその風景を写真に収めていた。
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一通り終わるとAさんは特殊メイクを取りシャワールームへ血糊を流しに行った。
僕もトイレに立ったが帰ってきたとき、部屋の血糊は全くなくさっきまで人が死んでいたとは思えないぐらい元通りになっていた。
部屋で1人残された僕は150Pの
「完全犯罪ラブレター」をイヤホンで聴いていた。僕が昔よく聞いていた曲だ。
現状に合致する所がちらほらあって聞き入っていた。
そうしているとAさんも戻ってきた。
戻ってきたAさんはいつも通りのAさんだった。
僕はそれを見て心底ほっとしたのをおぼえている。
人って殺さない方がいいと思った。
みんなも気をつけようね。
人殺しってオススメしないよ。
けどこんな経験中々ないからね。
みんなも機会があったら今回みたいに合法的に人、殺して欲しいな。
後でシタイラボの人に聞いたけど過去には複数人でバトルロワイヤル的に殺しあって死ぬシチュをやった人も居るんだとか。
面白そうだよね。
今回はこんな所で。
次回、死体になった話②では僕の死に様を垂れ流すよ。