ピカレスク~ケントとフウマ~②
【共存】
あの日から俺たちは行動を共にした。
フウマはまだこの街にきて間もない様子だった。
こんな世界が存在してることを未だ受け入れられないでいるようだ。
その様子からして、余程裕福で幸せな環境で生きていたんだろうと想像がつく。
それはフウマの行動にも反映されていた。
汚水やゴミで汚れた砂利道を意味もないのにつま先立ちで歩いたり
蜘蛛の巣や埃にまみれた場所へは近づかない
道端に落ちていた食べかけのリンゴや腐りかけのパンなどは絶対食べたがらなかった。
今日も探索して入手した食料をフウマは拒んだ。
「そんなのいらない、ふかふかのパンが食べたい…あったかいミルクが飲みたいよぉ…」
「いい加減現実を見ろ…ここには温かいスープも甘いお菓子も、清潔な衣類も綺麗な水さえないんだ、これくらい食えるようにならなきゃ生きていけないことを理解しろ」
最初こそ、抵抗して意地でも拒否する姿勢を突き通していたフウマも、三日目にもなると飢えと渇きにたえられなくなったんだろう。
ゴミ箱から入手したパサパサに乾いた食パンと、飲みかけて握りつぶされた紙パックのジュースに
意を決し口をつけた。
「口の中、パサパサ…ジュースもぬるい…まずいよぉ…うぇ」
目に涙をためながらも、食欲にはたえられなかったのか、文句をいいながらも胃の中に食べ物をガツガツ送り込む。
今までの暮らしのことを考えたらすぐに慣れるなんてできるわけがない。
だが、それを待ってくれるような優しい時間が流れている場所ではないことを、俺は自身の身をもって知っている。
一所懸命にパンに食らいついているフウマを横目に、ケントはこれからのことをぼんやり考えていた。
このままではフウマは確実に生きてはいけない。
自分が修得してきたここでの生きる術を、コイツにも教えなくては…。