ピカレスク~ケントとフウマ~③

【指導】

最初に教えたのは飲食物や衣類の調達方法と、寝床の探し方だった。
衣食住はいつの時代でもかかせない最低限のもの。
食べ物は廃墟の中や、道端に落ちているもの、ゴミ箱の中、人間だったものの所持品などから入手した。
衣類も同様だが、綺麗すぎるものはかえって身の危険を増幅させるため、この背景に馴染むくらい汚ならしい地味なものを選ぶよう教えた。

寝床は子供ながらの体格を活かした、大人は近づけない場所というものがあることを説明し、実際見本になるような場所を数回案内し、探索のコツも叩き込んだ。

フウマは最初、嫌悪感を顔全面にだしつつも、しぶしぶといった態度ではあるが言われた通りやりとげようとしていた。

毎日ここで過ごしていれば、どんなやつでもここでは常識や法律が通用しないことは嫌でもわかる。

フウマのような子供でさえ、それを理解しはじめたようだ。
はじめは本人の意思に反して生命力に引きずられるように探索をしていたが、いまとなっては自ら進んで探索するようになり、一つ一つの動作をとっても無駄のない動きになっていた。

無駄は体力と時間を削るだけ。
探索時に限らず、逃走時や休息の時間でさえだ。

それも体にしみこませるように教えこんだ。

ただ、もともとセンスがあったのか教え方がよかったのか、フウマは予想以上にのみ込みが早く
食料や衣類の調達はもちろんのこと、
一度探索した場所であれば、自身の体格を利用した逃走経路や隠れ場などを把握し、
襲われ追跡されたとしてもその範囲に入った途端、またたくまに敵を巻くことができるまでになった。

ケント11歳、フウマ8歳。

二人の間には少しずつだが師弟関係のような絆が芽生えはじめた。

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