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街の灯                                 監督、脚本、制作、主演 チャーリー・チャップリン


今まで1500本程、映画を観てきたが2回以上観たのは40本位、3回以上観たのは20本位、その中の1作品

100年近く前の作品で、モノクロでしかもサイレント(無声)映画

それでも、時代を超えて広い世代の心の奥まで響く映画。


この映画の制作された1930年初頭は、映画にとって大変革期であった。
サイレント映画からトーキー映画への移行。
この変化に適応できずに消えていった映画人は少なくない。
チャップリンは、アイデンティティのパントマイムだけではなく、社会的強者と社会的弱者のそれぞれの立場からの視点で、人間の尊厳とあらゆる種類の愛をテーマに映画創作するようになっていった。そこが説教臭いという評論家も多いが、それこそが世界中で長い年月を経ても、幅広い世代から愛され続ける理由ではないか。

好きなシーンはふたつ
チャップリンが街角で花売りのヴァージニア・チェリルと出会うシーン
彼女に惹かれて、差し出された花一輪を買うことにしたチャップリン
その動作で盲目であることに気づく。花を手探りで彼の胸元(フラワーホール)に刺してくれた彼女に、なけなしのお金を渡すチャップリン
(この一輪の花がラストの伏線となる。)
娘がお釣りを渡そうとしたとき、目の前のタクシーが通りすがりの紳士を乗せて立ち去ってしまい、花を買ってくれたのはお金持ちの紳士と勘違いしてしまう。それを察知したチャップリンは、娘に気づかれないように、忍び足でその場を去るシーン(この3分のシーンの為に342回NGを出し、1年間の期間を要した)

有名なラストの再開シーン
チャップリンのおかげで目の手術が成功し、花屋を営むヴァージニア・チェリルの前に、服役を終えた浮浪者然としたチャップリンが偶然に店の前を通り過ぎる。
戸惑い遠慮するチャップリンに、花一輪と小銭を恵もうとして、手を握るヴァージニア・チェリル。盲目だった娘は目の前のみすぼらしいチャップリンがあの親切な紳士だとわかる。

         ヴァージニア「あなたでしたの?」

       チャップリン「見えるようになったんだね」

片手で握っていたチャップリンの手を両手で握って、自分の胸元に引き寄せるヴージニア

花を握りながら、指の爪を噛み、無垢に微笑むチャップリン



無償で眼の手術代をプレゼントする金持ちの紳士(?)と盲目の花売りの娘
という関係が、服役明けの浮浪者と花屋の経営者という立場での再会。
普通であれば人生の残酷な一面を垣間見るシーンではあるが、チャップリンの演出により、映画史上最も美しいラストシーンに。


監督のスタンリー・キューブリックとフェディリコ・フェリーニはこの映画を生涯ベスト10の1本に挙げている。


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