一瞬と一生
私たちの人生は何十年と続いていく。
しかし、私たちが生きているのは、今この一瞬である。
一本の長い道が一つ存在しているように見えるのが人生であるが、
よく目を凝らすと、その道は一瞬のフィルムの無数の積み重なりなのである。
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住宅は、これから長く住んでいくものであるから
長期的思考で、つまり人生という軸において構想を始めることが大事である、
とは、「住宅のデザイン」にて前述した通りであるが、
今という一瞬に限りなく集中して作られた住宅も、この世には存在している。
建築家・伊東豊雄さんの設計した「ホワイトU」という住宅をご存知だろうか。
今という一瞬に全ての建築的操作を集中し、その家族の精神的な部分に限りなく寄り添った、集中濃度が非常に高い魂の住宅であったが、
時が流れ、その時期を超えた時、その家族には必要が無くなったホワイトUは、その短い寿命を終えたのだ。
住宅を含めて、建築とは人から愛されて永く残り続けていく事が良いとされている。
それは人の人生にも言えることかもしれない。
しかし、この人生が、一瞬の連続だとしたら、
その一瞬のために建てられる住宅も存在する意味みたいなものは成立するし、
その短い期間のために住宅に投資することも人によっては非常に大きな意義を持つこともある。
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家を建てることは、人生の最大決断であり、その地に一生暮らすことになり、骨を埋め、一生をかけて借金を返していく
そんなような思いが多数派だと思われるが、
はたして本当にそうなのだろうか。
そういう人も、そうじゃない人もいるのが事実なのであろうが、そして私も前者の方に該当する資本力であるのが現実だが、
一瞬のために家を建てる、
一瞬のために旅に出る、
一瞬のためにやってみるということも
人生の楽しみなのではないか。
重い十字架を背中に担ぎ込む生活が、
家を建ててから始まるのではなく、
もっとポジティブに捉えられないだろうか。
自分の行なっているビジネスにもっと真剣に向き合い、
その利益をより多く生み出していくことに主体的に臨めるのであれば
家を建てることの支出も相対的に人生最大の買い物にならない状況を生み出せるのではないか。
はるかに重い十字架は、長期旅行のボストンバッグくらいにまでその比重を減らすことはできるのではないか。
その買い物で一生をかけて返済していくという覚悟をもって勤勉に生きていかなければならない
という捉え方ではなく
その買い物で人生を豊かにし、その先の未来においてさらに新たな選択が可能になるように、今の仕事にももっと積極的に臨んでいく
未来においてのリスクはそれは沢山存在しているし、
事故や倒産や災害や、いろんなものが待ち受けているのかもしれない。
しかし、どんな逆境に追いやられようとも、
自分が人生に主体的に臨み道を切り拓いていく思いがあれば、きっとポジティブに乗り越えられていけるような気がする。
一瞬の瞬間を切り取るフィルム写真は
そこに映る一瞬の風景を鮮やかに切り取る
その風景がネガティブな景色であればいい写真は撮れないのだ
人生においても、一瞬の瞬間を輝かせるために行動し
そしてさらに豊かな一瞬の風景が描けるように
今を頑張りたいと、そう思うのである。