空っぽな作文
原稿用紙に詰めたい言葉は溢れるほどあった。
ペン先は、饒舌に語る。
とりとめのない、無駄かもしれない文を綴る。
日頃ぼおっと考えてること、書いてもいいんだ。
熱を持って取り掛かる。
最初は。
自分の考えをさんざん書いて、
あとは話の中央に向かっていく。
につれてペンは徐々に呼吸を失う。
一度ぱたりと置いてしまえば
しばらくは動けなくなってしまう。
前に進めなくなった。
そう。
作文には体験を書かなくてはいけなかった。
具体的に、何を以て
その考えに辿り着いたのか、
書かなくてはならなかった。
でも体験がなかった。
ならば、この考えはどこからきたのだろう。
不思議に思う。
大抵の場合出自がはっきりしないので、
記憶にある適当な体験から無理に結び付ける。
半分くらい嘘。
何の感銘も受けてない出来事を
うすく伸ばしてさも素晴らしかったかのように。
文章力は悪くないはずなのに、
自分なりに労力と時間をかけて書いたのに。
作文で一度も賞を取ったことがないのはきっと、そのうすさが見透かされているからなんだろう。
自分で体感したことでなければ、
それを真実として書いてはいけないのだろうか。
机上の空論と笑うだろうか。
そりゃあそうか。
納得も理解もできる。
あくまで客観的にわかりやすく書かなくては。
考えには根拠があるとされているのだから。
私は合理的に文章が書けない。
深く実体験や実世界に結びついた
文章が書けない。
文章を書くのは好きだけど
作文は嫌いだ。
言葉は好きだけど
得意じゃない。
言葉を、武器として使えないのだ。
いみわかんないなんて笑って
馬鹿にしてたあの詩を
もう馬鹿にできないだろうな。
幼い私よ。今の私は本当に
「意味」がわからなくなっちゃったんだ。
空っぽな作文だよ。
空っぽな