40の夜
落書の稟議書と外ばかり見てる俺
超高層ビルの上の空 届かない予算見てる
やりばのない気持ちの扉やぶりたい
支店の裏 煙草をふかして見つかれば逃げ場もない
しゃがんでかたまり 背を向むけながら
心のひとつも解りあえない本部をにらむ
そして渉外達は今夜 推進計画をたてる
とにかくもう 銀行や家には帰りたくない
自分の存在が何なのかさえ 解らず震えている
40の夜
銀行のカブで走り出す 行き先は預かり資産
暗い夜の帳の中へ
予算に縛られたくないと 逃げ込んだこの夜に
自由になれた気がした 40の夜
冷たい風 冷えた体 人恋しくて
悪夢を見てる渉外行員の机の横を サヨナラつぶやき 走り抜ける
闇の中 ぽつんと光る 自動販売機
140円で買えるぬくもり 熱い缶コーヒー握りしめ
月末の結末も解らないけど
渉外行員と俺は予算達成さえ ずっと夢に見てる
役員たちは心を捨てろ捨てろと言うが 俺はいやなのさ
退屈な仕事が俺達の全てならば
なんてちっぽけで なんて意味のない なんて無力な
40の夜
銀行のカブで走り出す 行く先は貸出金増強
暗い夜の帳の中へ
覚えたての煙草をふかし 星空を見つめながら
自由を求め続けた 40の夜
銀行のカブで走り出す 行く先は金利交渉
暗い夜の帳の中へ
誰にも縛られたくないと 逃げ込んだこの夜に
自由になれた気がした 15の夜