大千穐楽に行けなくなった話

※非常に自分勝手で気分の悪い話です※
記事タイトルと上記注意書きで何となく察する方は閉じてください
(とはいえ、こんな記事を目にする人はいないと思いますが)

2022年夏
私はとある舞台の作品を観劇する日々を送っていました

紆余曲折ありながらも東京公演は無事に完走し、私も観劇の完走を終えました
間に地方公演を挟み、そちらも無事の完走・観劇
東京公演はほぼ毎日の観劇、地方公演は全公演で、合計30公演ほどの観劇予定でした

さあ、いよいよ大千穐楽の地であるもう一つの地方公演を残すのみ
となった矢先に
新型コロナウイルス陽性判定を受け自宅隔離となりました

当然、大千穐楽は観劇出来ず

しかもその大千穐楽も紆余曲折あっての上演で、とても特別なものでした

どんな時でも健康第一で、観劇命で生きてきたものですから
この公演を観られなかったことは半ば死に値するものです

大袈裟だと笑う人の方が大多数でしょうが、それでも私にとって、この作品を観劇するということは生きることでした
少なくともこの2022年の夏は、私の命そのものでした

出来る限りの対策をして、ここまで感染せずに凌いできたのに
最後の最後に最悪のタイミングでコロナに襲われ
観劇出来なくなった自分の運命を殺したいほど呪っています

自分の対策がどこか甘かったのかもしれません
でもそれをすぐに思いつけないくらいには、普通の一般人が一人で出来る対策はしてきました

空席にしてしまったこと
紆余曲折の末、勇気のある英断をしたカンパニーに拍手を送れなかったこと
勝手にではありますが、ここまで共に走ってきた作品の最後を見届けることが出来なかったこと
この気持ちを言葉にすることが出来ません

そして、自分勝手極まりない、薄汚い心の中を曝け出して言うと
「私もこの手元のチケットで観劇したかった」
無念です
ただ、ただ、無念です

この夏、命を懸けて、この作品を見届けるためだけに生きてきたので
それすらも叶わなかった私にもはや生きている意味はあるのだろうか
これからも応援する意味はあるのだろうか
これはもう、これを機にやめなさい、という思し召しなんだろうか
私の続けてきた努力は、こんな目に遭うためのものだったのだろうか

このコロナというウイルスは、身体の不調は勿論ですが、心をも殺すものです
人ひとりの人生の貴重な時間をいとも簡単に奪っていく
残酷極まりないウイルスなのだと改めて痛感しました

そして「観劇する側」の人間は、たった一度の機会を失くすと
二度と取り戻すことは出来ないのです
ただただ、無念だった思いが残るのです
今までの公演の楽しかった思い出も「最後の最後に観劇出来なかった」という無念の思い出になってしまうのです

私はこの2022年の夏を記憶から消してしまいたい
全てを無かったことにしたい
これから今後一生、彼らを応援していく度に「私はコロナで大千穐楽に行けなかったのだ」という敗北者の無念を抱えていかなければならない
そんな思いを抱えて誰か何かを応援することなど出来るのでしょうか

私のような思いをしてきた人は数えきれないくらいいることでしょう
どうかそんな人が今後一人でも増えませんように
人生の時間を、命を、奪うようなウイルスが早く消えてなくなりますように
そう願うばかりです

あの作品に携わる方々にとっては、大勢のファンの中の名も知らない居ても居なくても変わらないような人間ですが、それでも覚悟を抱えて命を懸けて観劇してきた人間がどこかに居たことを書き記しておきたかったのです