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株主資本コストを下げるメリット&下げるにはどうすればよいか?(①) ー 株主資本コストを下げる意味


株主資本コスト

本年も残すところわずかですね。明日は四季報の新春号の発売です。四季報データは既に更新されていましたので、明日は日中の仕事の隙間時間と昼休み時間をちょこちょこ使って、各銘柄の確認をするとともに、最近、半導体関連銘柄も面白そうだなと関心をもって見ているので、このあたりも検討をすることを考えています。

さて、本題ですが、本日は株主資本コストについて書きたいと思います。株主資本コストという言葉は多くの上場企業で定着してきた言葉かと思います。先日の日経新聞でも次の記事がありました。

株主資本コストは会社から見たらコストですが、投資家から見た場合には株主が企業に投資することで期待する収益率のことを指します。出資額に対して期待するリターンですね。一般的には、「株主資本コスト=リスクフリーレート+ベータ値×リスクプレミアム」で算定することが多いです。多くの事業会社はこれで算定しているのだと思います。

各企業によって株主資本コストに違いがありますが、それはベータ値の違いによります。ベータ値は、市場全体の変動に対する個別株の変動の大きさを示します。詳しい説明は割愛しますが、要するに業績のブレの大きい企業のベータ値は、業績のブレの小さい企業よりも大きいというイメージをもって貰えればよいかと思います。
例えば、世の中が不景気でも鉄道に乗る人は変わらず、鉄道会社の業績は安定的ですが、一方、工作機械・半導体などは景気の変動を受けるので業績はブレます。株主資本コストはハイリスク・ハイリターンの考えに基づいており、工作機械・半導体事業に投資する場合、鉄道会社に投資する場合と比べて業績にブレがある分、株主は高いリターンを期待するということです。当然と言えば当然のことです。

株主資本コストを下げるメリット ー ROEとの関係

この株主資本コストですが、企業にとっては下げる努力が大事になります。何故ならば下げることが企業にはメリットがあるからです。ではそのメリットとは何でしょうか?

1つにはROEとの関係があります。

株主からの「ROEを向上させよ」という企業に対する要求は非常に強くなっていますが、ROEの目標値を何%に設定すればよいのかという場合の判断の基準になるのが株主資本コストです。

株主資本コストが9%である会社はROEは9%を上回ることが必要ですが、株主資本コストが7%であれば、ROE8%でもOKなのです。ROEを向上させるって結構大変です。だから、ROEを高める努力もさることながら(利益率の改善、資産の効率的活用)、株主資本コストを下げるということも大変重要になるのです。

株主資本コストを下げるメリット ー 株価との関係

もう1つには、理論株価(株式価値)との関係です。ROEと株主資本コストの関係は多くの企業でも理解されているところですが、理論株価(株式価値)との関係は結構盲点かも知れません。

株式価値を算定する手法の1つにDCF法があります。DCF法のやり方は、まず企業の将来フリーキャッシュフローをWACC(負債コストと株主資本コストの加重平均)で割引いて事業価値を算出します。そして、この事業価値にネットデットを足して、株式価値を算出します。
この株式価値を高めるには、事業価値を高める必要がありますが、そのためには、将来フリーキャッシュフローを高めるとともに、WACCを構成する株主資本コストを低くするのです。株主資本コストが低くなると、割引率が小さくなるということです。

これで算出された株式価値=理論株価は、その企業が本来あるべき株価です。理論株価が仮に1000円で、市場株価が800円という場合には、「今の株価は割安」ということで、株価が上昇する方向に向かいます。必ずしも実務では、単純にその通りになるというわけではないですが(株価が上昇するには色々の要因があるので)、基本的にはこのような考えになります。そういう点で、株主資本コストを下げることは、市場株価を高めることにつながります。

以上が株主資本コストを下げる大きなメリットかと思います。では、この株主資本コストをどうやって低くすればよいのでしょうか?これは次回、説明をしたいと思います。