「株主総会に興味を持ち真剣に賛否を決めて下さい」の文言、良いですね ー 池田泉州ホールディングスへの株主提案より
個人株主による株主提案
今年の企業各社の株主総会は株主提案が昨年以上に増えることが予想されますが、本日、たまたまある企業に対する興味深い株主提案が目にとまったので紹介いたします。
池田泉州ホールディングに対する株主提案です。大阪地盤の金融持株会社のようですね。この池田泉州が本日、次のとおりプレスリリースを公表しています。
https://www.senshuikeda-hd.co.jp/news/pdf/20240430_1.pdf
個人株主による提案のようで、提案内容を抜粋すると次のとおりです。
定款に「株主とのパートナー宣言を加えよ」ということのようです。あまり見慣れない内容かとは思いますが、文言を読む限りにおいては、私自身は特に違和感はありませんでした。「意見交換の場の一つを株主総会と定め、総会の形骸化を防ぎ活性化を計る」ということは、会社法上もあるべき姿かなとは思います。
では、提案した理由は何でしょうか?これについては次の記載があります。
この株主提案の内容の良し悪しについて、私はコメントは出来ませんが、1つ興味深いフレーズがあります。それは「全国の株主の皆さん!もっと株主総会に興味を持ち真剣に賛否を決めて下さい!」の表現です。株主提案の内容が良いか悪いかは別にして、この株主提案の理由としているところは、まさしくその通りかと思います。
個人株主の議決権は保有割合が小さくても大事です
投資先企業の企業価値向上を真剣に考え、株主総会の場で経営陣に質問することは株主の役目だと私は思います。勿論、個人株主も色々なタイプの方がいます。デイトレーダーなど短期での投資をしている方も入れば、中長期で保有する株主まで様々です。短期で投資している株主の方は別ですが、そうでない限りは、保有株数が少なくても株主としてしっかりと真剣に総会で賛否を判断することは大事だと思います。
では、どう判断すれば良いのでしょうか?
機関投資家の多くはROEが5%を切ると社長に反対をします。これが1つの目安になるとは思います。勿論、個人株主が必ずしも機関投資家と同一の視点で企業を見る必要はないと思います。機関投資家はアセットオーナーから資金の運用を任され、儲けをオーナーに配分するのが仕事ですので、ROEが低迷し株価がぱっとしない場合には、社長に反対するのも分かります。
けど、個人株主は自己資金で投資をしているのであり、投資のタイムホライズンは長いと思います。従い、必ずしも機関投資家と全く同じ議決権行使をする必要はないとは思いますが、機関投資家と同じ目線で企業を見ることは大事です。
ROEが低迷する状態が続くのであれば、①その原因が何であるのか ②いつ改善するのか ③そのための施策は何であり ④今の進捗はどうなのか、というようなことを総会の場で確認することは個人株主もしてよいのではないでしょうか?
企業は個人株主の合理的な意見は真摯に対応すると思います
というと「どうせ数百株しか持っていない個人の意見など経営陣は真面目に取り合わないだろう」と思う個人の方も多いと思います。けど、これは違います。多くの企業では、株主総会で個人株主からROEや先行きの見通しに対する厳しい意見が出た場合には、それを真摯に考えると思います。
逆に機関投資家の意見を「機関投資家は好き勝手言うよね」程度に軽く見ている経営陣の方が意外に多いかも知れません。私の想像ですが。機関投資家は名簿上の株主でないので、総会に出席することは通常はないので、総会で機関投資家が質問することはないこともその理由の一つです。
一方、個人株主は総会で質問をする訳であり、しかも、いわゆる素人ですので、素人の方から合理的な質問が出ると経営陣は総会後に真剣に考えると思います。勿論、全ての企業がそうだとは断言はできませんが。
いずれにせよ、今回の池田泉州の株主提案に書かれている「全国の株主の皆さん!もっと株主総会に興味を持ち真剣に賛否を決めて下さい!」という言葉は、多くの企業の個人株主の方に対するメッセージであるかなと私は思いました。