IHIが議決権行使助言会社ISS社のレポートに対して反論- これは参考になりますね。海外投資家に響くかも知れません
ISS社の反対推奨の理由
昨日、IHIが次のプレスリリース「ISS 社の議決権行使助言に対する当社の見解について」を公表しています。
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20240604520431/
内容としては、IHIが来る6月26日の株主総会で取締役選任議案としている取締役候補者の満岡次郎、井手博の2氏に対して議決権行使助言会社のISS社が反対推奨をしているところ、その推奨結果に対して反論をしているというものです。
ISS社は過去5年平均のROEが5%を下回り、かつ、直近の事業年度(今回で言えば2023年度)もROEが5%を下回る場合には、経営トップに反対推奨するとしています。IHIのプレスリリースによれば、過去5年平均のROEは4.14%で、直近は△16.9%となっています。ISS社の反対推奨基準に該当しますね。
IHIの反論は?
これに対して、IHIは次のとおり反論しています。
2023年度は一過性の要因があり低下したのであり、この一過性要因を考慮しなければ、ROEは15.2%ということですね。本来の力で判断すればISS社の基準に抵触しないという論法です。そして、稼ぐ力は着実に向上しているという安心材料までおまけとして追加しています。分かりやすい説明ですね。
海外機関投資家はどう判断するか?
私の予想ですがIHIの反論を支持する機関投資家も相当数あるのではないでしょうか。
海外の上場企業の決算資料を見ると、営業利益やEBITDAなどについて、一時的な特殊要因を除いてアピールしている企業がかなり多いです。海外はリストラや訴訟も多く、その分のコストが費用計上され、結果、利益が大きく減るので、これら特殊要因を除いた「正常な利益」を開示してアピールするというものです。日本でもIFRSを採用している企業はこの正常な営業利益をアピールする企業も増えています(そうしないと特別損失が営業利益の前段階で反映され営業利益が減るので)。けど欧米ほどではない気がします。
このISS社の賛否推奨レポートを参照するのは海外機関投資家です。つまり、海外の機関投資家であれば、今回のIHIのような開示も一般的な内容に映るかも知れません。「特殊要因を除く」という開示にあまり違和感を覚えないかも知れません。もっとも、彼らもアセットオーナーに説明する必要はあるのだと思いますので、どこまでIHIの反論を採用する機関投資家がいるかは分かりませんが。
結果はどうなるかは分かりませんが、いずれにせよこのような開示はチャレンジする価値は高いと思います。