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機関投資家の議決権行使基準 - 三井住友DSアセットマネジメント~ROEは8%必要


三井住友DSアセットマネジメントの議決権行使基準

今回は三井住友DSアセットマネジメントの議決権行使基準です。以下のとおり、三井住友DSを加えて今回で紹介する会社は8社目です。

◆ アセットマネジメントOne
◆ 野村アセットマネジメント
◆ 三井住友トラスト・アセットマネジメント
◆ 三菱UFJ信託銀行
◆ 日興アセットマネジメント
◆ 三菱UFJアセットマネジメント
◆ りそなアセットマネジメント
◆ 三井住友DSアセットマネジメント

24年1月4日改定の基準は以下のとおりです。
https://www.smd-am.co.jp/corporate/responsible_investment/voting/guideline/pdf/criteria_for_determining_the_exercise_of_voting_rights_20240104_jp.pdf

取締役選任基準

取締役の適格性に関する基準として、次の場合には在任期間3年以上の取締役選任に反対するとあります。

過去3年間のTSRが配当込みTOPIX未満、および業種平均対比で著しく劣位(下位5%未満)にある場合、もしくはROEが過去3年にわたり8%未満かつ国内上場企業中央値水準を一度も上回っていない場合

「適格性」という言葉が厳しい感じがしますね。反対=適格性がないということですが、文言でそう言われると厳しい印象を受けます。候補者は「俺って不適格者か・・」としょんぼりしてしまいます。

さて、ROE基準ですが8%になっています。多くの機関投資家は現状が5%未満の継続を反対基準にしていますが、高い基準となっていますね。

TSRとは Total Shareholder Returnです。これは株価騰落と配当金による株主総利回りです。株式投資により得られた収益(キャピタルゲインと配当)を投資額(株価)で割った比率で表されます。

分かりやすい例で示しますと、ある会社の株価が1年間で1,000円から1,200円に上昇し、1株あたり50円の配当金が支払われたとした場合、TSRは次のとおりです。TSR (%) = (1,200円 - 1,000円 + 50円) / 1,000円 = 25%

TSRを議決権行使基準に入れる機関投資家は最近少しずつ増えています。株主は金儲けのために株式投資をしているのだから、いくらROEが高くても、儲けが少ないのであれば役員の存在意味はないというのが理由です。

例外基準で救済される企業のROE基準は?

ROE8%未満等が続く場合の例外基準があり、以下のよう な合理的な理由がある場合、候補者の全部または一部に賛成することがあるとあります

  • 企業価値やROEの向上について資本コストや株価を意識した合理的な経営戦略等を示している

  • 企業単独の努力では回避し難い状況(自然災害等)等、特別に考慮すべき事情がある

  • 責任の所在明確化により経営陣の全部または一部が退任する等、経営体制が刷新されている

1つ目の「合理的な経営戦略等を示している」と言う点が気になりますね。

どういう場合にこれに該当するかは企業の開示情報であったり、企業との対話で三井住友DSは判断すると思うので明確な基準はないですが、私の実務感覚ではROEが5%未満が続くような企業はいくら経営戦略を示しても難しいかなという気がします。

8%の基準を設定している以上あくまでそれがベースになるのであって、それを若干下回る状況が続くような企業は、合理的な経営戦略等を示す場合には「仕方ないな。今回は大目に見てやるか」ということになるのだと思います。
3%も基準を下回るROEの企業が「今後頑張ります!」と意気込みを示したところで、肝心の数値を実績として伸ばしていかなと許してくれないし、またそんな企業を例扱いした場合には、機関投資家自身がアセットオーナーに対して説明できないと思います。

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