指名委員会で議論する重要なことは ー 機関投資家の関心事項は?
指名委員会の開催回数
日経新聞に指名委員会の開催数に大きな違いがある旨の記事がありました。
集計対象は指名委員会等設置会社です。つまり、会社法上、監査委員会、報酬委員会、指名委員会の設置と役割が規定されている会社です。なお、指名委員会等設置会社でない大多数の上場企業も指名委員会を設置していますが、これらの企業の指名委員会の役割は特に決められていません。
指名委員会の開催回数の違いは?
指名委員会等設置会社における指名委員会の法的な役割は、株主総会で審議する取締役選任議案の取締役候補者を決定することです。このため、年間を通じて常に候補者を議論するなどということは通常はなく、例えば監査委員会と比べると自ずと開催回数は少なくなります。けど、新聞報道によれば指名委員会をに10回以上開催している会社もあれば、1~3回しか開催していない会社もあるなど開催頻度に大きな開きがあるようですね。
では、どうしてこれだけの回数の違いが生じるのでしょうか?
それは取締役候補者の選定以外に色々な議題を審議しているのが理由ですが、その色々な議題の中でも社長の後継者計画に力を入れているのが理由の1つかなと思います。
「社長の後継者計画は取締役会で議論すればよいのでは?」と思われる方もいるかも知れません。けどそれば現実には難しいです。次の社長候補が誰であるかは極めてセンシティブな話ですので、大人数のいる取締役会で議論するのは適切ではないです。大人数の会議でした話は社内に漏れるのが常ですので、「次はXXさんが社長候補の1人らしいぞ」という話が社内で流れれば、その未来の社長候補をヨイショし始める人が増え、現状の組織の統制がとれなくなりますよね。
社長の後継者計画は投資家が重視しています
企業の事業運営に関する最終意思決定の責任者は社長であり、社長以外には存在しないと言わます。
従業員が100名の中小企業でも、数万人を超える企業においても同じです。この感覚は、大企業の本社部門で働く40代半ば~50代の幹部クラス(部長)の方であれば、「そうだよな」という感覚をお持ちになる方が大多数だと思います。社長と副社長の差は、役職のないヒラの取締役とヒラ社員の差より大きいと言われることもあります。
ということで、社長が誰であるかは企業にとって極めて重要であり、当然、機関投資家にとっても重大な関心事項なのです。社長が交代することで企業の姿勢、取り組みが大きく変わる会社もあります。だからこそ中長期で株式投資をしている投資家にとっては、今の企業の経営姿勢が今後も継続するのかどうか、次の社長候補はどのように育成・選定しているのか関心が高いのです。
最近は社長の後継者計画の開示を求める機関投資家も増えています。任期の決まっているサラリーマン社長の企業は、後継者計画についてざっくりレベルでも良いのでそろそろ開示を検討した方がよいかも知れません。