「誰もが物言う株主」となる時代は間もなく到来します
資本市場 誰もが物言う株主に
少し前の日経新聞に次の記事がありました。マネックスグループ会長の記事ですね。
個人を含め誰もがアクティビストになりうる時代になるという内容です。全くその通りかなと思います。最近、アクティビストの株主提案に対する賛成率も高まってきていますが、この背景には当然ですが、株主提案に賛同する一般株主の存在があります。自らは株主提案はしないが、アクティビストの主張や提案に賛同するということは、つまりこの株主の方々も、ある意味「物言う株主」と言えるのかも知れません。
機関投資家の物言う株主化
物言う株主の定義を「会社に対して株主提案をしたり書面でのオフィシャルな行動を行う株主」とした場合 一般の機関投資家が現状、こういう行動をすることはないと思います。
とは言え、企業とのIR対話においては、口頭では結構きつい質問・提案を一般の機関投資家もしているのが現状です。機関投資家としては、本当は企業に対しては色々と提案をしたいのです。また、近年、株主総会で経営トップに反対票を投じる機関投資家もかなり増えていますが、経営トップの取締役選任議案に反対するということは、見方を変えると、経営トップを不再任にする株主提案をしたい意思表示ともとれます。「反対の議決権行使=対象者は取締役として不適格」と見なしているから当然ですね。
けど、国内機関投資家のほとんどは、金融機関のグループ会社に所属するサラリーマンであり、特に大手の金融機関の子会社であることが多いため、株主提案等の一歩踏み込んだ行動はお作法に反するので出来ません。その代わりに経営トップに反対票を投じることにより、適切な能力を持つ経営トップを選任するという自発的な行動を会社に求めているわけです。
では、今後もこの状況が続くでしょうか?私は、将来的には機関投資家も株主提案等をする時代が到来するのだろうと思います。アセットマネジャーには顧客資産の最大化が求められています。企業の自発的な行動を期待しても限界がある場合もあります。現在の経営トップの後任者が株式市場の求める適格者でない場合です。
結果、アセットオーナーが機関投資家に「もっと企業に働きかけよ!」という動きが強まれば、その先にあるのは、機関投資家による株主提案などのアクションであるかと思います。機関投資家の物言う株主化の時代も近いのではないでしょうか。
個人株主の物言う株主化
以下は日本証券業界が公表している資料になりますが、個人株主の年齢層になります。
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/2022kozinkabunusidoukou.pdf
私はこの中で、20~40歳未満の母集団がポイントかなと思います。この世代は全体の29%になります。この世代は比較的年齢層が若く、コーポレートガバナンス・コードが制定された2015年以降のコーポレートガバナンス改革の動きも熟知しています。
50代後半以降の方にとって、アクティビストというと、昔は負のイメージがありました。スティ―ルパートナーズや村上ファンドは悪者であり日本の株式市場から排除すべきという扱いを当時は受けていました。1990年代後半に物言う株主という言葉が使われた頃は、物言う株主とはあらたな総会屋のようなとらえ方をされていたと思います。
50代後半の方には、アクティビストに対するそういうイメージが完全に払しょく出来ていない人も多いのだと思います。だから、自分がアクティビストのような行動をとることに躊躇するのです。
けど、20歳~40歳未満の世代の方にとってはこの意識はだいぶ薄まっているのではないでしょうか。そもそも総会屋などという存在する知らないのですから、アクティビストの言葉に負のイメージはないのだと思います。特にここ数年のアクティビストの行動の合理性は世の中に認められ、アクティビストも市民権を得つつあります。であれば、アクティビストの動きを見習い、個人株主としても企業に積極的に物申す株主も今後増えるはずです。
株主が物言うのは当然です
「物言う株主」というと、物言わぬ株主があるべき姿のようにも思ってしまう方もいると思います。けど、これは大きな間違いです。
会社法上、株主は会社の実質的所有者であり、本来は会社の経営に当たるべき立場にあるのです。けど、株式会社においては株主の数も多いので、株主が経営に当たる代わりに会社経営の専門家を取締役として選任して、その経営陣を通じて企業経営に参画するのです。ですから、自分の選任した取締役が不甲斐ない、業績や株価を上げることが出来ない場合、株主が行動して能力のない経営陣をクビにして、経営陣を交代させたいというのは至極当然な会社法の原則に則った行動です。
ここをしっかりと理解しておくのが大事です。物言う株主としての行動は、会社法で規定されている株主としての基本的な行動ということです。