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議決権行使助言会社グラスルイスの2024年の議決権行使助言方針


2024年の議決権行使助言方針

先日、国内の大手機関投資家の議決権行使基準を整理していたところグラスルイスの2024年の議決権行使助言方針(助言会社は企業の株式を保有しておらず、総会議案の賛否の推奨の助言をするだけです)が公表されていることに気づきました。次のとおりです。

https://www.glasslewis.com/wp-content/uploads/2024/01/2024-Japan-Benchmark-Policy-Guidelines-in-Japanese.pdf?hsCtaTracking=9a21ebe8-a4fa-4caf-bdb5-de4db05dc91e%7C5e7bce91-0659-405d-ad47-f8683d206af7

助言会社で高いシェアを持つのはISS社ですので、ついついグラスルイスは忘れてしまい・・・。あと、ISS社の助言方針に比べて、グラスルイスの文章は日本語が非常に読みにくく、さっと読んでも何を言っているか分からないことが個人的には多いので、読むのをやめてしまうことがあります。その場合、某シンクタントがポイントだけを整理したサマリーを読んですませています。

もっとも議決権行使助言会社の方針を読むのは海外機関投資家ですから、英語の文章がしっかりしていれば、日本文の上手い下手などどうでも良いのかも知れませんが。

今回の改定のポイントは、ジェンダーダイバーシティ、政策保有株式かなと思っており、この点は少し前にnoteに記事を書いております。以下です👇

気候変動対応関連の改定

その時に見落としていたのですが、1点、少しだけ気になる改定がありましたが、それが気候変動です。以下は助言方針からの抜粋になります。

日経 225 構成企業の中で、自社の事業に起因する気候変動リスクへの重大 なエクスポージャーを有する企業、及び温室効果ガス排出量や気候変動への影響、あるいはステーク ホルダーの関心が高く、財務上重大なリスクがあると考えられる企業に対して、グラス・ルイスは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った開示を企業が行っているかどうかを慎重に精査する。さらに、これらの企業が、気候関連問題に対する取締役会レベルの監督責任を明確に 定義した開示を行っているかについても、併せて精査する。これらの開示のいずれか(あるいは両方)が欠如しているか、著しく不足していると判断した場合、気候関連問題の監督を管轄している委員会の委員長または取締役会議長、あるいは、監督を管轄する委員会がない場合は、ガバナンス委員会の委員長に反対助言を行う場合がある。さらに、委員会の委員長が期差任期制により選任に挙がっていない場合、会社の規模や業種、ガバナンス全般などの他の 要因に基づいて、その責任があると思われる委員会の他のメンバーに対して当該基準での助言判断を 行う場合がある。 2023 年、この問題に関する助言方針は、最大かつ主要な温室効果ガス排出企業に適用していたが、 2024 年 2 月からは、企業の温室効果ガス排出が、財務上重大なリスクであるとサステナビリティ会計基準審議会(SASB)が判断した業種に属する日経平均株価指数構成企業、及び排出量や気候変動への 影響、あるいはステークホルダーの関心が高く、財務上重大なリスクがあると考えられる企業に対し て、この助言方針を適用する。

何とも読みにくい長い日本語ですね。1回読んだだけでは「???」という感じですが、要は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)など気候変動関連の開示がされていない場合や、著しく開示が不十分と判断される場合、責任があると思われる取締役の選任に対して反対投票を推奨するという方針にしているが、この対象企業を広げるということです。

対象になる日本企業は多いの?

この助言方針を読む読む限りでは、明確な対象企業数はないので、当社も「マズイ」と慌てる企業もあると思います。

けど、そんな心配は不要かと思います。ざっくりと言うと、他社と同じような横並びレベルでひとまずTCFDの開示をしていれば問題ないように思います。機関投資家と対話の経験が豊富な方であれば、グラスルイスがいきなり、気候変動関連で日本企業数百社に反対推奨するなどということはないという感覚を持つと思いますが、そういう感覚のない方は、慌てるかも知れませんね。
実際に、グラスルイスの方が本年1月のあるセミナーでも発言していましたが、該当企業は100社行くか行かないか程度で、TCFDのガバナンスの実効性に一定の記載があれば、著しく不十分にはならないというニュアンスでした。「当社は大丈夫か?」と細かいことがどうしても気になる企業のマネジメント層の方がいれば、グラスルイスに質問すれば良いでしょう。

グラスルイスの議決権行使助言方針をそのまま採用する海外機関投資家がどれだけいるのか良く分かりませんが、同社の2024年の方針も一応頭にはとどめておいた方がいですね。