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ISSが2024年の議決権行使ポリシー改定案を公表 - 経営トップの賛成率を高めるには?


前回、ISSが議決権行使ポリシー案を公表し、過去5年平均ROEが5%未満でFY2023も5%を下回る企業の経営トップの選任議案に反対推奨することを次のとおり紹介しました。

海外機関投資家の多くはISSの賛否推奨基準に従うことが多いので、外国人株主比率の高い企業は株主総会で経営トップの取締役選任議案への反対票が増えることになりますが、そういう可能性の高い企業は今後どうすれば良いかということを本日、簡単にお話をしたいと思います。

業績基準を採用しない海外機関投資家を判別する

海外機関投資家の中には、ISSの議決行使ポリシーに準拠しない投資家も一定数あります。つまり、自社独自の議決権行使基準を持つ投資家です。このような投資家は独自の基準で判断するので、まずは、その投資家が誰であるかをしっかりと選別して、その投資家が賛成してくれるように現状の課題と業績改善に向けた取り組みを英語で開示し、必要に応じて説明をすることが大事になると思います。海外IRをしっかりやっている会社であれば、海外投資家との説明も慣れているかと思います。

ただし、海外IRの場合は、決算等について簡単な資料を会社で準備して海外投資家からの質問に答えるというスタンスが多いように思いますので、やり方を変えて、短期の決算説明ではなく、中長期の業績、中計経営計画の進捗等を会社側から積極的に説明するというスタンスに変更する必要はあるかと思います。

国内機関投資家をがっちりと確保する

そうは言っても外国人とは言葉の問題もあるので、海外IRに慣れていない企業は、海外機関投資家への説明は相当大変というのも現実にはあります。オンライン会議で通訳を入れる場合も多いですが、通訳を入れるとスムーズなやりとりには限界があります。また、労力をかけて頑張ったところで、どこまで結果にプラスになるか何とも言えないところもあります。

では、どうすればよいかというと、私はやはり国内機関投家をがっちりと確保することだ大事だと思います。
国内機関投資家はISSの基準は採用していませんが、ISSで反対推奨されるような業績低迷企業の多くは、国内機関投資家の議決権行使基準でも抵触しているケースが多いと思いますので、しっかりと対応するということです。
年明け以降、株主総会前までに機関投資家と対話をされる企業も多いと思いますがこの対話が肝です。機関投資家はフォワードルッキングですので、例え今期の業績が悪くても、今後の業績改善に向けた企業の取り組みがしっかりしていると理解すると例外的に賛成してくれるところもそれなりにあります。

機関投資家との対話のスピーカーは?

通常のIR取材では、IR部長などが対応しますが、この手の対話では部長クラスはダメです。終わった決算内容を説明するなら部長クラスで問題ないですが、企業の事業の今後を語るわけですからマネジメント層が必須か思います。マネジメント層といっても、執行役員クラスの「なんちゃって役員」もNGで、役職のないヒラの執行役や取締役も避けた方がよいかも知れません。基本的には代表権を持つ役員の説明が望ましいです。

ただ、代表権があればよいかというとそうではないです。スピーカーの能力が大事ですね。このマネジメントの説明を聞いて「この人にかけてみよう」と投資家に思わせるプレゼン能力が必要です。

結局、将来のことは誰にも分からないのですが、そのような中で投資家が最終判断するのは会社を代表する方の言葉や態度なのです。紋切型の説明しか投資家にできない方は適切でないかも知れません。企業としては、説明する内容もさることながら、誰が説明に適しているかということをしっかり考えて対応することが大事かなと思います。