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ビジネスマンのためのさくっと分かるコーポレートガバナンス ー 株主提案とは?何故増えているの?


さくっと分かるシリーズを連載します

少し前に勤務先の何名かの方と雑談をしていた時に「株主総会ってどんな質問でも出来るの?」「株主提案って何?」という質問を受けました。「何銘柄か持っているけど、実は株主総会のことはほとんど分からないんですよ」という話でした。この方はシステム部門や営業部門が長い方で資本市場とは全く縁のない仕事をされている方々です。
先日、ブログで個人株主の方も議決権行使をしっかりと考えましょうという記事を書きましたが、実のところ、一般のビジネスマンはじめ個人の方は、議決権行使のところも実のところ知識が曖昧な方も多いのではと思います。

ということで、今回からは時々、分かりやすいシリーズということでビジネスマンの方向けにコーポレートガバナンスの初歩的な内容を連載したいと思います。個人株主・個人投資家の方にもお読み頂ける内容にします。

細かい会社法の条文等の難しい解説の一切は省略します。専門的なことは書籍やネットで検索すると出てくると思いますし、ブログで書いても読み手は飽きてしまいますので。

このシリーズでは、個人の方が短時間で簡単に理解できることに重きをおいて書いていきます。ビジネスマンの方もこれを知っていれば、社内のIR部門や財務・経営企画はじめ管理部門の方とも会話をするに困らないということを念頭に置いて解説していきます

株主総会ってなんでも質問できる?

株主総会は法令又は定款で定めた事項を決議する会議体です。分かりやすくいいますと、総会の議題について審議する会議であり、議題に関連した質問をする必要があります。つまり、取締役の選任議案であればその取締役候補者の選任に絡む質問です。取締役としての適性として、過去の職歴や今後に期待する役割、過去の実績などです。

では、将来の業績見通しはどうでしょうか?これは総会の決議事項ではないですが、事業報告に絡むことですので可能です。けど、総会で報告するのはあくまでも終わった年度の事業内容であり、将来の事業見通しではない点に注意が必要です。

従い、将来の業績見通しを細かく質問しても企業には回答の義務はないと言えます。とは言え、今の時代は、総会の議題外であってもその質問が真摯なものであれば回答するというのが多くの企業の姿勢だと思いますので、インサイダーに該当しない範囲で説明してくれるとは思います。

株主提案って何?

最近の新聞報道で今年の総会では株主提案が増えています、ということを目にすることも多いと思います。「株主提案をしてみたい」という個人の方もいると思います。総会の議案は、会社の取締役会が決定しますので議案は決まっていますよね。これを会社提案議案といいます。

けど、株主としては、剰余金の配当を増やして欲しい、定款の一部追加をして欲しいと思うこともあると思います。その場合、株主自らが「この議案も議題として取り上げてくれ」というのが株主提案です。20年ほど前は、会社の社名をおかしな社名に変更せよといった提案を良く目にしましたが、最近は見ませんね。最近良く見るのが剰余金の処分の額を増やせといったものです。

株主提案は誰でも出来るの?

これは誰でも出来るわけではないです。基本的には300個の議決権が必要です。1議決100株が多くの企業ですので、30,000株(=300個×100株)です。理由は100株の方でも株主提案が出来ると株主提案の数が増え、会社の事務作業が大変ですので、一定の株数を保有する株主に限定したのです。

従い、株主提案をするのは投資ファンドが多いです。投資ファンドは1銘柄当たり数億円以上投資しますので、30,000株など小さい金額です。株価が1,000円とすると、3,000万円です。1銘柄に3000万円を投資できる個人の方は極めて少ないと思いますので、なかなか個人の方で単独での株主提案は難しいですね。

では、その場合にはどうすべきかと言いますと、共同提案が考えられると思います。つまり、複数株主の議決権数を合算することによって要件を充足している場合には、当該複数株主による共同提案として請求できるということです。従い、先ほどの例を用いると、5,000株ずつ保有する方が6名で共同提案するのも可となります。これですと一般のビジネスマンの方も友人や株仲間と一緒に株主提案も可能です。

何で株主提案は最近多いのか?

それは一言でいえば、東証が「上場企業は企業価値を向上させよ」「コーポレートガバナンスを高めよ」と言っていることが背景にあり、これに加えて、株主提案が合理的であればそれに賛同する機関投資家も増えているからです。
私が社会人になった1990年代後半は株主提案など変わり者がやるものというのが世の中の認識で、まず、他の株主の賛同が得られませんでした。

けど、時代は変わりました。特にこの数年は、株主提案の内容自体が資本市場関係者に受けいられるものが多く、また機関投資家もアセットオーナーのために投資先企業の企業価値を高めるような議決権行使をせよと言われていることも背景にあります。ということで、まっとうな内容の株主提案がこの数年で増えているのです。

今後もこのシリーズを時々連載します

ということで、今回は初回でしたが、この程度の初歩的な内容を理解して頂けば、ビジネスマンの方は社内でも会話にまず困らないと思います。実際には上場企業の取締役であっても大多数は、社長や財務・経営企画などの管理部門担当役員を除けば、ここに記載の内容はまず知識として持っていないと思います。

「本当?」と思うかも知れませんが、これは「本当です」。証券・銀行等の金融業界の役員の方は皆さん当然のこととして理解していますが、製造業はじめ一般の事業会社の役員の方は理解されていない方が大多数と思います。生産一筋、研究開発一筋、営業一筋といった方はだいたいそうかなというのが私の感覚です。「資本市場って何?」「機関投資家って何?」程度のレベルの方、非常に多いです。上場企業の役員とは言え、サラリーマンですので、自分の担当業務以外は分からないのです。その点では、金融業界の入社間もない方より知識が少ないと言えます。

ですから、今は営業、技術、システムなどの部門に所属している部課長・係長クラスの方で将来は経営企画や財務部門等で経験したいと考えている方、または、そういう部門を近い将来総括する予定の役員の方にも是非読んで頂ければと思います。将来、異動した際に「良く知っていますね」「勉強しているね」と社長や上席の役員から言われ、部下との仕事の会話もスムーズにいくかも知れません。

こんなテーマや記事を取り上げた方がよいなど何でも気になることがあれば、遠慮なくコメントを頂ければと思います。noteに問い合わせ欄を掲載したいのですが、設置の仕方が良く分からないので(果して設置が可能なのかも分からず・・)、この記事のコメント欄に意見をお気軽に頂ければと思います。