持ち合い株の解消が加速 ー 安定株主は確実にいなくなります。けど企業はそんなに心配することはないかなと思います
持ち合い株の縮減が加速
先日の日経新聞で次の記事がありました。
東証プライム上場企業の約7割に当たる約1100社が3月末までに持ち合い株の削減方針を示したことが分かったようです。これまでも各種メディアで持ち合い株(以下、政策保有株式と表現します)の記事は結構出ていますが、やはり縮減は加速していますね。
数年前まで政策保有株式の縮減に関する方針について、原則として保有しないということを明確に打ち出す企業はまだ多くはなかったですが、最近は増えています。毎年着実に政策保有株式を縮減していても、コーポレートガバナンス報告書に「縮減する方針を明確に記載して下さい!」と求める機関投資家は多いです。こういった機関投資家の声もあり削減方針を示す企業が増えているのです。
いずれにせよ取引先と株式を持ち合い、何があっても持ち合い先の株主総会の議案に賛成するという安定株主は確実に消えていくでしょう。時代が大きく変化しています。
安定株主がいないと困るのか?
政策保有株主=安定株主ですが、この安定株主がいなくなると企業は本当に困るのでしょうか?
結論から言いますと、普通に資本市場に目を向けた企業経営をしていれば、安定株主がいないがゆえに困るという事態にはなりません。
安定株主が減り、機関投資家の保有株数が増えた場合を想定します。会社の総会の提案内容に100%賛同してくれるのが安定株主のため、その安定株主がいなくなることに漠然と不安に思う企業は多いかも知れません。その気持ちは良く分かります。「安定」という言葉は、「安心」をもたらしますからね。
けど、大きな不祥事を起こさず、株主資本コストを念頭に置いた経営、コーポレートガバナンス・コードを意識した経営などをしていれば、機関投資家が会社の提案に反対することは通常はないのです。機関投資家の議決権行使基準を読むと分かりますが、極めて全うかつ合理的な内容がほとんどです。「ROEを10%にせよ!」「PBR3倍にせよ!」なんてことは書かれていません。
モノ言う株主であるアクティビストの議決権行使基準は少し厳しいですが、そうではない伝統的な機関投資家の基準は合理的な内容であり、企業に過度な対応や要求を求めるものではないのです。つまり、これまで経産省、金融庁、東証が上場企業に求めてきたこととほぼ同じか、それよりも緩い基準であることがほとんどです。
つまり、会社が何か特別な措置を講じないと議案に賛成してくれないなんてことはないのです(ちなみに、機関投資家は開示している議決権行使基準に従って投資先企業の総会議案に賛否を投じます)。
安定株主がいなくとも毎年の株主総会で会社提案議案が否決されるリスクは、市場の求める企業経営をしていさえすれば極めて低いのです。ここをしっかりと企業の経営者の方は理解されることが大事です。そうすれば、安定株主がいなくても、実はさほど困らないということが分かるかと思います。逆に言うと、コーポレートガバナンス・コードや資本市場の要請に全く関心を持っていない企業は困るかも知れませんが・・。
企業の経営トップの方で機関投資家の議決権行使基準を細かいところまで読まれている方は少ないのだと思いますが、そこは実務の方や担当役員レベルがしっかりと伝えて安心させることが必要です。安定株主関連で以前に次の記事を書いていますので、再掲いたします。