コーポレートガバナンスとは?- 個人投資家・個人株主のための分かりやすい解説⑤(これまでのおさらい+社外取は過半数が必要か?)
「コーポレートガバナンスとは?」についての第5回目になります。これまでのおさらいを箇条書きで整理します。
1 コーポレートガバナンスは企業の稼ぐ力を高めることが狙い
2 その手段として社外取の活用を考えている
3 社外取が社内取に負けずに企業価値向上に向けて行動するには一定数必要。最低3分の1。数で負けないため
4 けど数だけ増えてもNG。企業のビジネスを十分に理解できるスキルを 持った社外取がバランスよく構成されていることが必要。特に企業経営経験者(=社長経験者)と金融・資本市場関係者は必須で、これに企業の業態や個別事情を踏まえて専門的スキルを有する専門家等(公認会計士、コンサルタント、弁護士等)が参画するのが理想
以上の内容を個人投資家・個人株主は念頭において、投資先企業の株主総会に参加するなり、IR部門に質問するなどして、機関投資家のサポートをすることをお勧めします。個人投資家も企業と建設的対話をする時代です。株を買った後は、個人株主は、株価が上がるのを毎日チャートを見てただ祈るだけの弱者の立場から、企業価値向上に向けて企業に提案すべき時代かと。
さて、本日は前回の続きを書きます。最近、指名委員会等設置会社を中心に社外取の取締役会に占める比率が過半数の企業も増えてきました。そもそもコーポレートガバナンス・コードでは、プライム上場企業では社外取が過半数であることを推奨しています。けど、機関投資家と対話をすると機関投資家の中には、「過半数って本当に機能しているの?」という疑問を持たれる方もいるのです。これはどういうことでしょうか?
社外取が大勢いると社内の論理やしがらみにとらわれず、事業ポートフォリオの変革をはじめ大胆な提案や意見を提示して、企業価値を高めてくれることが期待できます。けど、課題は、やはりどこまでいっても社外取は部外者であるということです。社外取に本心を聞くと「やっぱり事業の細かいところは分からないよな」という方は結構多いのだと想像します。
だって、そもそも月1回の取締役会に参画するだけではどうしても限界があります。その会社の経営会議等の重要会議の資料を見れるとしても、実際に会社に席をおいて日常的に情報に接しない限り事業の詳細の理解は難しいところがあります。事業所見学と称して、工場見学や研究拠点に社外取を案内する企業も多いですが、1~2回現場を見ても理解を深めるには限界があります。
だから、その会社の業績や株価がよろしくないときに、部外者である社外取が過半数もいると、会社のことを良くわからない方々によって経営がなされているのではないか?と機関投資家は不安に思うことがあるようです。まあ、その気持ちは分かります。3分の1の社外取は必要だとしても、過半数を超える人数まで増えると、事業の細かいところが分からない部外者たちに、会社の事業執行の意思決定権をゆだねることになり(社外取が過半数いるということは取締役会を支配できるということです)、それが不安ということです。
ということを考えると、私は、「社外取過半数が全ての企業で必ずしも目指すべき」ということではないように思います。業績が低迷している企業は、極端なケースとしては、全員を社内取にして、まずは業績向上に一丸となって取り組み、ある程度業績が明るくなってきた段階で社外取の員数を増やすのです。こんなこともありかなと。
あとは、それをコーポレートガバナンス報告書でエクスプレインするのです。コーポレートガバナンスコードは全てコンプライすることを日本企業はなぜか美徳と考えていますが、合理的なエクスプレインであれば、機関投資家の納得も得られるのだとは思います。