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「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」開示の好事例② - PBR向上施策は指標にブレイクダウンして示すことがポイント
株価を意識した経営での企業の取組ステップ
前回「中期経営計画の開示は進捗が肝」ということで東洋製罐グループの開示を紹介いたしましたが、今回は第2回目ということで、引き続き、株価を意識した経営での好事例を紹介、解説をいたします。
おさらいになりますが、東証が企業に求める株価を意識した経営では、企業は次のことが求められています。
1 現状分析・評価
①投資者の視点から資本コストを捉える
② 投資者の視点を踏まえて多面的に分析・評価
③ バランスシートが効率的な状態となっているか点検
2 取組みの検討・開示
①株主・投資者の期待を踏まえた目標設定
② 経営資源の適切な配分を意識した抜本的な取組み
③ 資本コストを低減させるという意識を持つこと
④ 中⻑期的な企業価値向上のインセンティブとなる役員報酬制度の設計
⑤ 中⻑期的に目指す姿と紐づけて取組みの説明
3 対話・アップデート
① 経営陣・取締役会が主体的かつ積極的に関与
② 株主・投資者の属性に応じたアプローチの実施
③対話の実施状況を開示し、更なる対話・エンゲージメントに繋げる
④目標設定や取組みを継続的にブラッシュアップ
今回はこの中で1と2について紹介します。
PBR向上に向けた取組みは分かり易く分解する
投資家の最大の関心事項は、株価向上に向けて企業がどうアクションをとるかです。この場合、シンプルにPBRを分解して施策を示すのが一番分かり易いと思います。
この点、東証の好事例に掲載の旭化成の事例が参考になります。
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PBR=ROE×PERですが、これに従い、各指標向上のための施策が書かれています。つまり、ROEとPERをそれぞれどのように向上させるかです。企業によってはROEが高い一方で、PERが低い企業もあると思いますが、そういう企業はPERに重きをおいた開示になるのだと思います。
次は日本特殊陶業の開示になります。
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これもPBRを2つに分解して施策を開示しています。
次は住友林業の事例です。
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ROEを3つに分解して、それぞれの施策を開示しています。
大事なのは開示した後の投資家との対話です
上記各社の開示を見ただけで施策の詳細の全てが分かるものではないです。上記のいずれの内容も見ただけで、全てがクリアーになったという投資家はいないと思います。しかし大事なのは、こういう取組を開示することが機関投資家の対話で深く掘り下げることが出来れる点です。
上記の各社の開示を見て「この程度の開示なら当社でも出来るよ」という会社は多いと思います。でも開示をしないと外から見ると何も施策がない会社と思われてしまうのです。
大した施策内容でなくてもまずはブレイクダウンして各施策の考え方を示し、その後に投資家と対話をして説明することが、総会での経営トップなどの取締役選任議案の賛成率向上にも寄与することにも繋がります。
なお、総会議案の賛成率向上のための「機関投資家とのIR・SR対話の実施」については、少し前に中央経済社Digitalで記事を執筆させて頂きましたので、ご関心のある方はこちらの記事もご覧頂ければと思います。