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指名委員会等設置会社の機関設計が今後変わるか? - 「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会の第2回会議より


第2回会議の議事要旨が公表

第2回会議が10月17日に開催されていますが、その時の議事要旨が先日公表されました。以下です。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/earning_power/pdf/002_gijiyoshi.pdf

第2回会議では実質株主の情報開示制度、指名委員会等設置会社などについて意見交換がされましたが、各論点に関する各委員の質問を見ると、指名委員会等設置会社の設計の見直しを求める意見が結構出ていましたね。本日はいくつかの意見を議事要旨から拾い紹介したいと思います。その前に「指名委員会等設置会とは?」を簡単に説明します。

指名委員会等設置会とは?

「そもそも指名委員会等設置会社っ何?」という方は多いと思います。ざっくりと簡単に言いますと、取締役会の下に社外取締役が委員の過半数を占める指名委員会、監査委員会、報酬委員会を設置し、取締役会は監督機能(モニタリング)の役割に重みを持たせ、業務執行は取締役会で選んだ執行役(執行役員とは全く別です)に委ねる形態です。

米国でこのタイプの機関設計の会社が多いので、米国型の制度設計と言われています。

東証の上場企業約4,000社の中でこの制度設計を採用している会社はどの程度あるかというとわずかに95社(24年8月1日時点)となっています。このうち東証プライム上場企業が約80社となっています。

日本でこの制度が導入された当時、日立製作所、ソニーといった超大企業が率先して採用しましたが、その後も導入企業数が増えず、マイナーな組織形態となっています。超マイナーな制度設計の会社ということです。

指名委員会等設置会社の設計は今後見直しされるか?

ということなので、多くの上場会社には関心が低いかも知れませんが、指名員会等設置会社には今後の動向は気になるところです。第2回会議の議事要旨の中から、指名委員会等設置会社に関する意見を以下紹介いたします(太字は私が強調のため印をしました)

  1. 指名委員会等設置会社については、もともと委員会制度を導入するところに特色があった。今では監査等委員会設置会社制度もあるし、任意の委員会を設置する企業も多数あるので、独自性が埋没してきている

  2. 指名委員会等設置会社を発展的に解消して、監査等委員会設置会社に吸収させて、新しい監査等委員会設置会社は執行役を選任する制度として整理し直し、その結果、代取が経営に当たる監査役会設置会社制度と、代表執行役が経営に当たる新監査等委員会設置会社制度の2本立てにしてしまったほうが、外国投資家から見ても分かりやすいのではないか

  3. 将来的には、モニタリング型の取締役会が実務上定着すれば、機関設計は一本化することを念頭に議論すべき

  4. 独立社外役員が過半数いる指名委員会等設置会社では、指名委員会や報酬委員会による取締役や執行役の指名や報酬の決定権や提案権等の委譲については取締役会自治で決めるべき

  5. 指名委員会等設置会社だが、もちろん我々もいろいろ検討しているが、あまり多くの企業が移行していない理由として、一部の企業で、指名委員会や報酬委員会が強過ぎて、指名委員会あるいは委員長が暴走して人災を起こしているのではないか

  6. 取締役会に何を求めるのかということが会社によって大きく違うわけなので、それをちゃんと各社が決めた上で、制度的にはある程度自由度があるということが本来の議論であろうと思うが、少なくとも今の指名委員会等設置会社は制度面で若干おかしいと私は思っている。

  7. 指名委員会等設置会社における指名・報酬権限について、優先的に見直す必要があると考える。これは前回も説明したが、重要な事項について、取締役会が最終的な決定権限を持っていて、その取締役会の実効性を上げることで企業価値を上げるというのが、グローバルで一般に共有されているコーポレートガバナンスのベストプラクティス

  8. 指名委員会等設置会社以外の会社でも、水面下で検討を進めている企業が一定数ある。そのときの阻害要因の一つとして、委員会の強い権限が挙げられているという事実

  9. 指名委員会等設置会社について見直しをするとすれば、取締役の過半数を社外取締役とすることを要件として、指名及び報酬の決定権限は取締役会が持つというように見直すのが理に適っている

  10. 指名委員会について、日本で指名委員会等設置会社が、少し特殊な事情下において制度設計されたというところが大きいというのは感じており、それが実務的に使いにくいという状況

何が課題かということを簡単にいいますと、取締役選任の権限が数名の取締役で構成される指名委員会にあり、取締役会が最終決定権限を持たないことが最大の問題とされています。また、この理由で指名委員会等設置会社数が一向に増えないということでもあります。

社外取締役は、所詮は社外の人間なのであり、取締役候補者が適切な能力があるかの判断は難しいのです。そういう中、例えば社外取が7名いる会社でこのうち2名の社外取が指名委員会の委員で、他に社内取締役1名の3名で指名委員会を構成したとします。

この場合、残り5名の社外取や他の社内取締役が取締役の選定に関与できないがこれで果たして良いのかということです。指名委員会で人選をしても、最終決定権限は取締役会にあるべきではないかなどと言われているところです。もっとも社長以外の社内取締役が取締役候補者の選定には口を挟むというのは、サラリーマンの世界では現実には難しいところはありますが、少ないとも5名の社外取が関与できることは大事なところです。

この会議で議論されている以上、指名委員会等設置会社の制度は見直される方向にいくのだと思いますが、見直すには会社法(法務省の管轄)の改正が必要になりますので、まだ先の話にはなるとは思いますが、指名委員会等設置会社を採用している95社の会社は今後の動向を注視することが必要かと思います。

もっとも、どういう機関設計になろうと会社の利益と株価を高めることが上場企業の最大の役目なので、投資家にとっては機関設計云々などの関心は高くないのかも知れませんが。

(ご参考)第2回会議の議論ポイント

以前に第2回会議の議論ポインの記事を書いておりますので再掲いたします。


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