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今年の株主総会は終わりましたね ー 賛成率の低い企業が来年に向けて夏休み前までに整理すべきこと


今年の株主総会の課題は夏休み前に整理しておきましょう

6月も終わり明日から7月です。3月期決算企業の定時株主総会も6月末で終わりました。先日の日経新聞に次の記事がありましたが、経営トップの賛成率が低い数値で終わった企業もあるかと思います。

とは言え、賛成率が低くても可決されているので、経営トップはじめ事務方の皆さんはひとまずほっとしているところだと思います。
けど、ここはもう少し緊張感を持続させて、夏休み前に来年の株主総会に向けて各社は総会の振り返りなど整理しておくのが大事と思います。特に経営トップの選任率が低迷したような企業です。

こういう企業は課題のある企業と資本市場関係者から見られているため、機関投資家が反対しているのですから、その課題をしっかりと把握して経営トップと認識を共有して、下期以降の課題解決のアクションに向けての下準備をするのが7月、8月かなと思います。では、企業は何をすればよいのかについて、本日は簡単にポイントを整理していきます。

株主総会の機関投資家の賛否行使結果の分析

まず真っ先にすべきことはこの分析ですね。これは何かといいますと総会の議案で賛否のいずれを投じたか国内と海外機関投資家の議決権行使結果を分析することです。

国内・海外の機関投資家(実質株主)は株主名簿上の名義株主でないことが多いので、この実質株主が賛否のいずれを行使したかは会社は知ることが出来ません。そこで、実質株主判明の調査サービスをしている信託銀行や専門業者を起用して分析を行います。

7月中旬から下旬に分析結果を業者は委託企業に提出すると思いますが、この結果をしっかりと把握します。議案に賛成又は反対した機関投資家を一社ずつしっかりと把握して、各社の議決権行使基準を見て、どの基準に抵触したかを見ることです。

注目すべき機関投資家は。これは大事です

その中でどの機関投資家に着目するかが大事です。議決権行使で反対した機関投資家は会社の方でも把握していることが多いと思います。というのも議案の賛成率が低いと予想している会社は、事前に賛否予測分析を社内でしており、反対する機関投資家を把握していることが多いからです。

では、何に注目すべきかといいますと、議決権で反対行使を予想していた機関投資家の中で予想に反して賛成をした機関投資家の把握です。これはとても大事なことです。

それは何故かというと、会社の将来性に期待して方針を曲げてまで賛成してくれた機関投資家と言えるからです。通常、議決権行使において数値基準に抵触した場合、議決権行使担当者は当該企業の担当セクターアナリストにこの企業の業績や見通しを聞きます。

ここでアナリストが賛成を強く推奨するとその意見を尊重して議決権行使担当は賛成を投じることになります。ということは、賛成をしたということはアナリストがその企業の将来に期待してくれたということです。企業にとつては有難いことです。そういう機関投資家を裏切ってはいけません。

来年の総会に向けて機関投資家の議決権行使基準の改定の大きな方向感は?

機関投資家各社の議決権行使基準の改定は年明け以降になるので、このタイミングでは分かりません。けど、各社がどう考えているかは既に考え方を公表している投資家もあったりします。取締役の選任に関して言うと、恐らく次のような改定をする投資家が多くなりそうな感じがします。

1つ目はROE基準の引き上げです。現状はROE5%未満が数期続く企業には反対する投資家が多いですが、この5%を8%に引き上げていくと思います。

2つ目はPBRの基準の導入です。これまではROE基準で賛否を判断していたのが多くの投資家ですが、PBR基準を導入する投資家も増えてくるように思います。ROEが高くてもPBRも低い企業って多いです。いかにPERを高めるかが上場企業には求められます。

3つ目は政策保有株式の保有の基準の厳格化です。政策保有株式が純資産の20%を超える場合に経営トップに反対する機関投資家は多いですが、この数値基準を引き下げる(例えば10%など)投資家が今後増えるかも知れません。

ほかにも細かい改定はあると思いますが、私が機関投資家各社とこれまで会話をしたり情報収集する中で感じるのは、以上のようなところです。

改定事項の中でやっかいなのは・・

この中で単純なのは政策保有株式の縮減です。上場企業の銘柄であれば、かたっぱしから市場で売ればよいのです。数年前は売却する際には相手先企業の調達部門に時間をかけて説明し(事業会社の調達部門は「コーポレートガバナンス・コードって何?」程度の知識しか当時はありませんでした)、許してを得た上で何とか売却していたのが多くの企業かと思います。場合によっては「株式を売るなら、取引を減らすよ~」とやんわりと脅されたりしながら。

けど、この1~2年で大きく変化しました。相手先企業に通告する必要はありますが(マナーとして)、許しを得るなどという発想は不要です。もっとも中小型銘柄の場合、一気に市場で大量に売却すると株価が下落して、アクティビストなどが入ってくる可能性もあるので、これはさすがに少しずつ市場で売却することが必要にはなりますが。

やはりやっかいなのはROEとPBRですね。特にPBRは難しいですね。一時的にROEは上げることが出来ても企業の成長性を投資家が納得しない以上、PERは上がりませんので。

いずれにしても、上場企業各社は上記のような観点で総会の振り返りをして、社外取締役のいる取締役会でしっかりと7月、8月に総会での機関投資家の議決権行使結果を報告し、今後の対策の方向性を議論しておくことが大事になります。