コスモエネルギーと旧村上ファンドの攻防①ー 臨時株主総会で買収防衛策発動を諮るようですね
コスモエネルギーが買収防衛策の発動を株主に問う
コスモエネルギーホールディングスが12月に臨時株主総会を開催して、買収防衛策の導入について株主の意思を問うことのプレスリリースを昨日公表しました。本日の日経新聞にも報道のとおりです。
https://www.cosmo-energy.co.jp/content/dam/corp/jp/ja/news/2023/10/24-2/pdf/231024jp_02.pdf
併せて、補足説明資料(取締役会評価資料)として、旧村上ファンドによる大量買付行為に対する取締役会の評価結果を公表しています。
https://www.cosmo-energy.co.jp/content/dam/corp/jp/ja/news/2023/10/24-1/pdf/231024jp_01.pdf
買収防衛策の発動をめぐる攻防では、この手のパワーポイント資料を公表するケースは増えていますね。買収防衛策のプレスリリースは一般株主の方には難解で理解しにくいので分かりやすく示すことが目的の1つかと思います。私も買収防衛策のプレスリリースを何度も作成してきましたが、「これって個人投資家の方は、まず誰も理解できないだろうな」と思いながら作成していました。ひらすら長い文章が続き、専門的用語がちりばめられ読みにくいことこの上ない総会議案の1つです(なお、前にも記事に書いたように証券会社を除くメーカー等の一般事業会社の経営層もほぼ理解できていないのが現状です)。
コスモエネルギーの見解は?
一般的に投資ファンドによる敵対的買収で会社側が示す重要ポイントは1つです。投資ファンドは事業会社と異なり、企業価値向上の具体的な戦略がない点です。特に、海外投資家が多い企業の場合、買収防衛策議案について、議決権行使助言会社の賛同が得られるか否かが重要ですが、助言会社も企業価値向上施策の有無を重視していると思います。今回のコスモエネルギーの補足説明資料を見ると、旧村上ファンドによる買付行為について、次の4点をあげていますね。
①企業価値向上への具体的施策が無い
②一般株主と利害相反
③実施主体として不適切
④更なる買増しの可能性と企業価値毀損への脅威
⑤強圧性
各点について、コスモエネルギーは自社の主張を詳しく補足説明資料に記載しています。
MOM(マジョリティ・オブ・マイノリティ)とは?
ところで本件で興味深いのは、今回の総会決議ではコスモエネルギーはマジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)での決議とせずに、旧村上ファンドを含めた株主の議決権の過半数の決議とするようです。
MOMは東京機械製作所とアジア開発キャピタルの攻防の際での買収防衛策議案の決議で使用され、最高裁も「認める」と判断しました。大株主であるアジア開発キャピタルの保有議決権を除外して、株主総会で買収防衛策が決議されたのです。
このように買収者などの保有議決権を除外した議決権の過半数による決議がなされることをマジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)での決議といいます。会社法上、こんなことが許されてよいのか?という疑問はありますが、最高裁が判断しているのだがら法的に有効ということです。
MOMが使える局面は?
では、このMOMが全ての敵対的買収の事例で使用できるかというと少し違います。当然ですね。買収されそうになって買収防衛策の導入の是非を株主の意思に諮る際に、常に買収者の議決権が除外されると買収者に圧倒的に不利であり、株主平等の原則の観点からもいかがかと思います。あくまで例外的になされるべきです。この点、経済産業省の「企業買収における行動指針」で「利害関係者以外の過半数を要件とする決議」として次のとおり規定されています。
「濫用的扱いは許さん」ということが書かれているわけです。そして、この点の解釈について委員会の指摘事項として「 一般に、利害関係者以外の過半数を要件とする決議がどのような根拠や範囲で許容されうるかは、必ずしも明らかではない。研究会における議論では、以下のような指摘があった。」とあり、以下の指摘として次の記載があります。
指摘にとどまっているので、どういう場合が許されるのか明確でないところに難がありますが、1つの考え方の参考になります。
今回のコスモエネルギーと村上ファンドの攻防で、コスモが普通決議にした理由は分かりませんが、MOMでの決議を使うには少し難しい(=後で裁判になった時のリスク)と思ったのかも知れませんね。いずれにせよ、今回の総会決議はガチンコの勝負になるということです。本件は面白いので、今後の動きは、NoteとTwitterでも触れていきたいと思います。