PBR1倍割れの経営トップに反対 ー ROEに加えて厳しくなりますね。その先には、個人株主も議決権行使に関心を持つ時代が来ると思います
機関投資家の議決権行使基準は厳しくなりますね
本日は中国経済関連の情報収集をしていました。中国関連銘柄が業績低迷で下がっていますが、産業機械関係などの銘柄はシクリカルなところがあるので、業績低迷がまだ暫く続くこのタイミングが仕込むチャンスかなと思いつつ、ファナック等の各社の業績見通しあったり、中国経済のニュースやマスコミ情報を収集していました。明日も引き続き、集中して情報収集です。
さて、昨日の日経新聞で次の記事が掲載されていました。機関投資家の株主総会での議決権行使基準でPBR1倍割れの企業の社長選任議案に反対するところも出てくるという内容の記事です。
私自身は、仕事上、主要機関投資家の今年の議決権行使基準を20社ほどを昨日からエクセルで整理を始めたところですが、今年の株主総会に関して言えば、多くの機関投資家はROE5%を1つの目安にしていますね。
つまり、昨年までと同様でROE5%を過去3期連続下回るなどの場合に社長や在任年数3年以上の取締役に反対するという内容です。今年の株主総会ではROE8%はなくても経営トップの選任では問題はないですが、2年~3年後には多くの機関投資家は基準を8%まで引き上げてくるでしょう。
つまり、ROE8%未達の状況が続く企業の経営トップの取締役選任議案には機関投資家は反対票を投じるということです。
当然の動きと言えば当然です。だって、株主資本コストを上回るのがROEであり、日本企業の株主資本コストの平均は8%前後と言われていますのでROEは8%を上回るべきであるのは当たり前なのです。中期経営計画を策定する際にROEの目標値を公表する企業も多いですが、目指すROE基準は最低でも8%にする必要があります。
個人株主もROEやPBRを基準に総会議案への賛否を判断しましょう
何度かブログで書いていますが、個人株主も投資先企業の株主総会の議決権行使はしっかりと判断すべきかなと思います。何も考えずに会社提案議案に「賛成」を投じるような行動はせずに、しっかりと株価やROEを見て判断することが大事です。
企業は個人株主の議決権行使を促進するケースも多いですが、その理由は何でしょうか?
企業によって狙いは色々とありますが、多くの企業は、会社提案に個人株主が議決権を行使する=会社提案議案に賛成するという前提で考えています。その理由は、個人株主の多くは高齢者であり、そもそもコーポレートガバナンスのことなど分からないし(という一般事業会社でも、金融以外の会社は、株主総会を担当する総務部メンバーは、実はコーポレートガバナンス・コードや株式資本市場のことなどほとんど分かっていないことも実はかなり多いのですが・・)、そもそも議決権行使などに関心がないため、会社提案に賛成するだろうという読みがあります。
でも、これってどうかなと思います。たしかに、個人株主は社長の選任など関心なく、配当さえ貰えれば議決権行使など関心ゼロという気持ちも分からなくはないです。けど、企業の株価の大前提である業績を左右するのは、経営トップであったり、長年取締役として在任する取締役の役割であり、その役割を担う人の選定に関心を持つのは、企業の実質的所有者である株主(=会社法ではこう言われてています)の当然の権利なのです。
個人株主も機関投資家と同様に投資先企業の取締役選任議案でPBR1倍割れが続いていたり、ROE5%未満が続いている場合には、「ん、これって賛成してよいのかな?」と一度考える姿勢が大事です。勿論、むやみに反対することをお勧めするわけではありません。
IR部門に事前に質問をして、その説明に合理性があれば賛成すれば良いし、IR部門の説明が要領を得ない場合には反対するなど判断は個人によって異なりますが、いずれにせよ一度、立ち止まって考える姿勢が大事かなと思います。
個人株主が合理的な議決権行使をすると企業は焦ります
会社は個人株主がコーポレートガバナンスに照らして合理的な判断をするようになると本当にビビります。「まじか!」ということになると思います。政策保有株式の縮減が進み、安定株主がいなくなる中、準安定株主として個人株主を増やしたいという企業は多いと思いますが、その個人が機関投資家のように合理的な判断をするようになると驚きますよね。
逆に企業の経営層は、そういう時代がいずれ来るということを念頭に置く必要があると思います。今の60代、70代の方が現役サラリーマン世代は、コーポレートガバナンスなどという言葉は社内では聞いたことがない時代であったかと思います。
今の個人株主の多くは、この高齢世代です。現役サラリーマン時代にコーポレートガバナンスに馴染みがなかったのですから、PBR、ROEという言葉を今更聞いても肌感覚で分かっていない人は、かなり多いと思います。「新聞では良く聞くけど、仕事で使った経験がないので良く分からないんだようね」というケースは非常に多いと思います。
コーポレートガバナンス改革は2015年頃から始まり、この数年で一気に進みました。今の現役の世代の方は仕事で肌感覚として理解している人が多いです。この現役世代の方が5年後、10年後に引退をして、時間に余裕が出来、個人株主として活動するようになった場合には、今の個人株主より知識や経験があるので、より鋭い質問をすると思います。会社提案も合理性に基づき判断することになると思います。
だから企業の経営層も、個人株主も理論武装しつつあるという事実を今から認識して、今後の対応を考えることが大事になります。