持続的な企業価値向上に関する懇談会 ー 6月を目途に課題整理
持続的な企業価値向上に関する懇談会が設立
経産省が4月30日に「持続的な企業価値向上に関する懇談会」を設立しました。背景や問題意識は次のようです。
要は伊藤レポート策定時から政府が主導してコーポレートガバナンス改革を進めてきましたが、当時の課題に対して、企業や投資家はどう取り組みをしてきて、今後の対応をどうしていくかを検討するということのようです。5月から開催し、6月を目途に課題整理を行う予定です。
「伊藤レポート以降の 10 年間の振り返り」が今後の肝ですね。
第1回懇談会が5月7日に開催され、その際の資料に「伊藤レポート以降の 10 年間の振り返り」があります。課題として次の8個があげられています。
課題①:成長期待の向上の必要性
課題②:長期視点の経営の必要性
課題③:取締役会の実効性強化の必要性
課題④:経営者の選任・解任機能の強化の必要性
課題⑤:CFO・FP&A 機能の強化の必要性
課題⑥:投資家・資本市場から企業経営への規律付けの必要性
課題⑦:対話・エンゲージメントの実効性強化の必要性
課題⑧:企業価値に対する認識のずれ
詳細は次のURLのとおりです。
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/improving_corporate_value/pdf/001_02_00.pdf
この懇談会の座長は伊藤氏のようですので、この内容が今後の議論の骨子になるのでしょう。気になる課題について以下、何点かピックアップします。
課題③の「取締役会の実効性強化の必要性」のところでは次のような内容があげられています。社外取締役の質ですね。
社外取締役が適切な能力を持った人物が果たして起用されているかですね。
企業経営・事業を理解して経営トップにアドバイスしたり、執行をモニタリングできる適切な経験・能力を有する人物が選任されているかです。
ビジネスを理解し、経営数値を理解する能力は、社外取締役に必須の能力かなと私は思います。多くの企業トップもその認識かと思います。こうった適切な能力を有する人物が選任されているか検証するのかも知れません。
課題④の「経営者の選任・解任機能の強化の必要性」では次のような内容です。社長の任期が短期になっているのではないかということですね。
これって重要かなと思います。多くの企業のサラリーマン社長は任期が決まっており、なかには4年といった短期の企業もあります。このような4年の期間であれば、リスクテイクをしようというインセンティブは働かないことが多いと昔から言われています。
だって、リスクテイクをする中でリストラをすると、一時的にコスト(リストラ費用)が膨らみ、結果、自分の在任中は業績が悪化し、プラス効果が現れるのは自分が社長を退任した後という場合もあります。
そうなるとサラリーマン社長は自分の任期中は評価されないわけです。であれば、自分の任期中は無難に過ごして、一定の業績をあげて退任をしようとサラリーマン社長は考えるということを言っているわけです。けど、これってショートターミズムの助長になりますよね。これは中長期の機関投資家の嫌がることです。
もっとも、社内で決めた役員任期があるが故に、よっぽどの不祥事がない限り無能でも任期までサラリーマン社長でいられるので、こちらの方が問題と考える機関投資家も現実には多いとは思います。
課題⑥「投資家・資本市場から企業経営への規律付けの必要性」は次のとおりです。これは機関投資家の課題ですね。
この懇談会は非開示で開催されるのですが、議事概要は開示されるようです。今後、議事概要が公表されたら引き続き紹介したいと思います。