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コスモエネルギーと旧村上ファンド系との攻防③ - ISS社が買収防衛策議案に賛成推奨したようです。この影響は?


議決権行使助言会社のISS社が賛成推奨

前回、コスモエネルギーが臨時株主総会で買収防衛策の決議に向けて総会検査役の選任について公表したことを次の記事で紹介しました。

株主総会に向けてコスモエネルギーとファンド側との攻防は激しくなっているところかと思いますが、11月29日にコスモエネルギーが議決権行使助言会社のISS社がコスモエネルギーの買収防衛議案に賛成推奨したことを次のとおり公表しました。
https://www.cosmo-energy.co.jp/content/dam/corp/jp/ja/news/2023/11/29-1/pdf/231129jp_01.pdf

賛成した理由について、プレスリリースに次の記載があります(太字は参考ハイライトするために私が付けました)。

ISS レポートにおいては、ISS が大規模買付行為等への対抗措置をサポートするために必要な一般的要件をすべて満たしていることが確認された上で、当社の株主総利回り(TSR)に関して、大規模買付者らによる当社株式の買付けが公表されるより前の 3 年間及 び 5 年間の期間において、それぞれ同業他社をアウトパフォームしていること、また、公 表後の期間においても、同業他社比で株主総利回り(TSR)が約 100%上回っていることが 説明されております。また、当社の策定した企業価値向上策や、直近の株主還元強化についても評価されております。 加えて、2023 年 11 月 25 日付け「機関投資家株主との対話状況等に関するお知らせ」に 掲載のとおり、当社は 2024 年に独立社外取締役が取締役会の過半数に達するよう検討しており、この点についても、賛成理由の一つとして挙げられております。 一方、大規模買付者らについては、具体的な企業価値向上策を有しておらず、大規模買 付者らが過度な株主還元を要求することは、当社の将来の事業投資にも影響を及ぼす可能性があることが指摘されております。また、本大規模買付行為等が市場買付けによるもの であって「段階的支配権取得のリスク」が存在することに触れたうえ、仮に 24.56%まで の買増しが認められた場合、大規模買付者らの保有割合が、ほぼ単独で特別決議を阻止で きる水準に達し、当社の経営に大きな交渉力を有することにもなることから、本大規模買 付行為等がなされることについて疑義が呈されております

コスモエネルギー11月29日プレスリリースより抜粋

ISS社は大量買付者が企業価値向上施策を有するか否かを重視すると言われていますが、このプレスリリースにはそのあたりも触れられていますね。想像ですが、旧村上ファンド系もISS社に説明をしたのかと思いますが、コスモエネルギーにISS社は軍配をあげたということですね。

ISS社の賛成推奨の及ぼす影響は?

では、今回のISS社の賛成推奨は臨時株主総会での議案の賛否にどういう影響を及ぼすでしょうか?
ISS社はコスモエネルギーの買収防衛策議案に賛成推奨するだけで、最終的に推奨結果をどう判断するかは各機関投資家の判断になります。従って、「このISS社の結果は、単なるご意見でしょ?」というのが本来の考えではあります。

けど、海外機関投資家には、ISS社の賛否推奨結果は大きな影響を及ぼします。ISS社の賛否推奨結果は、主に海外機関投資家が判断する際の拠り所となります。特にこの手の臨時株主総会の議案は、専門的内容が多く、いくら英文で開示がなされていても海外の機関投資家にはどうしても分かりにくいところがあります。日本の会社法等の法制にも十分に通じていないのが理由の1つになります。

そのため、海外機関投資家は、日本企業の株主総会での議決権行使の賛否の判断に際しては、ISS社の賛否推奨どおりの判断をするところが結構多いのです。もっとも全ての海外機関投資家がISS社の賛否推奨をそのまま使用するわけではありません独自の議決権行使基準を保有している海外機関投資家もいます。ただ、この手の複雑な事案で、独自にどの程度自社基準で判断するのか微妙な感じが個人的にはします。

一方、国内機関投資家はどうかといいますと、国内機関投資家は独自の議決権行使基準があり、それに基づいて判断します。平時に企業が導入する平時導入型の買収防衛策では、社外取締役が過半数存在することが賛成の必須要件の1つになりますので、コスモエネルギーが現時点で過半数の社外取がいれば賛成するが、そうでない場合には、各社の判断が分かれるのかなというのが私の実務感覚ではあります。

コスモエネルギーの株主構成(23年3月末)

コスモエネルギーの直近の株主構成で開示されているものですと有価証券報告書がありますが、有報では23年3月末時点での外国人株主は約22%とあります。

今回の臨時株主総会の基準日時点の外国人株主比率は分からないですが、3月末と同じ20%程度あると仮定するとこのうちの結構な割合がISS社の賛成推奨結果を採用して、買収防衛策議案に賛成する可能性が高いように思えます。今回の株主総会決議では過半数の賛成があればよいので、あと30%程度の賛成票を集めれば可決ということになります。

ただ、繰り返しになりますが、海外機関投資家も独自の基準をベースに反対するところはあるだろうし、国内機関投資家がどう判断するかは何とも言えないので、現時点では可決されるか否かの予想はまだ何とも言えない気が私はします。あと、議決権行使助言会社のグラスルイス社の賛否推奨の影響を受ける海外機関投資家も一定程度いますね。グラスルイス社の賛否推奨結果は、まだ開示されていない気がします。

引き続き、アップデートあれば記事を更新したいと思います。