【書評】『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL 死闘の8ヵ月』(文藝春秋)
本日は「『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL 死闘の8ヵ月』(文藝春秋)です。
著者は秋場大輔氏という方で本の巻末のプロフィールは次のとおりです。
1966年、東京生まれ。日本経済新聞社で電機、商社、電力、ゼネコンなど企業社会を幅広く取材。編集委員、日経ビジネス副編集長などを経て独立
この本は、2019年のLIXILの取締役選任を巡る攻防について書かれています。当時は日経新聞やビジネス誌でも大きく取り上げられましたので、記憶にある方も多いかと思います。
当時、LIXILグループ(現LIXIL)は突如、雇われ社長である瀬戸CEOの退任と創業家出身の取締役の会長兼CEO復帰を発表し、瀬戸CEOを創業家が追い出す形となりました。しかし2019年6月25日に会社側に戦いを挑んだ瀬戸CEOが株主総会で勝ち、社長兼CEOに復活するという結果に終わりましたが、瀬戸CEOが追い出される最初のところから、CEOに復活するまでの一連の流れが詳しく書かれており、読み応えのある内容となっています。
このLIXI騒動では企業のコーポレートガバナンスの在り方がクローズアップされました。瀬戸CEOの突然の退任劇に「LIXILグループのコーポレートガバナンスがおかしい」と感じ、瀬戸氏の復活の後押しをした2名の機関投資家の方の行動力、瀬戸氏を支えた大学時代の友人の弁護士の方、株主提案の候補者の考えなどが良く理解できました。
瀬戸CEOの行動を後押ししたアクティブの機関投資家のお二人とは、私は仕事でそれぞれお目にかかりミーティングをしたことも過去ありますが(このLIXI騒動とは関係ないです)、他の機関投資家の方とは違い、コーポレートガバナンスへの造詣が深く、話に深みのあるお二人であるとの強い印象を持っています。
株主提案を可決にもっていくというのは大変難しいですが、それを成し遂げた瀬戸CEOサイドの方々の大変な努力・熱意が強く感じられる内容になっています。
「機関投資家は杓子定規に企業を見るよね」「いい加減だよね」と知ったかぶりで言う事業会社の経営層の方などもたまにいますが(IR担当役員でもなく、そもそもIR実務経験もゼロで資本市場のことがほぼ無知であるにも関わらず・・)、会社がしっかりした考えを持ち、それを機関投資家にきちんと説明できれば必ずしも機関投資家は杓子定規に判断しないということがこの本を読むと分かると思います。